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札幌エスタ、2023年8月31日21時閉店-騒がしく賑やかな営業最終日、そごうから45年の歴史に幕

北海道札幌市中央区のJR札幌駅にある駅ビル型複合商業施設「JRタワー」の「札幌エスタ」が、2023年8月31日午後9時をもって閉店した。

最終日を迎えた札幌エスタ。

時代とともに変わり続けたサツエキのシンボル

札幌エスタは1978年9月に開業。建物は地上11階地下3階建で延床面積は86,582㎡。JR北海道グループの札幌駅総合開発(旧札幌駅南口開発)が所有する。
札幌エスタは開業以来、道内初となる百貨店「札幌そごう」を核とする商業施設であったが、旧そごうグループの経営破綻にともない2000年12月31日をもってそごうが撤退。エスタは2001年1月2日より地下1階~2階食品フロア「エスタ食品街(旧そごう食品街)」と10階レストランフロア「エスタ味のテラス」の3フロアを中心とした暫定的な営業体制となった。

開業当初の「札幌エスタ」「札幌そごう」。
(JR北海道リリースより)。

一方、札幌エスタ隣接地では新たな複合商業施設「JRタワー(札幌ステラプレイス・大丸札幌店)」の建設が進んでいたこともあり、エスタの新たな核として、2001年7月に道内初となる家電量販店「ビックカメラ」「ビッグピーカン」が開店するなど施設再生に向けた動きが加速。2002年2月のアミューズメント「ナムコプラボ」開店により、エスタは約1年2ヶ月ぶりに全館の営業再開を果たした。

最終日のビックカメラ札幌店。

エスタはその後も、2004年10月に10階にナムコのラーメンテーマパーク「札幌ら~めん共和国」、2010年3月には大型雑貨店「ロフト」を導入するなど、サツエキのシンボル的存在として約110店舗が出店していたが、2021年11月に北海道新幹線延伸開業(2030年度)を背景とした駅周辺整備「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」を理由に、2023年夏を目処に閉店する方針を正式発表していた。

8月からはファイナルセール、各店独自の記念施策も

札幌エスタでは2023年8月1日から地階食品フロア「エスタ大食品街ファイナルセール」を開始。記念冊子の配布やカウントダウンボード・メッセージボードの展示を打ち出した。

閉店当日午前9時ごろの札幌エスタ。

ビックカメラでも全店共通の決算セールに加え、札幌店移転にともなう「大感謝祭」「お宝発掘市」の開催やメッセージボード、店舗イメージキャラクター(さっぽろたん)の展示を打ち出すなど、専門店それぞれのかたちで長年の営業と来店客への感謝をアピールした。

賑やかな最終日、各店で完売相次ぐ

札幌エスタ閉店当日となる8月31日は、午前10時の営業開始前からエスタの勇姿や歴史の展示、閉店カウントダウンの看板を写真に収める来店客が数多くみられた。
ビックカメラでは移転準備にともなう空きフロアが目立ったもの、エスタ大食品館ではサザエとISHIYA(石屋製菓)のコラボスイーツ店「十勝大名×白い恋人ソフトクリーム」を始め、エスタ“ならでは”の商品を求める来店客の行列が複数の店舗で生じ、夕方までに購入受付の終了・完売となる店舗が相次いだ。

最終日のユニクロ。

また、札幌ら~めん共和国では「食材切れ」を理由に、前倒しで全店オーダーストップ。レストラン行エスカレーターを一部閉鎖するなど、各フロアで営業終了時刻の前倒しがみられた。

札幌ら~めん共和国。来館者と記念写真に応じるスタッフも。

営業終了時刻が迫る午後7時30分ごろからは地階玄関一帯で紙袋の配布、午後8時40分ごろからはビックカメラ店員による見送りといったサプライズもあり、エスタの45年の歴史は騒がしく賑やかな幕引きとなった。

エスタ閉店を見届ける来店客で賑わいをみせた。
「アイラブエスタ」「アイラブユー」の叫び声も。

エスタ跡地、道内最高層の超高層ビル計画も

札幌エスタの閉店は北海道新幹線の開通を見越したもの。
エスタの跡地は隣接地とともに「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」による再開発がおこなわれ、清水建設などにより43階建て・高さ約245メートルの複合ビルが2029年秋を目処に開業する予定である。
一方で、近年の資材高騰による事業費増加もあり、規模縮小や開業延期を含めた計画の見直しも取り沙汰されている。

札幌エスタ跡地に建設予定の新施設。
現在のJRタワー高層部を上回る高さ245mの施設となる。
(札幌市HPより)。

都商研の取材に対し「これからエスタがどうなるか気になる」「そんな高いビルになるなんて知らなかった」(10代女子)との声も聞かれるなど、道民の札幌駅再整備に対する注目度の高さは新施設に匹敵するものといえる。
JR北海道には長年サツエキのシンボル的存在として親しまれたエスタと同様、北海道の玄関口に相応しい施設づくりを期待したい。

