鳥取県鳥取市のJR鳥取駅前にあった「鳥取大丸」の跡に、同店を前身とする地場百貨店「丸由百貨店(OYOU)」が2022年9月3日午前9時50分に開業した。
丸由百貨店。(開業当日)
長らく「大丸」として営業していた山陰初の百貨店
丸由百貨店は、1937年2月に地場老舗呉服店「由谷呉服店」と地場大手バス会社「日ノ丸自動車」創業家により「丸由百貨店(まるゆ百貨店)」として設立・創業。
同社は山陰初の百貨店(地上4階建)として創業し、鳥取駅前における商業集積形成の先駆けとなったが、1949年12月に大手百貨店「大丸(現大丸松坂屋百貨店)」と資本業務提携を締結し「鳥取大丸」に改称、丸由の商号は姿を消していた。
1975年に現店舗(地上5階地下2階建、店舗面積11,973㎡、黒川紀章設計)を開業し、同社と同様に日の丸グループが出資する「米子大丸(旧米子ストア/現米子しんまち天満屋)」と共同販促を展開するなど、山陰の大丸旗艦店として、鳥取駅前の商業核としての確固たる地位を築いた。
鳥取大丸。(2022年8月31日/営業最終日)
その一方、1990年代後半から郊外型商業施設との競合により業績が低迷。2018年7月には創業以来関わりの深い「日ノ丸グループ」と「山陰合同銀行」系列のファンドが出資する新会社に運営を移行し経営陣・経営体制を刷新。大丸松坂屋とのライセンス契約・業務委託契約を維持しつつ、市民参加型複合商業フロア「TOTTORI PLAY’S」や鳥取大丸改称当初からの塩干物専門店を母体にもつ鳥取グルメセレクトショップ「鳥のもの百貨」、プローバグループのベーカリーカフェ「Bon*bon」といった地元山陰・鳥取ブランドを導入することで地域密着路線を強化。あわせて、「北野エース」「L’OCCITANE」といった全国区のブランドを導入することで鳥取市内唯一の百貨店として質の維持を図った。
閉店直前まで行われた歴史展。
その後、同社は2022年5月に大丸松坂屋とのライセンス契約満了と商号変更を発表し、8月31日をもって一時閉店。9月1日に法人名を創業当初の商号を由来とする「丸由(まるゆう/OYOU)」に変更し、9月3日から丸由百貨店として新装開業することとなった。
丸由百貨店。(2022年9月1日/商号変更日/外装工事中)
開業当日は式典や地域参加型イベントも
丸由百貨店では新装開業を記念して「丸由オープニングフェスタ」と題したイベントを9月3日に開催。午前7時からバードハットが歩行者天国となった。
午前9時30分にはフェスタの皮切りとなる記念式典「オープニングセレモニー」を開始。式典には岡周一丸由代表取締役社長に加え、鳥取1区を地盤とする石破茂衆議院議員や深澤義彦鳥取市長といった地域の代表者が姿をみせた。
新たに設置された大店法看板。
岡周一社長は式典の冒頭で鳥取銀行を始めとする金融機関や日ノ丸産業を始めとする日ノ丸グループ、行政への御礼の挨拶をしたうえで、コロナ禍による改装計画見直しや社会情勢の変化、大丸松坂屋とのライセンス契約終了、新生丸由百貨店の立ち上げに関して言及。
CMでも使われているキャッチコピー「鳥取らしく、 私らしく、 OYOUらしく. 焦らず、まっすぐ、変わります。」とともに「弊社は「鳥取を笑顔の溢れる街にする」というミッションを掲げ、「人々の集う場となる」というビジョンを描き、「かつての賑わいの中心であった鳥取の百貨店への原点回帰」を目指し地域の皆様に愛される百貨店となるよう社員一丸となってよりよいものにしていく」と決意を明らかにした。
岡周一丸由代表取締役社長。
石破茂衆議院議員は「大丸っちゅうのはイントネーションが(東京と鳥取で異なり)難しい。」「(鳥取に)大丸があるというのは子供の頃から嬉しかった。大丸に行くのはハレの日だった。」と幼少期からの思い出を述べ、地方創生のキーワードや鳥取県の潜在的な魅力、地方百貨店の生き残りに向けた取組みを具体的な事例や統計を交えて紹介。「鳥取が新しい日本のリーダーとなっていく、その牽引を丸由百貨店さんにお願いして、私どもも一緒にやっていきたい。」と柔らかな口調でアピール。
石破茂衆議院議員。
