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イオン津ショッピングセンター、2024年2月12日閉店-前身の「ジャスコ+ニチイ→サティ」から45年の歴史に一旦幕、建替えめざす

三重県津市の県道114号線沿いにある流通大手「イオングループ」の総合スーパー事業会社「イオンリテール」が運営する商業施設「イオン津ショッピングセンター」が建替えのため、2024年2月12日18時をもって閉店した。

最終営業日を迎えたイオン津ショッピングセンター。
写真:HEY エレ鉄!!さん

日本初「ジャスコ+ニチイ」異色の大型SCとして誕生

イオン津ショッピングセンターは、中央毛織工場跡地の再開発にともない、1978年9月に流通大手系スーパー「ジャスコ津北店」「ニチイ津店」を核とする商業施設「津ショッピングセンターエル」として開業。開業当初の建物は地上2階建で中央毛織(後の中央コーポレーション/双日→ゼクス傘下を経て経営破綻)が所有していた。ジャスコとニチイという、ライバルであった流通大手2社の両方が核となる大型ショッピングセンターは日本初であった。
津ショッピングセンターエルは、流通大手と地場大手による商業施設の共同展開(鈴鹿ハンター、日永エコー、旧津南サンバレーなど)が多数みられた三重県内でも異色であり、開業当初はジャスコが食品、ニチイが衣料品を中心に取扱う運営方式を採っていた。
しかしその後は、施設間競争の激化を背景とした増床リニューアルの一環として、1994年1月にジャスコが撤退することとなった。

1994年に東海初のサティ、2011年3月にイオンに転換

津ショッピングセンターエルは、1994年4月の新装開業にあわせてニチイ(後のマイカル)の生活百貨店「津サティ」として全面刷新を図った。

サティ時代のデザインが残る看板。(写真:HEY エレ鉄!!さん

津サティは東海地方で初となるマイカルグループの生活百貨店業態であり、2000年12月には別棟に複合映画館「ワーナーマイカルシネマズ津」を新設するなど、グループの同地域における旗艦店としての役割をめざしたが、2001年9月に同社が民事再生法を申請し経営破綻したことで状況が一変。マイカルの支援企業として、前身施設(津ショッピングセンターエル)の食品核を担ったイオン(ジャスコ)が再び運営に参画することとなった。
津サティでは2003年1月からイオンの支援を受けつつリニューアルを実施。2011年3月にはイオングループ総合スーパー事業再編の一環として核店舗名を「イオン津店」、施設名を「イオン津ショッピングセンター」に変更した。

イオン津ショッピングセンター・全景。
かつてはジャスコとニチイの看板が並んでいた。

地域密着・集客力向上の取組み図るも老朽化で一時休業

イオン津ショッピングセンターは、2013年10月にイオンリテールからグループの不動産ディベロッパー「イオンモール」による管理運営に移行するなど、津市内唯一(当時)のモール運営施設として集客力向上に取組んだ。(現在はリテール運営に再び移行)

一時はイオンモールが運営していた。(写真:HEY エレ鉄!!さん

また、2021年2月に建替えのため閉店した「イオン白子店(白子ショッピングタウンサンズ)」(鈴鹿市)の受け皿として、白子店のシンボル「からくり人形」を核に据えたメモリアルゾーンや広大な学習スペースを新設するなど、地域密着の姿勢を打ち出した。(現在「イオンスタイル鈴鹿白子」として建替え中)

イオン津の「イオン白子店」メモリアルゾーン。

一方、同施設は県内の系列施設と比べ老朽化が進んでいたこと、足元商圏内においてもPPIHグループの総合ディスカウント「MEGAドン・キホーテ津桜橋店」や地場大手食品スーパー「マルヤスベーシック島崎店(旧マルヤスコスモス島崎店)」を核とする施設が開店したことを背景として、2023年12月14日に現施設を2024年2月12日付で閉店する方針を発表していた。

「心の片隅に思い出として」…45年の歴史に幕

閉店当日となった2月12日は開店時間から多くの客が訪れ、来店客には花が配られた。また、店内では店舗の歴史をしのぶ展示もおこなわれた。

数奇な運命を辿った店舗の思い出。(写真:HEY エレ鉄!!さん

閉店時間の18時にはセレモニーが開催された。
専門店街理事長が「最後のこの時間まで暖かく見守って頂きありがとうございます。(中略)我々専門店が45年続けてこられたのは皆さまのおかげです。」と挨拶。続いてイオン津店の奥田忠司店長が、店舗での思い出に触れつつ「お寒いなかありがとうございます。(中略)お店が、心の片隅に思い出となって残ってくれたら本当に幸せです。」と締めくくり、イオン津ショッピングセンターはエル・ジャスコ・ニチイ、サティ、イオンと移り変わった45年の歴史に幕を下ろした。