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西武池袋本店、2023年8月31日にストライキ決行・休業-店頭でデモ「売却反対」「雇用維持」訴える

イトーヨーカドーなどを展開する流通大手「セブン&アイHD」(東京都千代田区)が、傘下の百貨店大手「そごう・西武」を投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」(本社:米国)に2023年9月1日付で売却する方針を固めたことを受け、「そごう・西武労働組合」は売却方針に反対すべく、8月31日に「西武池袋本店」(東京都豊島区)でストライキを決行、同店は終日臨時休業した。

西武池袋本店で行われたストライキ。

開店時間になってもシャッター開かず、納品も停止

スト決行までの経緯はこちら。
西武池袋本店では朝10時の開店時にもシャッターは上がらず、玄関には「全館臨時休業とさせていただきます」の貼り紙が。
納品口には「納品は停止しております」の看板もかかげられた。
また、一部社員は出勤しているとみられ、入店する人の姿も見られた。

貼り紙が掲出された西武池袋本店。

午前中、池袋の街でデモ行進を開始

西武池袋本店の周辺では、午前中を中心に「そごう・西武労働組合UAゼンセン・連合系が「西武池袋本店を守ろう!池袋の地に百貨店を残そう!これからもお客さまと共に…」などと書かれた横断幕や幟り旗を掲げてデモ行進をおこなった。

掲げられた幟り旗と取材するテレビ局。

全学連など、西武エントランスで連帯デモ

午前中を中心に「そごう・西武労働組合」が百貨店から離れているあいだ、店舗エントランスでは各業界ユニオン全学連中核派などがデモ隊(勝手連)を構え、ストライキに支援・連帯するとして「池袋の街を変えるな」「売却阻止」「憲法改正阻止」「政権交代」「ウクライナ即時停戦せよ」「中国との戦争反対」などを訴えていた。

昼からは店舗エントランスで雇用維持など訴える

昼ごろからは、「そごう・西武労働組合」が店舗エントランスで横断幕や「ストライキ決行中」の札をかかげ、ビラを配るなどして雇用の維持などを訴えた。
「そごう・西武労働組合」によると、デモには約300人が参加したという。

店舗前で雇用の維持を訴えるそごう・西武労働組合。


ビラ配りもおこなわれた。

セブンアイ、9月1日に「そごう・西武」売却完了へ

西武池袋本店はかつては日本一、2023年時点でも全国3位の売上高を誇る百貨店であり、外資への売却とそれに伴うヨドバシカメラ入店によって西武側の雇用が守られないばかりか、百貨店の売上が低下するとそごう・西武全体の経営に大きな影響を与える可能性もある。今回のストライキはそれに反発したものとなる。
大手百貨店でのストライキ決行は1962年の阪神百貨店以来、約61年ぶりとなった。
一方で、セブン&アイHDは9月1日での売却を進めるとしており、8月31日に取締役会を開催。9月1日付で売却完了となる見込みとなっている。

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岡島百貨店、2023年2月14日一旦閉店-新店舗に想いを繋ぐ最終日、ココリ甲府店は3月3日開店へ

山梨県甲府市の中心部・紅梅通りにある県内唯一の老舗百貨店「岡島百貨店」の現店舗が、2023年2月14日に85年の歴史に幕を下ろした。
近隣の再開発ビル「ココリ甲府」では、岡島出店に向けた工事が進んでいる。

最終営業日が近づく岡島百貨店。
(※一部写真は最終日前に撮影)

創業180年の老舗百貨店「一旦閉店」

岡島百貨店は1843年に呉服店・茶販売店として創業。現店舗は1938年に移転開業したもので、1988年の増床リニューアルにより現在の姿となった。
館内はフルラインの百貨店であり、三越と提携。建物は8階から地階、店舗面積は29,520㎡となっていたが、老朽化による再開発が浮上。現店舗を閉店し、ほぼ空き店舗となっている再開発ビル「ココリ」(正式名:紅梅地区再開発ビル)の地階-2階に2023年3月中に移転することを発表していた。
前回の記事はこちら

閉店当日を迎えた岡島現店舗。

最終営業日、「オリジナルソング」披露も

現店舗の最終営業日となった2月14日は火曜日であったものの、朝から多くの人が訪れた。
店舗1階では「岡島の歩み写真展」が開催され、ブロックで出来た岡島の模型などに見入る客も多かった。

岡島の歩み写真展。


ブロックで作られた岡島の模型。


市民から寄せられたメッセージ。

18時からは、1階店頭で山梨出身の歌手・伸太郎氏のミニライブが開催。岡島閉店にあわせて書き下ろされた新曲も披露された。

閉店を迎えた19時ごろには、オリオン通りのエントランスで記念式典が開催された。
雨宮潔社長の「暖かくご支援いただきありがとうございました。新店舗にて、みなさまをお待ちしております。」の挨拶とともにシャッターが下ろされると、式典を見守る市民から拍手が巻き起こった。

