やまき三春屋、2022年4月10日午後6時半閉店-品切れ相次ぐ最終営業日、呉服店時代から約500年の歴史に幕

青森県八戸市の百貨店「三春屋(やまき三春屋)」が2022年4月10日18時30分をもって閉店し、百貨店としての約52年の歴史に幕を下ろした。

最終営業日の三春屋。

長らく「ダイエー」の傘下だった

三春屋は、室町時代に創業した福島発祥の呉服店「三春屋呉服店」を前身にもつ衣料品店として1953年3月に法人化。1970年の八戸地場百貨店「丸美屋」買収を機に百貨店となった。同社は百貨店化を機に八戸本店の建替えや系列会社(ヤマニ三春屋)を通した岩手県内への出店など多角化に舵を切ったが、1985年には系列会社の再建支援により親密な関係となった大手スーパー「ダイエー」傘下となった。その後、三春屋は1995年にダイエーの完全子会社に、2005年にはダイエーグループの百貨店「中合」による運営になった。
2019年11月には不動産・商業コンサルタント「やまき」が中合から買収するかたちで、完全子会社「やまき三春屋」による運営に移行した。

やまきが再生に携わったアクア木更津。
(旧木更津そごう・現スパークルシティ木更津)

三春屋の現店舗はダイエー傘下となった1985年11月に開業したもので、建物は地上5階・地下1階建、売場面積は約15,574㎡、延床面積は約25,140㎡。八戸市中心部最大の商業施設(さくら野百貨店八戸店は15,227㎡)で、同時期に開業したファッションビル「ヴィアノヴァ」(1985年9月開業)と1階部分で直結、一体的な商空間を形成していた。

「脱百貨店」で改装中だったが…新会社、突然の閉店

三春屋は、やまきグループとなった直後の2020年2月から改装開始、同年5月21日にはやまきグループのLSSPによる会員制ラグジュアリーサロン・バーチャルショップ「三春屋Myサロン」を5階に開設する予定であった。
しかし、新型コロナ感染拡大を理由にサロン開設を含むリニューアルを一時凍結。2021年2月には中合出身の山川武氏が社長を退任し、やまき出身の土谷与志晴氏が社長に就任した。

「改装前の売りつくし」を掲げていた三春屋。

これにあわせ、三春屋は新たなコンセプトとして「デジタルハイブリッド百貨店」を掲げ、2021年3月に「近未来の百貨店に生まれ変わるための三春屋全館閉店セール」を開始。同年8月には百貨店フロアの低層集約と専門店の誘致に加えて直営食品売場の廃止と従業員の解雇を打ち出したが、同年9月にはリニューアル再延期(同年秋→2022年3月30日)と直営食品売場の一転存続、解雇の一部撤回(再雇用)を改めて打ち出すなど、朝令暮改といえる営業状況となった。その後も工事に進展はなく、2022年3月4日には突然の完全閉店方針を発表、同年4月10日をもって歴史に幕を下ろすこととなった。

無念の閉店、品切れ相次ぐも賑わう営業最終日に

三春屋は全館閉店セールを1年超続けており、三春屋の縮小に先駆けさくら野百貨店八戸店に移転したテナントもあったため、1階2階4階5階フロアの約半分、3階フロアの全域が閉鎖状態にあるなど、営業フロア・取扱商品数ともに減少傾向にあった。
しかしながら、閉店当日の地階ではプロジェクトおおわに(大鰐町地域交流センター鰐come)による「大鰐フェア」といった催事企画や惣菜テナントによる特売、1~2階ではブランド衣料やバッグの均一セール、4階ではブランドランドセルの80%OFFセールや手芸専門店での30%OFFセール、5階レストランでは最大半額セールといった取組みもあり、開店直後から賑わいをみせた。また、食品売場では三春屋やテナントによるギフト箱・トレーの販売、買物客による鮮魚売場での記念撮影会といった光景がみられた。

30年の歴史に幕を下ろすパブロ三春屋店。
盛岡や秋田にも店を構えるが八戸への再出店の予定はない。

閉店時刻迫る18時過ぎには地階食品売場の営業を終了し、18時25分までに買物客の送り出しを終えた。閉店時刻の18時30分からは正面玄関前に経営陣や従業員が登場、三春屋に対する想いやコメントとして「今ここにいらっしゃる皆様、今ここにいらっしゃらなくても三春屋でお買いものしていただいた皆様、我々にとって皆様が宝物、誇りです。」「一旦閉店すること本当に申し訳なく思う、誠に申し訳なく思う。」と語られ、閉店式典参加者全員による御礼ののち、大手老舗百貨店を上回るという「“永禄年間”から続く歴史の継承」に一旦幕をおろした。
閉店式典中は咽び泣く買物客や百貨店化当初の三春屋について話題にする買物客もおり、三春屋ロスは大きそうだ。

百貨店化から52年の歴史に幕を下ろした。

やまき三春屋の今後について、現時点であくまで「ゼロベース」としているが、式典では「改めてこのかたちに戻してこれるように本当に夢見て」と締めくくるなど、将来的な復活に含みをもたせたコメントを残している。
一方で、突然の閉店により移転先が決まらなかったテナントや、再就職先が決まらなかった従業員は少なくないとみられる。
三春屋の建物は、さくら野百貨店八戸店(1968年6月開業)やチーノはちのへ(1980年11月開業・解体予定)といった近隣大型店と比較しても新しく、百貨店各社が課題とする建物の老朽化や耐震性不足との縁もなかったため、八戸市民や三春屋利用者の要望に応えることができるような施設としての復活に期待したい。

一部店舗はさくら野やヴィアノヴァに移転、制服取扱いも

三春屋に入居していたテナントのうち、オーガニックコスメブランド「HOUSE OF ROSE(ハウスオブローゼ)」、日本製ニットを中心としたブランドのLサイズライン「JEANRENE PLUS(ジャンルネプリュ)」、ワールド系の婦人服「アンタイトル」、地元とんかつ店「とんかつ宮政」、魚惣菜店「焼魚舗神戸うおひで」はさくら野百貨店八戸店に移転、「呉服の三松」はヴィアノヴァに移転、「らーめんふぁくとりーのすけ」は市内中心部への移転の方針を明らかにするなど、残存するテナントの多くが八戸市内で存続する見込みとなった。
また、三春屋が取扱っていた高校制服は、2022年3月4日からさくら野百貨店八戸店もしくはイオン八戸田向店に移行。三春屋OMCカードの新規発行は2022年3月8日をもって終了、閉店後は標準のOMCカードに移行する。(発行済のカードはそのまま使用可能)

さくら野八戸店に移転するテナント一覧
  • HOUSE OF ROSE(ハウスオブローゼ)
  • JEANRENE PLUS(ジャンルネプリュ)
  • アンタイトル
  • とんかつ宮政
  • 焼魚舗神戸うおひで
ヴィアノヴァに移転するテナント一覧
  • 呉服の三松

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