深澤義彦鳥取市長は「旧鳥取大丸様は鳥取唯一の百貨店として地域経済、まちづくりに大変大きな役割を果たした。」として、百貨店の通常の姿と異なる存在感をみせているというトットリプレイスや新生丸由百貨店への期待をアピール。代表者による挨拶が終わり、テープカットとなった。
テープカット。
丸由百貨店は開業前から長い待機列もあり、営業開始時刻を本来の午前10時から午前9時50分に前倒し。5階麒麟獅子フォトスポット前にて配布されたオープニングプレゼント(OYOUロゴ入りお菓子/先着250名)は午前10時までに姿を消した。
OYOUロゴが描かれた菓子は10分足らずで配布終了となった。
バードハットでは午前10時に麒麟獅子舞の披露、午前11時には鳥取県警察音楽隊によるミュージックパトロールの披露、午後2時には地元鳥取で“生粋のポップバンド”を称するLong Tall Sally(ロングトールサリー)によるライブイベント、午後5時30分には鳥取駅周辺の企業や店舗が参加する「第1回 鳥取駅周辺企業対抗 のど自慢大会」が行われた。
あわせて、地元飲食店や高校調理科調理クラブ参加による休日恒例イベント「山陰三ツ星マーケット」も開催。丸由のみならず地元住民や近隣店舗、政財界が一体となることで、「新しい鳥取の百貨店」を称するに相応しい賑わいを生み出した。
鳥取大丸「地元化」集大成、新しいブランドも
丸由百貨店地下1階「おいしさまじめの食品」(旧ほっぺタウン)フロアには、地元生鮮店(いまがわ・大山望)の複合店舗「ミート&ベジImagawa」や隣接するホテルニューオータニ鳥取(日ノ丸観光)の中華惣菜店「菜園」、鳥取大丸時代からの名物大判焼・今川焼・回転焼店「ほっぺ焼」、量り売りラウンド菓子店「スイートプラザ」といったブランドが継続出店。
鳥取大丸名物「ほっぺ焼」は店舗を全面刷新した。
1階「化粧品・婦人服/婦人洋品雑貨」フロアには、「COACH」「CHANEL」「L’OCCITANE」「ESTEELAUDER」といったブランドに加え、駅前入口にルームウェア専門店「Pre minette」が新規出店。 Pre minetteでは「gelato pique」「SNIDEL HOME」といった人気ブランドのWOMEN・MEN・KIDSラインを展開する。
鳥取大丸時代から順次刷新進めた1階フロア。
2階「婦人服・こども服」フロアには「ONWARD CLOSSET Select(23区/組曲/自由区)」や「詩仙堂」「Selection Sensounico」「MK MICHEL KLEIN」「BeBe」といったブランドに加え、オンワードの紳士服ブランド「J.PRESS」が9月30日までポップアップ出店する。
3階「紳士服・紳士雑貨/リビング・寝具/商品券・友の会」フロアには同社総合メンズセレクトショップ「151LIFE」や「Hush Puppies」「LANVIN SPORT」、4階「宝飾・美術/無印良品」フロアには総合ライフスタイルショップ「無印良品」や宝石・時計サロン・アートギャラリー・VIPサロン、5階・屋上階「TOTTORI PLAY’S」にはコンディショニングスタジオ「カラダまなびラボ」や飲食店「BOWL TABLE」「KAEN」など継続出店する。
TOTTORI PLAY’Sの「全国有名駅弁フェア」。
地下食品フロア名称募集やカード会員向け企画も
丸由百貨店では開業日以降も鳥取大丸時代の地下食品フロア「ほっぺタウン」に代わる新たな名称の募集など、買物客参加型の企画を開催。あわせて、鳥取大丸デイリーカードに代わる「OYOUカード」会員向けの新規入会キャンペーンや優待、山陰合同銀行(ごうぎん)発行クレジットカード会員向けの優待(1回5,000円以上決済で1,000円相当のポイント還元/先着500名/エントリー必須)といった企画もあり、賑わいムードはまだまだ続きそうだ。
丸由百貨店本店
住所:鳥取県鳥取市今町2丁目151
営業時間:午前10時~午後7時
丸由百貨店エアポートショップ
住所:鳥取県鳥取市湖山町西4丁目110-5 鳥取空港
営業時間(午前):午前10時~午前12時
営業時間(午後):午後2時~午後6時30分
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