岡島百貨店、また会う日まで。
左側に写るココリが新店舗。

新店舗の工事すすむココリ、現店舗跡はタワマンに

岡島近く・オリオン通りにある再開発ビル「ココリ」では、3月3日の新店舗開店に向けた工事が進んでいる。ココリは当初はジュエリーモールをめざすなど経営が迷走し、テナントがなかなか定着しない状態であった。
新店舗の店舗面積は約4,500㎡であり、岡島は現店舗の7分の1の面積となる。また、現店舗で人気を集めていた「ジュンク堂書店」などは撤退となった。

岡島の看板が設置されたココリ。

岡島新店舗のコンセプトは「地域共創型上質スペシャリティストア」で、フロア構成は以下のとおりとする計画。

2階 新しいライフスタイルのフロア リビング・服飾・催事場等
1階 上質ファッションのフロア デパコス・服飾など
地階 上質な日常を提供する食のフロア 生鮮・食品・明治屋など

岡島は店舗面積は縮小するものの、新たなココリの、そして甲府市中心部の核として、新たな歴史を刻むことになる。

岡島出店に向けた工事が進むココリ。

なお、岡島の現店舗は大手ディベロッパー「タカラレーベン」(東京都千代田区)に売却、現店舗を解体して再開発をおこなう。総事業費は約220億円。

岡島跡のタワーマンション。

再開発後に建てられる建物は地上28階建てで、約360世帯規模のタワーマンションを核に、立体駐車場と商業施設となる。オリオン通り側と低層部屋上には広場も設置。2028年7月の完成をめざして工事がすすめられる。新たな建物に岡島百貨店が出店するかどうかは、現時点は発表されていない。

一部は商業施設となる。(ニュースリリースより)

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藤丸百貨店、2023年1月31日閉店-創業122年の老舗、「再生」に望みを繋いだ最終営業日

北海道帯広市の百貨店「藤丸」が、2023年1月31日の営業を以て閉店し、122年の歴史に幕を下ろした。

最終営業前日の藤丸百貨店。

藤丸、122年の歴史に一旦幕

藤丸百貨店は1900年に富山県の商人が下帯広村(現店舗近く)で呉服太物店として創業。1930年に鉄筋コンクリートの大型店となり、百貨店化した。
現在の建物は1982年3月に新築移転したもので、建物は地上9階・地下3階(地下2階~地下3階は駐車場)、店舗面積は19,852㎡。地権者の組合「ふじまるビル」が所有する。
テナントとして「くまざわ書店」「ミニプラ」「COACH」「帯広市市民活動交流センター」「勝毎サロン」(十勝毎日新聞社の文化サロン)などが出店する。8階の帯広市市民活動交流センター。

藤丸は道東唯一の百貨店となっていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大などによりテナントの撤退が相次ぐとともに業績が悪化。閉店するに至った。

シャンデリアが並ぶ館内。

以前の記事はこちら。

多くの人が訪れた最終営業日

営業最終日は氷点下の気温となったものの、開店から多くの人が詰めかけた。

混みあう店内。

セールでは「最大7割引き」と謳っていたが実際は8割、9割引の商品も。
また、7階催事場では「藤丸122年間のあゆみ展」が開催されており、とくに創業期の「藤丸呉服店」時代の書類や建物の屋根瓦などは多くの客から注目を浴びていた。

「藤丸122年間のあゆみ展」の案内。

閉店を迎えた19時前からは、正面入口の前で閉店セレモニーが行われた。 
藤丸1階エレベータ前のシャンデリア下で行われた閉店の挨拶。

セレモニーでは、藤丸の藤本長章社長が新会社が藤丸の運営を引き継ぐ計画(後述)について触れ、「藤丸にいただいたご愛顧を繋げてもらえるようにお力を頂戴したい」と述べたのち「藤丸の歴史は帯広・十勝の歴史そのもの」「本当に長い間、ありがとうございました」と最後の挨拶。
多くの客が見守るなか、19時40分ごろにシャッターが下ろされ、藤丸は一旦眠りにつくこととなった。

藤丸百貨店、また会う日まで。

多くのテナント、帯広から消滅

藤丸の閉店により、十勝エリアから百貨店の売場は姿を消す。
食品売場責任者の女性は都商研の取材に対し「お客様からは『贈答品を買う場所が無い』と言う声を多数頂く。近隣店舗として釧路昭和のエムアイプラザ(札幌丸井三越エムアイプラザイオン釧路昭和店=イオン内のサテライト百貨店)を紹介している。」と残念そうに話す。
また、おもに百貨店に出店する大手アパレルの婦人服ブランドは「本当は続けたかった。物件も探して貰ったけど条件に見合わずやむを得ず撤退。」、同じく主に百貨店に出店する大手アパレルの紳士服ブランドは「場所がない。」「十勝管内の商圏は魅力的なので続けたい。でも広小路は建物が古すぎてダメ。復活して早くて1年かかる。」と話した。