多くの人が集まった閉店セレモニー。
写真:HEY エレ鉄!!さん

跡地には新施設検討、イオンシネマは営業継続

イオンリテールは2024年2月現在、イオン津ショッピングセンター跡地の具体的な活用方法、新店舗の概要(業態・規模・再開時期)などを明らかにしていない。
一方で、別棟の「イオンシネマ津(旧ワーナーマイカルシネマズ津)」は施設一時休業後も営業継続する方針を打ち出しており、2024年春に建替新装開業を予定している「イオンスタイル鈴鹿白子/そよら鈴鹿白子」同様に「地域の商業核を担う商業施設」として再生する方針としている。
なお、イオン津店休業期間中の代替店舗はイオンスタイル津南(イオンモール津南/旧津南サンバレー)となっている。

 

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スズラン百貨店高崎店、2024年1月31日一旦閉店-新店移転に向け「またお会いしましょう!」で締めくくられた最終営業日

群馬県高崎市の高崎市役所近くにある地場百貨店「スズラン高崎店(高崎スズラン)」が、隣接地への新築移転のため、2024年1月31日をもって55年の歴史に一旦幕をおろした。

群馬高崎の地場百貨店、56年の歴史に一旦幕

スズラン百貨店は1952年6月に群馬県前橋市で「スズラン衣料品店」として創業。1968年1月に旧百貨店法(のち大店法)による営業許可を受け、同年11月に支店として高崎店を開業した。

最終営業日のスズラン高崎店

スズラン高崎店(本館)の建物は地上8階地下2階建、店舗面積は19,305㎡。
高崎店は最盛期には本館に加え、別館(4℃ブライダル)やスポーツファッション館(ユザワヤなど入居/旧田原屋高崎店)を展開するなど、北関東の商都にふさわしい業容であったが、2018年1月にスポーツファッション館を閉鎖して本館への売場集約を図っていた。
一方、高崎店本館は改正耐震改修促進法に基づく診断で耐震性不足であることが2017年に明らかとなったため、隣接地への新築移転と本館跡地へのマンション新築分譲を柱とする再開発事業を行う方針を2020年に固めた。
同方針に基づき、2022年8月に「宮元町第二地区優良建築物等整備事業」が起工、2023年9月から現店舗の閉店セールとなる「移転前の売りつくしセール」が始まっていた。

売りつくしで賑わう最終営業日のスズラン高崎店

「また会いましょう!」希望に満ちた最終営業日

スズラン高崎店現店舗の最終営業日は、地下食品フロアから屋上遊園地まで名残惜しむ客で賑わいをみせた。
なかでも、地下1階にある1830年創業の老舗蕎麦店「すかや本店」は後継者不在を背景に新店舗に移転せず閉店(支店分店は営業継続)することから、エスカレーターホールまで列がみられた。

すかやにお並びのお客様へ。

閉店時刻の19時になると、現店舗での営業終了を記念した式典がおこなわれた。
高橋英二店長は56年の歴史を誇った現店舗の閉店を感慨深いとしつつ「閉店するわけじゃありませんので、また新店舗でお会いしましょう!」と挨拶。買物客の笑いを誘った。

スズラン高崎店・旧店舗の閉店式典。

式典後、正面入口のシャッターが幕をおろしたのちも、買い物客やテナント従業員による明るい雰囲気が続くこととなった。

1ヶ月後に新築の新店舗開業、高崎初ブランドも

スズラン高崎店は隣接地のさやもーる商店街(高崎中部名店街)沿いの新築店舗へと移転。
2024年2月29日を目処に新装開業する予定としている。

スズラン高崎店・新店舗。

新店舗の建物(商業棟)は地上4階地下1階建で営業フロアは1~4階と、旧店舗の約半分ほどとなる。
1階にはグロサリー「北野エース」やスペシャリティコーヒーショップ「TULLY’S COFFEE」、2階・3階は婦人服・紳士服・生活雑貨など、4階には地場資源関連会社「糸井ホールディングス」による会員制フィットネス施設やエステサロンが入居するなど、装い新たに生まれ変わる。
また、将来的にはスズラン高崎店の旧店舗跡に建設されるタワーマンション・立体駐車場とも接続される予定となっている。

高崎スズラン・新店移転に伴う主なテナント動向
(都商研取材による/これ以外の閉店・出店もあり)
※今後、出店計画が変更される可能性もあります。

閉店

  • 化粧品売場(1階、HABAを除く全てのブランド)
    ※資生堂、クレドポーボーテ、カネボウ、コスメデコルテ、エスト、イプサ、アユーラ、ちふれ、パウダーパレット
  • ペレボルサ(ハンドバッグ、1階)
  • ミスターミニット(靴鍵修理、1階)
  • シューラルー(婦人服、2階)
  • シルクフォーチュン(婦人服、2階 ※POPUPショップ)
  • スイートマインド(婦人服、2階)
  • ステッキ売場(2階)
  • 詩仙堂(婦人服、3階)
  • ヌーベルスポーツ&ドンナベロ(小さいサイズの婦人服、3階)
  • クロスプラスショップ(デコイ・プチオンフルール・アルファキュービック・ルスークホリデー、4階)
  • オーダーワイシャツ売場(5階)
  • 学生服売場(5階、今後は修理受付のみ。前橋店にて取り扱い継続)
  • 子供服売場(7階、ポロラルフローレンを除く全てのブランド)
    ※ミキハウス、赤ちゃんの城、ムージョンジョン、ダディオダディ、KP、KPBOY、メゾピアノ、メゾピアノJr、ポンポネットJr、クレードスコープ、ビールーム、エクストララージキッズ、エックスガールステージス等
    ※KP・KPBOYは髙島屋へ3月上旬ごろ移転
  • 玩具売場(7階)
  • サンリオ(7階)
  • ボーネルンド(7階)
  • 中むら(和惣菜、地階)
  • 登利平(弁当、地階)
  • とんかつ和幸(和惣菜、地階)
  • すかや本店(飲食店、地階)
  • 美術工芸サロン(別館地階)
  • 茶道具売場(別館地階)

