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三越伊勢丹HDの大西社長、2016年度末で退任へ

三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長(61)が、3月31日付で辞任する。

任期途中の辞任発表-成果だせず

辞任は日本経済新聞が3月6日付けで報じたもの。
追記:後任の社長には、伊勢丹出身で、現・経営戦略本部長の杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が就任する。また、三越出身の石塚邦雄会長(67)も、6月の株主総会で退任する予定だという。
大西氏は1979年に伊勢丹に入社。2009年伊勢丹社長執行役員となり、2012年2月1日に三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長に就任した。
就任後は、全国各地に中~小型店の出店を進めるとともに、旗艦店への「空港型免税店」など外国人向け売場の開設不振を極めたJR大阪三越伊勢丹の業態転換、CCC(蔦屋)との提携(Tポイントカードの導入ルクアイーレへの「蔦屋書店」出店)などを進めてきた。

全国で小型店の開設も進めた(静岡伊勢丹・MIプラザ藤枝店)。

しかし、鳴り物入りで開業した空港型免税店の各店は、爆買い傾向の変化に加えて「日本人向けの売場で買い物をしたい」という訪日客のニーズとは異なった売場づくりもあり、売上は振るわなかった。免税店同士の競争も熾烈で、銀座三越に2016年1月に開業した大型空港型免税店「Japan Duty Free GINZA」では閑古鳥が鳴いている、という状況の日も少なくない。

銀座三越。

また、グループの旗艦店である「新宿伊勢丹」では、その好調さを他店に波及させることができないばかりか、新宿伊勢丹でも若者客の取り込みができなくなり、客層の高齢化も課題となっていた。
2017年3月には千葉三越、多摩センター三越を閉店させるほか、今後は丸井今井札幌本店・札幌三越、新潟伊勢丹・新潟三越、伊勢丹松戸店、伊勢丹府中店、静岡伊勢丹、広島三越、松山三越についても売場面積の削減や業態転換などを示唆している。

今後も店舗整理と業態転換が進むと思われる(鹿児島三越)。

「コト消費」重視での経営改善計画、成否はいかに

三越伊勢丹ホールディングスでは、業績改善のためのあらたな試みも実施している。2016年11月にはゲーム「艦隊これくしょん」とのコラボレーションを実施したほか、2017年1月にエステサロンなどを運営する「SWPホールディングス」を、2月には主に富裕層をターゲットとした旅行会社「ニッコウトラベル」を買収。いわゆる「コト消費」に重点を置くことで、客層の拡大や経営の改善を図りたい考えだ。また、旗艦店である「日本橋三越本店」でもコト消費に重点を置いた改装を進めていくという。
 
「艦これ」とのコラボも話題となった。

今後、新社長の下では、どのような「活性化策」が採られるのであろうか。百貨店の雄・三越伊勢丹だけに、その後継者や経営方針は業界全体の注目の的となろう。

関連記事:三越伊勢丹、4店舗の百貨店閉店・業態転換・縮小など検討-建物の「完全閉鎖」は避けたい考え 
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“新”南三陸さんさん商店街、3月3日開業-BRT駅も移転、南三陸町の新たな「中心地」に

こちらの記事も合わせてお読みください:南三陸さんさん商店街、12月31日閉鎖-志津川の仮設商店街、復興で新市街地に移転決まる

宮城県南三陸町志津川の復興商店街「南三陸さんさん商店街」が嵩上げ造成された新市街地に移転し、3月3日より営業を開始した。

“新”南三陸さんさん商店街。

新市街地に移転開設、「志津川復興の象徴」に

内陸の仮設商店街から移転し本設商店街となった新「南三陸さんさん商店街」は、南三陸町の復興計画で整備されている志津川地区の新市街地内に築かれたもの。
新市街地はかつての志津川町中心部近くに建設。津波対策で土地の嵩上げが行われており、建築家の隈研吾氏がグランドデザインを手がける本設商店街は木造・平屋建ての6棟で構成される。延床面積は約3,086㎡。
仮設商店街から移転して引き続き営業する23の商店や、コンビニ、産直市場など合計28店舗が軒を連ね、東日本大震災の津波により被災した南三陸町の復興の象徴として期待がかかる。