再生めざす動きも―ー具体的な構成は未定

先述したとおり、藤丸は再生の動きもある。
帯広市内で起業支援や経営支援などをおこなっているベンチャー企業「そら」(本社:帯広市)を主体として何らかのかたちで経営を引き継ぐことを検討しており、2022年12月には新会社が設立されている。
具体的な店舗内容などは発表されていないものの、今後は耐震補強などを含めた改装工事をおこなうとしており、再生をめざして動き始めることとなる。
現在の藤丸の食品担当者は取材に対して「新店舗でも食品売場を作る話は出ているようだが、東京名店街や九州屋といった大手のテナントに今のところ話は来ていないらしい。」「新店舗では十勝の食材(魚、肉、果物、野菜)が豊かなので、あくまでそこを優先した売場作りを進めたいようだ。」としており、十勝の百貨店需要を満たしつつも、地域住民にも観光客にも親しまれる十勝の強みである「食」に力を入れた店舗の誕生が期待される。

藤丸から移転予定のおもなテナント(一部)
  • 帯広市市民活動交流センター
    :道新帯広ビル(仮移転)
  • 美容室ジャングルジャップ
    :帯広市西19条南3丁目4-12 レインボーヴィレッジ
  • 補聴器館
    :JR帯広駅 エスタ帯広
  • 珈琲専科ヨシダ
    :藤丸向かい
  • アヴェニュー
    :イオン帯広店
  • そば処一ぷく
    :サンバード長崎屋 帯広店「そば処一休」に統合

また、藤丸発行の全国百貨店共通券は他店舗での通用を停止。
4月30日まで貸金決済法に基づく払い戻しがおこなわれ、5月1日以降は失効することとなる。

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東急百貨店渋谷本店・文化村、2023年1月31日閉店-多くの客が惜しんだ最終営業日、再開発で解体へ

東京都渋谷区の百貨店「東急百貨店渋谷本店」と東急グループ系複合施設「Bunkamura(東急文化村)」が、再開発のため2023年1月31日の営業を以て閉店。最終営業日は多くの人が閉館を惜しんだ。

最終営業日を迎えた東急百貨店渋谷本店。

56年の歴史に幕を下ろした東急百貨店本店

東急百貨店渋谷本店は渋谷区立大向小学校跡地に1967年11月に開店。
建築から半世紀を経て老朽化がすすむなか、2021年に東急グループの「東急」「東急百貨店」、高級ブランドを傘下にもつLVMHグループルイヴィトン・モエヘネシー)の不動産投資会社「L Catterton Real Estate(LCRE)」が再開発をおこなう方針を発表していた。LCRE社は「GINZA SIX」の運営にも関わっている。

詳しい経緯はこちら

多くの人が惜しんだ最終営業日

最終営業日は朝から多くの人が詰めかけ、店舗内外の写真を撮る人も多くみられた。閉店が近づいた17時半ごろからは入店客に店員から花が贈られ、店員と話し込む客の姿もあった。

閉店セールのテーマは「THANKS & LINK」。

閉店時間を過ぎた19時すぎ、正面玄関前では多くの客が見守るなか、稲葉満宏東急百貨店本店店長が「55年もの素敵な出会いへの感謝」の言葉を述べたあと「東急百貨店本店を支えてくださった皆さま、本当にありがとうございました。」と挨拶。
拍手のなかシャッターが下ろされ、東急百貨店本店はその歴史に幕を下ろした。

55年の歴史に幕が下ろされた。

東急本店跡、解体後に164m高層ビル-文化村復活へ

東急百貨店本店跡地は「東急」「東急百貨店」、高級ブランドを傘下にもつLVMHグループルイヴィトン・モエヘネシー)の不動産投資会社「L Catterton Real Estate(LCRE)」により再開発がおこなわれる予定で、建物は近く解体される。
跡地には、2027年度中の竣工をめざして高さ164メートル、地上36階・地下4階建ての超高層ビル「Shibuya Upper West Project(仮称)」が建設される予定となっており、文化村はこの建物に再入居する予定としている。

(ニュースリリースより)