移転

  • 婦人服飾雑貨売場
  • 婦人靴売場
  • ゲンテン(ハンドバッグ)
  • アナスイ(ハンドバッグ・アクセサリー)
  • DEEP’S(アクセサリー)
  • ヴァンドームブティック(アクセサリー)
  • YAコレクション(アクセサリー)
  • エース(旅行用品)
  • フォンテーヌクチュール(ウイッグ)
  • 東京ますいわ屋(呉服、旧4℃ブライダル跡の別館へ)
  • フルーツパーラーサンエイ&ジューススタンド(飲食店)⇒統合して新店舗へ
  • ポロラルフローレン(紳士・婦人・子供服)
  • ニューヨーカー(紳士・婦人服)
  • 紳士肌着・靴下売場
  • 紳士雑貨、ワイシャツ、ネクタイ売場
  • 鳩居堂(和雑貨)
  • ホットマン(タオル)
  • 西川(寝具)
  • アントステラ(洋菓子)
  • ボンジョルノ(飲食店)
  • たごさく(和惣菜)
  • 肉の匠いとう(精肉)
  • アイミートダイニング(洋惣菜)
  • 和洋菓子売場
  • 新潟海宝丸(鮮魚)
  • キーコーヒー(飲食店)
  • HABA(化粧品)
  • リフレーヌ(リラクゼーション)

スズラン新店舗に新規出店

  • 北野エース(グロサリー)
  • タリーズコーヒー(飲食店)
  • 味の十字屋(塩干)
  • 寺崎商事(宝飾)
  • A ROMA(ヘッドスパサロン)

鞘町ビル(別館)で営業継続(2月中も営業)

  • クリニカルエステ花蔵(エステティックサロン)
  • 薬王園漢方(漢方薬局)


移転に向けて工事が進む。
「X」のクロス部分にスズランの(S)マークがあしらわれる。

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トスク本店、2023年9月30日18時閉店-Aコープ系・鳥取生活センターから55年の歴史に幕、全店閉店

鳥取県鳥取市のJR鳥取駅近くにあるJA鳥取いなばグループ(本社:鳥取市)の大型総合スーパー「トスク本店」が2023年9月30日午後6時をもって閉店した。

鳥取県内有数の複合施設だった「鳥取生活センター」

トスク本店は1968年11月に鳥取市農協(現JA鳥取いなば)の複合商業施設「鳥取生活センター」として開業。開店当初の建物は地上4階建で売場面積は約1,800㎡。
鳥取生活センター本店は当時の鳥取市内では珍しく、物販機能に加えて食堂や結婚式場、料理教室、友の会、著名タレントによる歌謡ショーといったサービスを提供。あわせて、婦人服フロアの刷新や家電量販店(ベスト電器→エディオン)のFC展開、駐車場の整備など、時代の変化に応じたリニューアルを実施することで、鳥取を代表する地場流通大手の旗艦店として発展することとなった。

鳥取市中心部では貴重な100円ショップ「ダイソー」大型店も。
農協内だけあって園芸用品が豊富だった。

店名も「Aコープトスク」から「トスク」へ

鳥取生活センター本店では店舗設備に加え、1988年3月の新装開店を機に新ブランドを冠した「TOSC鳥取生活センター本店」に、1995年10月の鳥取県東部農協経営統合にともない「Aコープトスク本店」に、2001年8月の店舗部分社化にあわせて「トスク本店」に店名変更する。
トスク本店は運営母体の再編や消費生活者の需要の変化にあわせて店舗イメージを刷新を繰り返したもの、鳥取県民の生活を支える場所としての役割を一貫して担い続けた。

最盛期20店舗超抱えたトスク、全店閉店

トスクは1972年7月の稲葉店を皮切りにチェーン展開を開始。1995年10月の鳥取県東部農協経営統合により各農協系食品スーパー「Aコープ」を引継ぐことで、鳥取県東部に20店舗超という店舗網を敷くこととなったが、店舗の大多数が競争力に乏しい狭小店舗であったため、2000年代以降店舗整理を余儀なくされた。

店舗整理の過程で市中心部に近い支店は吉成店のみとなった。

その後、JA鳥取いなばグループによるトスク廃業の方針により、2023年7月31日には「トスク佐治店」「トスクふなおか店」の2店舗が閉店。同年9月31日午後1時には「トスク吉成店」「トスク丹比店」「トスク用瀬店」「トスクちづ店」「トスク若桜店」「フレッシュライフいわみ」の6店舗が閉店していた。

