セブンアイ、「そごう・西武」売却検討と「ヨーカドー」縮小堅持を2022年4月発表-売上「流通首位」返り咲くも合理化へ

大手流通グループの「セブン&アイHD」は、2022年2月期決算にあたって傘下の百貨店「そごう・西武」の売却検討と傘下の総合スーパー「イトーヨーカドー」の堅持を同年4月7日に発表した。

そごう横浜店。

岐路に立たされた巨大大手流通グループ

セブン&アイHDは、2005年9月のIYグループ持株会社化により設立。2006年6月には大手百貨店「ミレニアムリテイリング(現そごう・西武)」を傘下に収め、(当時)国内最大手流通グループとなった。2007年にはグループ共通PB「セブンプレミアム」と共通電子マネー「nanaco」を相次ぎ取扱開始、米高級百貨店「バーニーズニューヨーク」日本法人やベビー用品店「アカチャンホンポ」買収による事業領域の拡大を図った。
一方、セブン&アイHDは2011年11月のイオンによるマルナカ買収で業界首位の座から陥落、コンビニ事業を除き業績不振が続いていた。こうした背景もあり、2021年5月までにセブン&アイHD株の4.4%を取得した米投資ファンド「バリューアクト・キャピタル・マネジメント」は、中核事業(コンビニ事業)への専念と非中核事業(百貨店の全株売却・総合スーパーの分離)の撤退、国外コンビニ事業の運営見直しに向けたロードマップ策定を要求していた。

ヨーカドーはセブンとの一体経営継続へ

セブン&アイHDは2022年4月の決算発表で、同年2月のそごう・西武売却検討(あらゆる可能性を排除せずに検討)を改めて打ち出し、ファイナンシャルアドバイザー起用のもと、事業ポートフォリオの見直し(ストラテジックレビュー)を進めていることを明らかにした。

西武池袋本店は21年9月に店舗・不動産の運営を一体化した。

一方、米投資ファンドの分離圧力を受けていた傘下の総合スーパー「イトーヨーカドー」は、従来同様に傘下のコンビニ「セブンイレブンジャパン(SEJ)」とともに一体経営を行い、「グループ中核機能」としての役割を担う。セブン&アイHDが取組むラストワンマイル施策では、セブンイレブン主導の「7NOW Powerd by セブンイレブンネットコンビニ」をオンデマンド型、ヨーカドー主導の「イトーヨーカドーネットスーパー」を計画購入型と位置づけ、2025年度年までに7NOWを全国拡大、ネットスーパーを首都圏全域に拡大するなど本格展開する。
また、セブンプレミアム食品部門開発体制の内訳として、生鮮部会では55名中39名、デイリー部会では41名中25名、加工食品部会では38名中20名をヨーカドー・ヨーク・ヨークベニマル出身者が占めることを明らかにし、従来同様に1品1品の質の向上と商品ラインナップの継続的見直しを図るとしている。

ヨーカドーは首都圏特化、最大18店舗の閉鎖も

セブン&アイHDはイトーヨーカドーの事業構造改革を2022年度までに完遂させるとしている。ヨーカドーは首都圏で物流センターの増設(新横浜・流山・千葉誉田・杉戸)や売場フォーマットの最適化を進め、実店舗・ネットでの経済圏構築を図る一方、2021年度までの構造改革(182店舗中54店舗閉店・人員約1400名削減)と2022年度の構造改革(7月の函館店閉店9月の金町店閉店(再開発による立ち退き))に加えて16店舗の閉鎖(精査中)と約300名の人員削減を行うとしており、さらなる地方店の閉鎖や運営譲渡が続くとみられる。

22年7月に閉店するイトーヨーカドー函館店。

なお、セブン&アイHDは2022年2月期連結決算での売上高(営業収益)が約8兆7497億円と、米国コンビニの買収などによりコロナ禍より上回ることとなった。一方のライバル・イオングループの売上高は約8兆7159億円となっており、セブンアイが再び流通業1位に返り咲いた。

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