なお、低層階は商業施設となるものの、東急百貨店が再出店するかどうかについては2023年1月時点では未発表となっている。

一部売場・施設はヒカリエなどに移転

東急百貨店では、本店の閉店に伴い「東急渋谷ヒカリエ ShinQs」に複数の売場を移設することを発表。具体的には地階に「シャネル(化粧品)」「ゲラン」などのコスメ類、2階と5階に「グランドセイコー」「citizen」などの高級時計、5階にお客様サロンなどが順次移転・開業することとなっている。
また、ワイン売場は松濤のオクシブビル1階に「THE WINE by TOKYU DEPARTMENT STORE」として移転オープンする。
なお、文化村の施設のうち「オーチャードホール」は営業を継続。ル・シネマは渋谷東映プラザ内に移転して「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」に、美術・アート関連はヒカリエ内に移転するとしている。

東急本店の売場移転先案内。

なお、渋谷随一の書店として人気を集めた7階の書店「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」はそのまま閉店することとなった。

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西友御器所店、2022年11月30日18時閉店-最終営業日の閉店式典「跡地に関する発表」も

愛知県名古屋市昭和区の名古屋市営地下鉄御器所駅近くにある大型総合スーパー「西友御器所店」が2022年11月30日午前6時をもって閉店した。  

セゾンらしい“アート”な大型総合スーパーだった

西友御器所店は1983年8月25日に「西友ストアー御器所店」として開店。建物は地上4階地下1階建で営業フロアは1~3階、店舗面積は3,509㎡。同社店舗としては名古屋市内2店舗目であった。
御器所店は開店当初、同社運営百貨店「春日井西武」の外商事務所開設といった非物販機能の拡充を打ち出していたほか、1990年6月に増床リニューアルを実施するなど、西武セゾングループが力を入れた店舗のひとつであった。

閉店当日の西友御器所店。

西友の経営体制変更後も愛知県内有数の規模を誇る主力店舗のひとつであったが、2022年11月30日付での閉店が決定。閉店に先駆けて10月14日に3階を閉鎖(衣料品売場は2階に移設)、11月26日に2階を閉鎖するなど営業規模を段階的に縮小したほか、店舗入口付近に「メッセージボード」を開設した。

特設のメッセージボード。

閉店式典では感謝や「跡地」に関するコメントも

西友御器所店の閉店当日、同店の閉店を惜しむ客やわずかに残る商品を求める客で賑わいをみせ、店舗入口には「商品の大半は売り切れました」といった掲示もなされた。

店頭に掲示された「売り切れ」の案内。

午後5時50分からは同店店長による「閉店セレモニー」が始まり、多くの買物客に囲まれ「これまで営業できましたのも、ひとえに皆様のご愛顧の賜物と、深く感謝いたしております。本当にありがとうございます。」「4年後の2026年、新たなお店として、オープンの予定でございます。リフレッシュオープンの際には、さらに皆様に愛され、なくてはならないお店になって戻って参ります。」と、買物客への感謝と今後の建替再出店に関しコメントを残した。

閉店セレモニーは店内での開催となった。

閉店セレモニー終了後の午後6時過ぎには買物客の送り出しを終え、西友ストアー時代から40年近い歴史に幕を下ろした。

買物客の送り出しを終え40年近い歴史に幕をおろした。

再開発へ-西友御器所店、2026年新装開店へ

西友御器所店跡地では、大手不動産デベロッパー「MIRARTHホールディングス」(旧タカラレーベングループ)主導によるマンションを核とする複合開発が予定されている。西友は新施設の1階(店舗面積1,608㎡)に新店舗を出店する予定であるが、新店舗は現店舗の半分以下の規模となるため、取扱商品の削減や食品スーパー業態への転換も予想される。

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鳥取大丸、2022年8月31日19時閉店-72年の歴史に一旦幕、最終日は後継「丸由」に向けた式典も

鳥取県鳥取市の鳥取駅前にある大丸松坂屋百貨店系の地場百貨店「鳥取大丸」が2022年8月31日午後7時をもって閉店した。

最終日の鳥取大丸。

山陰初の百貨店、原点回帰で「大丸」としての歴史に幕

鳥取大丸は、1937年2月に地場老舗呉服店「由谷呉服店」を前身にもつ百貨店「丸由百貨店(まるゆ百貨店)」として設立・創業。
戦後は1949年12月に関西地盤の大手百貨店「大丸」(現大丸松坂屋百貨店)と資本業務提携を締結し現在の店名に改称、1975年に現店舗(地上5階地下2階建、店舗面積11,973㎡、黒川紀章設計)への移転増床を実施したが、郊外型店との競合もあり業績が低迷した。
経営体質改善のため、鳥取大丸は2018年7月に「日の丸グループ」と「山陰合同銀行」系列のファンドが出資する新会社に運営を移行したが、2022年5月には大丸松坂屋とのライセンス契約満了のため「丸由百貨店(まるゆう/OYOU)」への商号変更を発表。
2022年8月31日をもって鳥取大丸としての72年の歴史に幕をおろすこととなった。