地域に愛されたトスク、55年の歴史に幕

トスク本店閉店当日となる2023年9月30日は、昼過ぎから雨模様となったが、店内では催事イベントの服飾雑貨発掘に勤しむ若者や衣料品フロアでのマネキンや事務用品の処分販売を気にする女性客、子供連れで記念写真を撮るファミリー、閉店を惜しむ常連客で賑わいをみせた。

閉店当日昼過ぎのトスク本店。

トスク本店では閉店時刻となる18時に閉店式典を開催。夕方から激しい雨となるも大勢の買物客に囲まれ、55年の歴史に幕を下ろした。

大雨のなか大勢の買物客に囲まれ、55年の歴史に幕を下ろした。

一部専門店営業継続するも解体後の活用方針は未定

トスクは2023年度中に閉店する全9店舗のうち、7店舗の譲渡交渉を進めているが、道の駅きなんせ岩美隣接の「フレッシュライフいわみ」(岩美町)と旗艦店である「トスク本店」(鳥取市)に関しては譲渡交渉対象外としている。
トスク本店では2024年の建物解体まで家電量販店「エディオントスク本店」(トスクFC)を始めとする専門店の一部に加え、母体である農協窓口「JA鳥取いなば行徳本店」が営業を継続する方針を発表しているが、現時点において跡地活用の具体的な方針は定まっていない。

JA鳥取いなば行徳本店貯金課による営業継続の案内。

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トスク吉成店、2023年9月30日閉店-鳥取のAコープ系、日ノ丸ストアから41年の歴史に幕

鳥取県鳥取市の国道53号線沿いにあるJA鳥取いなばグループ(本社:鳥取市)の食品スーパー「トスク吉成店が2023年9月30日午後1時をもって閉店する。

幹線道路沿い激戦区のトスク大型店

トスク吉成店は1982年4月に地場交通系スーパー「日ノ丸ストア」として開店。建物は平屋建で店舗面積は1,479㎡。
1998年7月にJA鳥取いなば(鳥取いなば農業協同組合)が店舗を引継ぎ、同社直営スーパー「Aコープトスク吉成店」として開店、2001年8月の店舗部分社化にあわせて「トスク吉成店となった。
トスク吉成店は転換後も“幹線道路沿いという好立地”を活かし、持ち帰り寿司店「小僧寿し」や中華食堂「大阪王将」といった既存の食関連店舗に加え、100円ショップ「ダイソー」など専門店を導入。あわせて、同社他店舗を上回る約10年おきのリニューアル(2007年・2016年)を実施し、内外装の美装化や産地直送商品の拡充を進めることで集客力の向上を図ったが、JA鳥取いなばグループによるトスク廃業の方針にともない、2023年9月30日をもって同店を含む全7店舗が閉店することとなった。

トスク吉成店。

跡地はエスマートが取得の方針

トスク吉成店に関しては、岡山地場流通大手「マルイ」(本社:岡山県津山市)傘下の食品スーパー「エスマート」(本社:鳥取市)が店舗跡を取得する方針を示している。
一方、店舗の至近距離200m圏内に「エスマート吉成店」が存在するほか、幹線道路沿いには同じくマルイ系の「マルイ宮長店」やイオン系の「イオン鳥取店」、大手ディスカウント「スーパーセンタートライアル叶店」といった競合店も多数存在しているため、既存店との差別化が必要になるとみられる。

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札幌エスタ、2023年8月31日21時閉店-騒がしく賑やかな営業最終日、そごうから45年の歴史に幕

北海道札幌市中央区のJR札幌駅にある駅ビル型複合商業施設「JRタワー」の「札幌エスタ」が、2023年8月31日午後9時をもって閉店した。

最終日を迎えた札幌エスタ。

時代とともに変わり続けたサツエキのシンボル

札幌エスタは1978年9月に開業。建物は地上11階地下3階建で延床面積は86,582㎡。JR北海道グループの札幌駅総合開発(旧札幌駅南口開発)が所有する。
札幌エスタは開業以来、道内初となる百貨店「札幌そごう」を核とする商業施設であったが、旧そごうグループの経営破綻にともない2000年12月31日をもってそごうが撤退。エスタは2001年1月2日より地下1階~2階食品フロア「エスタ食品街(旧そごう食品街)」と10階レストランフロア「エスタ味のテラス」の3フロアを中心とした暫定的な営業体制となった。

開業当初の「札幌エスタ」「札幌そごう」。
(JR北海道リリースより)。

一方、札幌エスタ隣接地では新たな複合商業施設「JRタワー(札幌ステラプレイス・大丸札幌店)」の建設が進んでいたこともあり、エスタの新たな核として、2001年7月に道内初となる家電量販店「ビックカメラ」「ビッグピーカン」が開店するなど施設再生に向けた動きが加速。2002年2月のアミューズメント「ナムコプラボ」開店により、エスタは約1年2ヶ月ぶりに全館の営業再開を果たした。

最終日のビックカメラ札幌店。

エスタはその後も、2004年10月に10階にナムコのラーメンテーマパーク「札幌ら~めん共和国」、2010年3月には大型雑貨店「ロフト」を導入するなど、サツエキのシンボル的存在として約110店舗が出店していたが、2021年11月に北海道新幹線延伸開業(2030年度)を背景とした駅周辺整備「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」を理由に、2023年夏を目処に閉店する方針を正式発表していた。

