長崎県佐世保市にある小型百貨店「佐世保玉屋」が、2025年6月30日の閉店を撤退した。
現在はコンビニ程度の店舗面積とみられるが、そのまま営業を継続するとしている。
佐世保玉屋。(2024年7月)
131年の歴史がある百貨店・玉屋、現店舗は105年
佐世保玉屋は1894年に佐賀県小城市牛津町を発祥とする卸問屋「⽥中丸善蔵商店佐世保出張所」として開業。1905年に「田中丸呉服店佐世保支店」に改称、1920年に現在地に建物を新築してグループ初となる百貨店「玉屋」に業態転換、1941年の分社化を機に現在の「佐世保玉屋」となった。
佐世保玉屋・ここまでの経緯はこちら。
佐世保玉屋、最近は1階の一部のみ営業だった
佐世保玉屋は建物が老朽化しており耐震性が不足しているとみられるため、佐世保市から何らかの対応を行うように求められていた。
そのため、将来の建て替えを目標としつつ売場を縮小。2023年12月より1階食品館の大部分を穴吹系の地場スーパー「ジョイフルサン」の運営へと転換し、改装リニューアルをおこなっていた。
その後、2024年7月末を以て殆どのテナントに閉店を通知したため、多くのメディアで「建て替えのため2024年7月末で閉店」と報じられたものの、玉屋側はそれを否定していた。
佐世保玉屋は閉店せず営業を続ける。
2024年9月からは売場を「1階のみ」に集約、これに伴い、殆どのアパレル・ホームファニシングなどのテナントは撤退した。
都商研が関係者に取材したところ、佐世保玉屋は営業規模の縮小にともない、縮小前に在籍していた正社員の殆どが退職・もしくは退職予定になっており、来たる再開発に向けて人員整理を推し進めているということだった。
さらに2024年9月には食品売場のジョイフルサンが閉店。これにより、1階の一部でラヴィアンローズのサンドイッチ(1000円)や一部化粧品などを売るのみとなっていた。実際の店舗面積は、全て合わせてもコンビニ程度になっているとみられる。
そして、再開発の目途が付きつつあるとして2025年4月に「6月30日での閉店・近隣で仮営業実施方針」を発表していた。
「小型店」なら耐震改修対象外に-一部のみで営業継続
佐世保玉屋の「栄・湊地区市街地再開発準備組合」解散・再開発延期と閉店の撤回は、佐世保玉屋によって2025年6月18日に発表されたもの。
地元メディアの報道によると、再開発がまとまらなかった理由には、建築資材費の高騰もあるとしている。
改正耐震改修促進法では、学校・病院・百貨店など、不特定多数の人が利用する建築物で、一定規模以上のものを対象としている。そのため、佐世保玉屋は基準の面積を下回る面積で営業を続けることで、当面の耐震補強を回避したい考えだ。
佐世保玉屋から佐世保市中心部を望む。ジャスコ再開発前。
先述したとおり、佐世保玉屋は現在1階の一部でラヴィアンローズのサンドイッチ(1000円)や一部化粧品などを売るのみとなっていた。それゆえ、危険な建物であっても「小型店」であるとみなされ、耐震改修をしなくてもいい状態となっている。
一方で、建物の老朽化問題はこれで解決するわけではない。
2024年の佐世保玉屋の年間売上高は約9億3000万円。2025年は昨年よりも売場面積が減っているため、これより大きく減ることは必至で、単独での再開発は難しいであろう。また、佐世保玉屋はテナントを入れることも検討しているというものの、そのためには耐震補強が必要となる。
佐世保玉屋は佐世保市の中心商店街の一等地にあるため、早急な計画の見直しと再開発の着工が図られなければ今後も地域全体に大きな影響を及ぼすこととなりそうだ。
なお、近年、佐世保玉屋グループで建て替え・再開発した百貨店「長崎玉屋」、スーパー「マルタマ住吉店」はいずれもディスカウントスーパー「ダイレックス」になっている。
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