大丸閉店当日は記念式典、インスタライブでの配信も

鳥取大丸閉店当日の8月31日は台風11号の接近により天候が悪化。店内は昼過ぎまで客数もまばらであったが、営業終了時刻までに次第に増加。断続的な降雨のなか、閉店式典会場のバードハットや歴史展開催中の5階 TOTTORI PLAY’S(トットリプレイス)では、鳥取大丸最後の日を惜しみ、その姿を見届ける地元の買物客や学生であふれかえった。

最終日の鳥取大丸。

19時過ぎに行われた閉店式典では、岡周一鳥取大丸社長を始め売場各部門のスタッフが玄関前に登場。岡周一社長は「5月の商号変更発表後は「残念だ」というお声もいただきましたが、それ以上に励ましの言葉や期待の言葉を頂戴致しました。」「鳥取で暮らしておられる多くの皆様とともに新しい百貨店を目指してまいります。」とコメントし、鳥取大丸時代から続く関係各所への御礼と丸由への引続きの支援、ご愛顧を求めた。

鳥取大丸の閉店式典。

鳥取大丸、わずか3日で新百貨店「丸由」へ

鳥取県内では同店と同じく、日の丸グループ出資による百貨店「米子大丸」も営業していたが、天満屋への事業譲渡と郊外移転のため1990年をもって閉店しており、これで山陰から「大丸」が消滅することとなった。
鳥取大丸は、9月3日には新商号「丸由百貨店」としての営業を開始する。

丸由百貨店(旧鳥取大丸)

住所:鳥取県鳥取市今町2丁目151
営業時間:午前10時~午後7時(2022年9月3日開業予定)

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天満屋広島緑井店、2022年6月30日20時閉店-賑わう営業最終日、今後「フジグランと一体化」へ

広島県広島市安佐南区のJR可部線緑井駅近くにある百貨店「天満屋広島緑井店」が2022年6月30日午後8時に閉店し、25年の歴史に幕をおろした。

最終営業日の天満屋緑井店。

地域密着型「郊外型百貨店」だった

天満屋広島緑井店は1997年10月に開業。建物は地上4階地下1階建で営業フロアは1~3階、店舗面積は15,540㎡。同社広島市内の店舗としては広島八丁堀店、広島アルパーク店に次ぐ3店舗目であった。
天満屋は当初、広島緑井店を広島市北部副都心の玄関口に相応しい広域集客型の複合商業施設として出店する構想を打ち出していたが、バブル崩壊後の景気低迷を受けて、ローコスト型の百貨店として出店方針を変更。開業後は「毎日、デパート。」を掲げ、食物販やデイリーファッションの拡充に加え、靴量販店「ABC-MART」やインテリア雑貨店「Passport(現HAPINS)」といった多数の専門店を導入することで、広島市中心部の百貨店との差別化を図った。
また、隣接地の「フジグラン緑井」(着工時は「緑井サティ」)「コジマNEW広島インター緑井店」開店後は、駐車場サービスの共通化や共同販促を打ち出すなど、各店舗が一体となり集客をめざした。

フジグラン緑井。天満屋跡にも出店する。

一方、天満屋は2012年3月に広島八丁堀店を閉店、2020年1月には広島アルパーク店を閉店。また、広島緑井店自体もデイリーユースに注力していたため、フジグランを始めとする大型商業施設と競合が起きていた。こうした背景もあり、天満屋は2021年9月にフジへの広島緑井店譲渡を発表し、広島市内での百貨店事業から全面撤退することとなった。

買物客であふれる明るい最終日

天満屋広島緑井店では2022年3月16日に「閉店売りつくしセール」を開始。4月からはパネル展も行われるなど、天満屋の広島撤退を惜しむ客で賑わいをみせた。

閉店当日6月30日には午前中から連絡橋や吹抜けを始め各所で記念撮影を行う買物客や長蛇のレジ待機列に並ぶ買物客、店員との思い出話に花を咲かせる買物客の姿がみられるなど、館内外を明るい雰囲気が覆った。

最終営業日の天満屋緑井店。

午後8時10分には閉店式典が開催。城本吉徳店長は広島緑井店に対する25年のご愛顧への感謝やオープン当時のキャッチフレーズを交えつつ「お客様のご要望に100%お応えすることが難しくなった」「お客様には感謝しかございません。」とコメント。
買物客からの問合せも多いという施設の今後に関しては「幸いにも支持いただいている食品を始め後継のフジさんで継続する売場も決まっております。」「天満屋としては本日で最終日を迎えますが、今後も地元にお客様に愛されるフジさんのお店として新たにスタート致しますので、これからもこの店舗をご愛顧のほどよろしく申し上げます。」とコメントを残し、フジに広島緑井店跡のたすきを渡した。