8月からはファイナルセール、各店独自の記念施策も

札幌エスタでは2023年8月1日から地階食品フロア「エスタ大食品街ファイナルセール」を開始。記念冊子の配布やカウントダウンボード・メッセージボードの展示を打ち出した。

閉店当日午前9時ごろの札幌エスタ。

ビックカメラでも全店共通の決算セールに加え、札幌店移転にともなう「大感謝祭」「お宝発掘市」の開催やメッセージボード、店舗イメージキャラクター(さっぽろたん)の展示を打ち出すなど、専門店それぞれのかたちで長年の営業と来店客への感謝をアピールした。

賑やかな最終日、各店で完売相次ぐ

札幌エスタ閉店当日となる8月31日は、午前10時の営業開始前からエスタの勇姿や歴史の展示、閉店カウントダウンの看板を写真に収める来店客が数多くみられた。
ビックカメラでは移転準備にともなう空きフロアが目立ったもの、エスタ大食品館ではサザエとISHIYA(石屋製菓)のコラボスイーツ店「十勝大名×白い恋人ソフトクリーム」を始め、エスタ“ならでは”の商品を求める来店客の行列が複数の店舗で生じ、夕方までに購入受付の終了・完売となる店舗が相次いだ。

最終日のユニクロ。

また、札幌ら~めん共和国では「食材切れ」を理由に、前倒しで全店オーダーストップ。レストラン行エスカレーターを一部閉鎖するなど、各フロアで営業終了時刻の前倒しがみられた。

札幌ら~めん共和国。来館者と記念写真に応じるスタッフも。

営業終了時刻が迫る午後7時30分ごろからは地階玄関一帯で紙袋の配布、午後8時40分ごろからはビックカメラ店員による見送りといったサプライズもあり、エスタの45年の歴史は騒がしく賑やかな幕引きとなった。

エスタ閉店を見届ける来店客で賑わいをみせた。
「アイラブエスタ」「アイラブユー」の叫び声も。

エスタ跡地、道内最高層の超高層ビル計画も

札幌エスタの閉店は北海道新幹線の開通を見越したもの。
エスタの跡地は隣接地とともに「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」による再開発がおこなわれ、清水建設などにより43階建て・高さ約245メートルの複合ビルが2029年秋を目処に開業する予定である。
一方で、近年の資材高騰による事業費増加もあり、規模縮小や開業延期を含めた計画の見直しも取り沙汰されている。

札幌エスタ跡地に建設予定の新施設。
現在のJRタワー高層部を上回る高さ245mの施設となる。
(札幌市HPより)。

都商研の取材に対し「これからエスタがどうなるか気になる」「そんな高いビルになるなんて知らなかった」(10代女子)との声も聞かれるなど、道民の札幌駅再整備に対する注目度の高さは新施設に匹敵するものといえる。
JR北海道には長年サツエキのシンボル的存在として親しまれたエスタと同様、北海道の玄関口に相応しい施設づくりを期待したい。

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西武池袋本店、2023年8月31日にストライキ決行・休業-店頭でデモ「売却反対」「雇用維持」訴える

イトーヨーカドーなどを展開する流通大手「セブン&アイHD」(東京都千代田区)が、傘下の百貨店大手「そごう・西武」を投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」(本社:米国)に2023年9月1日付で売却する方針を固めたことを受け、「そごう・西武労働組合」は売却方針に反対すべく、8月31日に「西武池袋本店」(東京都豊島区)でストライキを決行、同店は終日臨時休業した。

西武池袋本店で行われたストライキ。

開店時間になってもシャッター開かず、納品も停止

スト決行までの経緯はこちら。
西武池袋本店では朝10時の開店時にもシャッターは上がらず、玄関には「全館臨時休業とさせていただきます」の貼り紙が。
納品口には「納品は停止しております」の看板もかかげられた。
また、一部社員は出勤しているとみられ、入店する人の姿も見られた。

貼り紙が掲出された西武池袋本店。

午前中、池袋の街でデモ行進を開始

西武池袋本店の周辺では、午前中を中心に「そごう・西武労働組合UAゼンセン・連合系が「西武池袋本店を守ろう!池袋の地に百貨店を残そう!これからもお客さまと共に…」などと書かれた横断幕や幟り旗を掲げてデモ行進をおこなった。

掲げられた幟り旗と取材するテレビ局。

全学連など、西武エントランスで連帯デモ

午前中を中心に「そごう・西武労働組合」が百貨店から離れているあいだ、店舗エントランスでは各業界ユニオン全学連中核派などがデモ隊(勝手連)を構え、ストライキに支援・連帯するとして「池袋の街を変えるな」「売却阻止」「憲法改正阻止」「政権交代」「ウクライナ即時停戦せよ」「中国との戦争反対」などを訴えていた。

昼からは店舗エントランスで雇用維持など訴える

昼ごろからは、「そごう・西武労働組合」が店舗エントランスで横断幕や「ストライキ決行中」の札をかかげ、ビラを配るなどして雇用の維持などを訴えた。
「そごう・西武労働組合」によると、デモには約300人が参加したという。

店舗前で雇用の維持を訴えるそごう・西武労働組合。


ビラ配りもおこなわれた。

セブンアイ、9月1日に「そごう・西武」売却完了へ

西武池袋本店はかつては日本一、2023年時点でも全国3位の売上高を誇る百貨店であり、外資への売却とそれに伴うヨドバシカメラ入店によって西武側の雇用が守られないばかりか、百貨店の売上が低下するとそごう・西武全体の経営に大きな影響を与える可能性もある。今回のストライキはそれに反発したものとなる。
大手百貨店でのストライキ決行は1962年の阪神百貨店以来、約61年ぶりとなった。
一方で、セブン&アイHDは9月1日での売却を進めるとしており、8月31日に取締役会を開催。9月1日付で売却完了となる見込みとなっている。

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岡島百貨店、2023年2月14日一旦閉店-新店舗に想いを繋ぐ最終日、ココリ甲府店は3月3日開店へ

山梨県甲府市の中心部・紅梅通りにある県内唯一の老舗百貨店「岡島百貨店」の現店舗が、2023年2月14日に85年の歴史に幕を下ろした。
近隣の再開発ビル「ココリ甲府」では、岡島出店に向けた工事が進んでいる。

最終営業日が近づく岡島百貨店。
(※一部写真は最終日前に撮影)

創業180年の老舗百貨店「一旦閉店」

岡島百貨店は1843年に呉服店・茶販売店として創業。現店舗は1938年に移転開業したもので、1988年の増床リニューアルにより現在の姿となった。
館内はフルラインの百貨店であり、三越と提携。建物は8階から地階、店舗面積は29,520㎡となっていたが、老朽化による再開発が浮上。現店舗を閉店し、ほぼ空き店舗となっている再開発ビル「ココリ」(正式名:紅梅地区再開発ビル)の地階-2階に2023年3月中に移転することを発表していた。
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閉店当日を迎えた岡島現店舗。

最終営業日、「オリジナルソング」披露も

現店舗の最終営業日となった2月14日は火曜日であったものの、朝から多くの人が訪れた。
店舗1階では「岡島の歩み写真展」が開催され、ブロックで出来た岡島の模型などに見入る客も多かった。

岡島の歩み写真展。


ブロックで作られた岡島の模型。


市民から寄せられたメッセージ。

18時からは、1階店頭で山梨出身の歌手・伸太郎氏のミニライブが開催。岡島閉店にあわせて書き下ろされた新曲も披露された。

閉店を迎えた19時ごろには、オリオン通りのエントランスで記念式典が開催された。
雨宮潔社長の「暖かくご支援いただきありがとうございました。新店舗にて、みなさまをお待ちしております。」の挨拶とともにシャッターが下ろされると、式典を見守る市民から拍手が巻き起こった。

岡島百貨店、また会う日まで。
左側に写るココリが新店舗。

新店舗の工事すすむココリ、現店舗跡はタワマンに

岡島近く・オリオン通りにある再開発ビル「ココリ」では、3月3日の新店舗開店に向けた工事が進んでいる。ココリは当初はジュエリーモールをめざすなど経営が迷走し、テナントがなかなか定着しない状態であった。
新店舗の店舗面積は約4,500㎡であり、岡島は現店舗の7分の1の面積となる。また、現店舗で人気を集めていた「ジュンク堂書店」などは撤退となった。

岡島の看板が設置されたココリ。

岡島新店舗のコンセプトは「地域共創型上質スペシャリティストア」で、フロア構成は以下のとおりとする計画。

2階 新しいライフスタイルのフロア リビング・服飾・催事場等
1階 上質ファッションのフロア デパコス・服飾など
地階 上質な日常を提供する食のフロア 生鮮・食品・明治屋など

岡島は店舗面積は縮小するものの、新たなココリの、そして甲府市中心部の核として、新たな歴史を刻むことになる。

岡島出店に向けた工事が進むココリ。

なお、岡島の現店舗は大手ディベロッパー「タカラレーベン」(東京都千代田区)に売却、現店舗を解体して再開発をおこなう。総事業費は約220億円。

岡島跡のタワーマンション。

再開発後に建てられる建物は地上28階建てで、約360世帯規模のタワーマンションを核に、立体駐車場と商業施設となる。オリオン通り側と低層部屋上には広場も設置。2028年7月の完成をめざして工事がすすめられる。新たな建物に岡島百貨店が出店するかどうかは、現時点は発表されていない。

一部は商業施設となる。(ニュースリリースより)

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藤丸百貨店、2023年1月31日閉店-創業122年の老舗、「再生」に望みを繋いだ最終営業日

北海道帯広市の百貨店「藤丸」が、2023年1月31日の営業を以て閉店し、122年の歴史に幕を下ろした。

最終営業前日の藤丸百貨店。

藤丸、122年の歴史に一旦幕

藤丸百貨店は1900年に富山県の商人が下帯広村(現店舗近く)で呉服太物店として創業。1930年に鉄筋コンクリートの大型店となり、百貨店化した。
現在の建物は1982年3月に新築移転したもので、建物は地上9階・地下3階(地下2階~地下3階は駐車場)、店舗面積は19,852㎡。地権者の組合「ふじまるビル」が所有する。
テナントとして「くまざわ書店」「ミニプラ」「COACH」「帯広市市民活動交流センター」「勝毎サロン」(十勝毎日新聞社の文化サロン)などが出店する。8階の帯広市市民活動交流センター。