最終営業日の天満屋緑井店。

式典は「25年間本当に本当にありがとうございました。」との言葉で締めくくられ、木星(Jupiter)をBGMに幕引きすることとなった。

フジが出店-「再出店」発表したブランド・店舗も

天満屋とフジは2022年6月時点において、天満屋広島緑井店跡の新施設に関する具体的な運営形態、開業時期などを明らかにしていない。
マツモトキヨシ」「横浜元町ポンパドウル」「奥出雲そば処一福」を始めとする一部テナントは「2022年夏」「2022年8月以降」営業再開する方針を正式発表している。
その他一部テナントも同地で営業再開する方針を固めており、買物客に「また来てください」と声をかける従業員もみられた。従来の百貨店に代わる新たな商業施設として姿をみせる日も近そうだ。

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中銀カプセルタワービル、2022年4月12日解体開始-跡地は未定、カプセルは各地で保存へ

東京都中央区の都営地下鉄汐留駅近くにある「中銀カプセルタワービル」の解体が2022年4月12日に開始された。

解体開始後の中銀カプセルタワービル。(2022年4月12日撮影)

中銀膠囊塔大樓(Nakagin Capsule Tower)、2022年4月12日拆除開始。日本建築大師黑川紀章設計、「代謝派建築」的代表作。中銀是由來「中銀座」。
膠囊小室被修繕後、捐贈於日本國內外美術館暨博物館。

メタボリズム建築の代表格、50年の歴史に幕

中銀カプセルタワービルは建築家・黒川紀章の設計により1970年に着工、1972年に完成したもの。「中銀」は「中銀座」に由来する。
建物は下層階がオフィス・商業ゾーン(末期はコンビニ「ポプラ」が出店)、ツインタワー部分は140個の居住カプセルで構成。カプセルは老朽化した場合などに交換できるものとされており、都市の新陳代謝に対応する「メタボリズム建築(代謝派建築)」の代表作であったが、実際にはカプセルが交換されることはなかった。

老朽化で解体-多くの人が見守る

解体は老朽化によるもの。解体初日となった4月12日には多くの人が最後の姿を目に収めようと足を止め、偶然通りかかったサラリーマンらが記念撮影する姿も見られた。
都商研の取材に対し、銀座でデザイン関係の仕事をしていたという80代の女性は「青春時代の象徴で一度は住みたいと思っていた」、また、20代の無職男性は「(八戸の)三春屋百貨店の閉店を見届け、乗り換え途中に駆け付けた」と話した。

跡地は未定-一部カプセルは保存へ

解体後の跡地の活用計画などについては、4月時点で未定となっている。

一部カプセルは取り外されて保存される。

一部のカプセルは「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」などの尽力により建物から取り外したのち修復され、世界各地の博物館・美術館などに寄贈・保存されることになる見込みだ。

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やまき三春屋、2022年4月10日午後6時半閉店-品切れ相次ぐ最終営業日、呉服店時代から約500年の歴史に幕

青森県八戸市の百貨店「三春屋(やまき三春屋)」が2022年4月10日18時30分をもって閉店し、百貨店としての約52年の歴史に幕を下ろした。

最終営業日の三春屋。

長らく「ダイエー」の傘下だった

三春屋は、室町時代に創業した福島発祥の呉服店「三春屋呉服店」を前身にもつ衣料品店として1953年3月に法人化。1970年の八戸地場百貨店「丸美屋」買収を機に百貨店となった。同社は百貨店化を機に八戸本店の建替えや系列会社(ヤマニ三春屋)を通した岩手県内への出店など多角化に舵を切ったが、1985年には系列会社の再建支援により親密な関係となった大手スーパー「ダイエー」傘下となった。その後、三春屋は1995年にダイエーの完全子会社に、2005年にはダイエーグループの百貨店「中合」による運営になった。
2019年11月には不動産・商業コンサルタント「やまき」が中合から買収するかたちで、完全子会社「やまき三春屋」による運営に移行した。

やまきが再生に携わったアクア木更津。
(旧木更津そごう・現スパークルシティ木更津)

三春屋の現店舗はダイエー傘下となった1985年11月に開業したもので、建物は地上5階・地下1階建、売場面積は約15,574㎡、延床面積は約25,140㎡。八戸市中心部最大の商業施設(さくら野百貨店八戸店は15,227㎡)で、同時期に開業したファッションビル「ヴィアノヴァ」(1985年9月開業)と1階部分で直結、一体的な商空間を形成していた。

「脱百貨店」で改装中だったが…新会社、突然の閉店

三春屋は、やまきグループとなった直後の2020年2月から改装開始、同年5月21日にはやまきグループのLSSPによる会員制ラグジュアリーサロン・バーチャルショップ「三春屋Myサロン」を5階に開設する予定であった。
しかし、新型コロナ感染拡大を理由にサロン開設を含むリニューアルを一時凍結。2021年2月には中合出身の山川武氏が社長を退任し、やまき出身の土谷与志晴氏が社長に就任した。