藤丸は道東唯一の百貨店となっていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大などによりテナントの撤退が相次ぐとともに業績が悪化。閉店するに至った。

シャンデリアが並ぶ館内。

以前の記事はこちら。

多くの人が訪れた最終営業日

営業最終日は氷点下の気温となったものの、開店から多くの人が詰めかけた。

混みあう店内。

セールでは「最大7割引き」と謳っていたが実際は8割、9割引の商品も。
また、7階催事場では「藤丸122年間のあゆみ展」が開催されており、とくに創業期の「藤丸呉服店」時代の書類や建物の屋根瓦などは多くの客から注目を浴びていた。

「藤丸122年間のあゆみ展」の案内。

閉店を迎えた19時前からは、正面入口の前で閉店セレモニーが行われた。 
藤丸1階エレベータ前のシャンデリア下で行われた閉店の挨拶。

セレモニーでは、藤丸の藤本長章社長が新会社が藤丸の運営を引き継ぐ計画(後述)について触れ、「藤丸にいただいたご愛顧を繋げてもらえるようにお力を頂戴したい」と述べたのち「藤丸の歴史は帯広・十勝の歴史そのもの」「本当に長い間、ありがとうございました」と最後の挨拶。
多くの客が見守るなか、19時40分ごろにシャッターが下ろされ、藤丸は一旦眠りにつくこととなった。

藤丸百貨店、また会う日まで。

多くのテナント、帯広から消滅

藤丸の閉店により、十勝エリアから百貨店の売場は姿を消す。
食品売場責任者の女性は都商研の取材に対し「お客様からは『贈答品を買う場所が無い』と言う声を多数頂く。近隣店舗として釧路昭和のエムアイプラザ(札幌丸井三越エムアイプラザイオン釧路昭和店=イオン内のサテライト百貨店)を紹介している。」と残念そうに話す。
また、おもに百貨店に出店する大手アパレルの婦人服ブランドは「本当は続けたかった。物件も探して貰ったけど条件に見合わずやむを得ず撤退。」、同じく主に百貨店に出店する大手アパレルの紳士服ブランドは「場所がない。」「十勝管内の商圏は魅力的なので続けたい。でも広小路は建物が古すぎてダメ。復活して早くて1年かかる。」と話した。

再生めざす動きも―ー具体的な構成は未定

先述したとおり、藤丸は再生の動きもある。
帯広市内で起業支援や経営支援などをおこなっているベンチャー企業「そら」(本社:帯広市)を主体として何らかのかたちで経営を引き継ぐことを検討しており、2022年12月には新会社が設立されている。
具体的な店舗内容などは発表されていないものの、今後は耐震補強などを含めた改装工事をおこなうとしており、再生をめざして動き始めることとなる。
現在の藤丸の食品担当者は取材に対して「新店舗でも食品売場を作る話は出ているようだが、東京名店街や九州屋といった大手のテナントに今のところ話は来ていないらしい。」「新店舗では十勝の食材(魚、肉、果物、野菜)が豊かなので、あくまでそこを優先した売場作りを進めたいようだ。」としており、十勝の百貨店需要を満たしつつも、地域住民にも観光客にも親しまれる十勝の強みである「食」に力を入れた店舗の誕生が期待される。

藤丸から移転予定のおもなテナント(一部)
  • 帯広市市民活動交流センター
    :道新帯広ビル(仮移転)
  • 美容室ジャングルジャップ
    :帯広市西19条南3丁目4-12 レインボーヴィレッジ
  • 補聴器館
    :JR帯広駅 エスタ帯広
  • 珈琲専科ヨシダ
    :藤丸向かい
  • アヴェニュー
    :イオン帯広店
  • そば処一ぷく
    :サンバード長崎屋 帯広店「そば処一休」に統合

また、藤丸発行の全国百貨店共通券は他店舗での通用を停止。
4月30日まで貸金決済法に基づく払い戻しがおこなわれ、5月1日以降は失効することとなる。

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東急百貨店渋谷本店・文化村、2023年1月31日閉店-多くの客が惜しんだ最終営業日、再開発で解体へ

東京都渋谷区の百貨店「東急百貨店渋谷本店」と東急グループ系複合施設「Bunkamura(東急文化村)」が、再開発のため2023年1月31日の営業を以て閉店。最終営業日は多くの人が閉館を惜しんだ。

最終営業日を迎えた東急百貨店渋谷本店。

56年の歴史に幕を下ろした東急百貨店本店

東急百貨店渋谷本店は渋谷区立大向小学校跡地に1967年11月に開店。
建築から半世紀を経て老朽化がすすむなか、2021年に東急グループの「東急」「東急百貨店」、高級ブランドを傘下にもつLVMHグループルイヴィトン・モエヘネシー)の不動産投資会社「L Catterton Real Estate(LCRE)」が再開発をおこなう方針を発表していた。LCRE社は「GINZA SIX」の運営にも関わっている。

詳しい経緯はこちら

多くの人が惜しんだ最終営業日

最終営業日は朝から多くの人が詰めかけ、店舗内外の写真を撮る人も多くみられた。閉店が近づいた17時半ごろからは入店客に店員から花が贈られ、店員と話し込む客の姿もあった。

閉店セールのテーマは「THANKS & LINK」。

閉店時間を過ぎた19時すぎ、正面玄関前では多くの客が見守るなか、稲葉満宏東急百貨店本店店長が「55年もの素敵な出会いへの感謝」の言葉を述べたあと「東急百貨店本店を支えてくださった皆さま、本当にありがとうございました。」と挨拶。
拍手のなかシャッターが下ろされ、東急百貨店本店はその歴史に幕を下ろした。

55年の歴史に幕が下ろされた。

東急本店跡、解体後に164m高層ビル-文化村復活へ

東急百貨店本店跡地は「東急」「東急百貨店」、高級ブランドを傘下にもつLVMHグループルイヴィトン・モエヘネシー)の不動産投資会社「L Catterton Real Estate(LCRE)」により再開発がおこなわれる予定で、建物は近く解体される。
跡地には、2027年度中の竣工をめざして高さ164メートル、地上36階・地下4階建ての超高層ビル「Shibuya Upper West Project(仮称)」が建設される予定となっており、文化村はこの建物に再入居する予定としている。

(ニュースリリースより)

なお、低層階は商業施設となるものの、東急百貨店が再出店するかどうかについては2023年1月時点では未発表となっている。

一部売場・施設はヒカリエなどに移転

東急百貨店では、本店の閉店に伴い「東急渋谷ヒカリエ ShinQs」に複数の売場を移設することを発表。具体的には地階に「シャネル(化粧品)」「ゲラン」などのコスメ類、2階と5階に「グランドセイコー」「citizen」などの高級時計、5階にお客様サロンなどが順次移転・開業することとなっている。
また、ワイン売場は松濤のオクシブビル1階に「THE WINE by TOKYU DEPARTMENT STORE」として移転オープンする。
なお、文化村の施設のうち「オーチャードホール」は営業を継続。ル・シネマは渋谷東映プラザ内に移転して「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」に、美術・アート関連はヒカリエ内に移転するとしている。

東急本店の売場移転先案内。

なお、渋谷随一の書店として人気を集めた7階の書店「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」はそのまま閉店することとなった。

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西友御器所店、2022年11月30日18時閉店-最終営業日の閉店式典「跡地に関する発表」も

愛知県名古屋市昭和区の名古屋市営地下鉄御器所駅近くにある大型総合スーパー「西友御器所店」が2022年11月30日午前6時をもって閉店した。  

セゾンらしい“アート”な大型総合スーパーだった

西友御器所店は1983年8月25日に「西友ストアー御器所店」として開店。建物は地上4階地下1階建で営業フロアは1~3階、店舗面積は3,509㎡。同社店舗としては名古屋市内2店舗目であった。
御器所店は開店当初、同社運営百貨店「春日井西武」の外商事務所開設といった非物販機能の拡充を打ち出していたほか、1990年6月に増床リニューアルを実施するなど、西武セゾングループが力を入れた店舗のひとつであった。

閉店当日の西友御器所店。

西友の経営体制変更後も愛知県内有数の規模を誇る主力店舗のひとつであったが、2022年11月30日付での閉店が決定。閉店に先駆けて10月14日に3階を閉鎖(衣料品売場は2階に移設)、11月26日に2階を閉鎖するなど営業規模を段階的に縮小したほか、店舗入口付近に「メッセージボード」を開設した。

特設のメッセージボード。

閉店式典では感謝や「跡地」に関するコメントも

西友御器所店の閉店当日、同店の閉店を惜しむ客やわずかに残る商品を求める客で賑わいをみせ、店舗入口には「商品の大半は売り切れました」といった掲示もなされた。

店頭に掲示された「売り切れ」の案内。

午後5時50分からは同店店長による「閉店セレモニー」が始まり、多くの買物客に囲まれ「これまで営業できましたのも、ひとえに皆様のご愛顧の賜物と、深く感謝いたしております。本当にありがとうございます。」「4年後の2026年、新たなお店として、オープンの予定でございます。リフレッシュオープンの際には、さらに皆様に愛され、なくてはならないお店になって戻って参ります。」と、買物客への感謝と今後の建替再出店に関しコメントを残した。

閉店セレモニーは店内での開催となった。

閉店セレモニー終了後の午後6時過ぎには買物客の送り出しを終え、西友ストアー時代から40年近い歴史に幕を下ろした。

買物客の送り出しを終え40年近い歴史に幕をおろした。

再開発へ-西友御器所店、2026年新装開店へ

西友御器所店跡地では、大手不動産デベロッパー「MIRARTHホールディングス」(旧タカラレーベングループ)主導によるマンションを核とする複合開発が予定されている。西友は新施設の1階(店舗面積1,608㎡)に新店舗を出店する予定であるが、新店舗は現店舗の半分以下の規模となるため、取扱商品の削減や食品スーパー業態への転換も予想される。

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