「改装前の売りつくし」を掲げていた三春屋。

これにあわせ、三春屋は新たなコンセプトとして「デジタルハイブリッド百貨店」を掲げ、2021年3月に「近未来の百貨店に生まれ変わるための三春屋全館閉店セール」を開始。同年8月には百貨店フロアの低層集約と専門店の誘致に加えて直営食品売場の廃止と従業員の解雇を打ち出したが、同年9月にはリニューアル再延期(同年秋→2022年3月30日)と直営食品売場の一転存続、解雇の一部撤回(再雇用)を改めて打ち出すなど、朝令暮改といえる営業状況となった。その後も工事に進展はなく、2022年3月4日には突然の完全閉店方針を発表、同年4月10日をもって歴史に幕を下ろすこととなった。

無念の閉店、品切れ相次ぐも賑わう営業最終日に

三春屋は全館閉店セールを1年超続けており、三春屋の縮小に先駆けさくら野百貨店八戸店に移転したテナントもあったため、1階2階4階5階フロアの約半分、3階フロアの全域が閉鎖状態にあるなど、営業フロア・取扱商品数ともに減少傾向にあった。
しかしながら、閉店当日の地階ではプロジェクトおおわに(大鰐町地域交流センター鰐come)による「大鰐フェア」といった催事企画や惣菜テナントによる特売、1~2階ではブランド衣料やバッグの均一セール、4階ではブランドランドセルの80%OFFセールや手芸専門店での30%OFFセール、5階レストランでは最大半額セールといった取組みもあり、開店直後から賑わいをみせた。また、食品売場では三春屋やテナントによるギフト箱・トレーの販売、買物客による鮮魚売場での記念撮影会といった光景がみられた。

30年の歴史に幕を下ろすパブロ三春屋店。
盛岡や秋田にも店を構えるが八戸への再出店の予定はない。

閉店時刻迫る18時過ぎには地階食品売場の営業を終了し、18時25分までに買物客の送り出しを終えた。閉店時刻の18時30分からは正面玄関前に経営陣や従業員が登場、三春屋に対する想いやコメントとして「今ここにいらっしゃる皆様、今ここにいらっしゃらなくても三春屋でお買いものしていただいた皆様、我々にとって皆様が宝物、誇りです。」「一旦閉店すること本当に申し訳なく思う、誠に申し訳なく思う。」と語られ、閉店式典参加者全員による御礼ののち、大手老舗百貨店を上回るという「“永禄年間”から続く歴史の継承」に一旦幕をおろした。
閉店式典中は咽び泣く買物客や百貨店化当初の三春屋について話題にする買物客もおり、三春屋ロスは大きそうだ。

百貨店化から52年の歴史に幕を下ろした。

やまき三春屋の今後について、現時点であくまで「ゼロベース」としているが、式典では「改めてこのかたちに戻してこれるように本当に夢見て」と締めくくるなど、将来的な復活に含みをもたせたコメントを残している。
一方で、突然の閉店により移転先が決まらなかったテナントや、再就職先が決まらなかった従業員は少なくないとみられる。
三春屋の建物は、さくら野百貨店八戸店(1968年6月開業)やチーノはちのへ(1980年11月開業・解体予定)といった近隣大型店と比較しても新しく、百貨店各社が課題とする建物の老朽化や耐震性不足との縁もなかったため、八戸市民や三春屋利用者の要望に応えることができるような施設としての復活に期待したい。

一部店舗はさくら野やヴィアノヴァに移転、制服取扱いも

三春屋に入居していたテナントのうち、オーガニックコスメブランド「HOUSE OF ROSE(ハウスオブローゼ)」、日本製ニットを中心としたブランドのLサイズライン「JEANRENE PLUS(ジャンルネプリュ)」、ワールド系の婦人服「アンタイトル」、地元とんかつ店「とんかつ宮政」、魚惣菜店「焼魚舗神戸うおひで」はさくら野百貨店八戸店に移転、「呉服の三松」はヴィアノヴァに移転、「らーめんふぁくとりーのすけ」は市内中心部への移転の方針を明らかにするなど、残存するテナントの多くが八戸市内で存続する見込みとなった。
また、三春屋が取扱っていた高校制服は、2022年3月4日からさくら野百貨店八戸店もしくはイオン八戸田向店に移行。三春屋OMCカードの新規発行は2022年3月8日をもって終了、閉店後は標準のOMCカードに移行する。(発行済のカードはそのまま使用可能)

さくら野八戸店に移転するテナント一覧
  • HOUSE OF ROSE(ハウスオブローゼ)
  • JEANRENE PLUS(ジャンルネプリュ)
  • アンタイトル
  • とんかつ宮政
  • 焼魚舗神戸うおひで
ヴィアノヴァに移転するテナント一覧
  • 呉服の三松

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