被災した南三陸防災対策庁舎より商店街を望む。

なお、2012年2月から2016年末まで営業を続けた仮設商店街では解体工事が進められており、跡地には店舗が出店する予定となっている。

解体工事が進む仮設商店街。

BRT・志津川駅も商店街隣に移転

さんさん商店街の新市街地移転にともない、BRTのJR気仙沼線志津川駅も内陸部から商店街隣に移転し、JR東日本のダイヤ改正を迎えた3月4日から営業を開始している。

 BRT気仙沼線志津川駅も商店街隣に移転。
新たな「中心部」が形成される。

なお、南三陸町のもう1つの中心部である歌津町の「伊里前福幸商店街」も、復興の進行に伴い2017年中に新たな本設商店街に移転する予定となっている。

南三陸さんさん商店街・出店店舗一覧
  • ミニストップ(コンビニ)
  • たまや電気商会(電気屋)
  • デイリー衣料アベロク(衣料)
  • おしゃれ空間Lips(雑貨)
  • ヘアーMacana(美容室)
  • ボーイング菓子工房Ryo(洋菓子)
  • フレンズ(文具)
  • 亜べとう整骨院(整骨院)
  • BARBERミヤカワ(床屋)
  • 阿部茶舗(茶)
  • NEWS STAND SATAKE(ブック&カフェ)
  • わたや(お土産)
  • さりょうスタジオ(写真展示)
  • 雄新堂(洋菓子)
  • 及善蒲鉾店(蒲鉾)
  • ちばのり店(海苔)
  • ロイヤルフィッシュ(鮮魚)
  • さんさん商店街インフォメーション
  • 菓房山清(菓子)
  • 仏壇ギャラリー山形屋クラシコ(仏具)
  • 月と昴(カレーとコーヒー)
  • 食楽しお彩(海鮮料理)
  • 弁慶鮨(海鮮料理)
  • かいせんどころ梁(海鮮料理)
  • フレッシュミート佐利(精肉)
  • 創菜旬鮮はしもと(海鮮料理)
  • ㊁ヤマウチ(鮮魚)
  • さんさんマルシェ(産直市場)
  • 海鮮マルセン(鮮魚、蒲鉾)
南三陸さんさん商店街

住所:宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町51番地
営業時間:店舗による

外部リンク:南三陸さんさん商店街
関連記事:南三陸さんさん商店街、2016年12月31日閉鎖-志津川の仮設商店街、復興で新市街地に移転決まる

小名浜名店街・タウンモールリスポ、2018年1月15日閉館-老朽化で、イオン開業も影響か

いわき市小名浜のショッピングセンター「タウンモール リスポ」(小名浜名店街)が、2018年1月15日に閉館する。

タウンモールリスポ。(Google Mapより)

小名浜を代表する老舗ショッピングセンター

タウンモールリスポは1969年11月に地元商工業者などが出資する地域主導型のショッピングセンター「小名浜名店街」として開業。1997年のリニューアルの際に名称を現在の「タウンモール リスポ」に変更した。
建物は地上2階建てで、売場面積は7,740㎡。土地、建物ともに小名浜名店街組合が所有している。
現在は福島県田村市に本社を置くスーパー「シミズストアー リスポ店」と、地元商店など約50店舗が入居している。
かつて隣接していた別のショッピングセンター「小名浜ショッピングセンター」(1997年閉店)とは長年熾烈な商戦を繰り広げるとともに、小名浜市街地の賑わい創出に貢献した。

背景には老朽化に加えてイオン進出が影響か

閉店を報じた地元紙・福島民友によると、建物が築約50年と非常に老朽化していることや、経営者の高齢化や後継者不足などが閉店の要因という。
また、同紙では直接的な閉店要因ではないとしているものの、2018年6月に大型商業施設「イオンモールいわき小名浜(仮称)」が店のすぐ近くに開業予定で、小名浜の商業の中心がイオンモールに変わることを見越した閉店である可能性も高いと考えられる。2018年6月開業予定のイオンモールいわき小名浜。(いわき市HPより)

跡地の活用方法などに関しては3月時点で発表されていないが、建物は老朽化しているため閉館後に解体され、約19,200㎡の土地は更地にして売却するという。

外部リンク:タウンモールリスポ
関連記事:イオンモールいわき小名浜、8月着工-2018年夏開業目指す「防災拠点モール」

アウガ・ショッピングフロア、2017年2月28日閉館-2018年3月に公共施設化へ

青森県青森市のJR青森駅前にある複合商業施設「フェスティバルシティ・アウガ」1~4階のショッピングフロアが、2017年2月28日に閉館した。

フェスティバルシティ・アウガ。

青森駅前の憩いの場、16年の歴史に幕-公共施設化へ

「アウガ」は2001年1月に第三セクター企業「青森駅前再開発ビル」の運営する複合商業ビルとして開業した。
当初は地場百貨店「松木屋」(西武系、2003年倒産)、「ダックシティカネ長武田百貨店」(現:さくら野百貨店青森本店)などの出店も検討されたが、結局、商業ゾーンは独自のファッションビル業態とすることになった。その後、「第三セクターのファッションビル」は、コンパクトシティを標榜する青森市の象徴的存在として、多くの注目を集めた。
2月28日までのアウガは4つのゾーンに分かれており、地階はアウガ建設前にあった商店街の店舗が主に出店する食品ゾーン「新鮮市場」、1階から4階は「ショッピングフロア」(主にファッション)、5階から6階は「青森市男女共同参画プラザ・カダール」と催事ホールなど、6階から9階は「青森市民図書館」となっているほか、立体駐車場も設けられていた。地階~4階の商業床の売場面積は14,301㎡。
2月28日に閉館したのは、1~4階のファッションを中心とした「ショッピングフロア」の部分、約10,000㎡。最終営業日は、約50区画のうち約20店舗ほどでの営業となった。

アウガのフロア構成など概略図(青森市ウェブサイトより)。

アウガを運営する第三セクター「青森駅前再開発ビル」は解散することが決まっており、青森市は約17億円の債権を放棄する。
今後、アウガの土地建物は青森市が買い取る。その後、改装を進め、2018年1月をめどに公共施設化、青森市役所の総合窓口などが開設される。
青森市では、アウガと一体的に新市庁舎の整備を進めるための費用として、2017度一般会計当初予算案に約14億7千万円を計上している。

改装後のアウガのフロア構成案(青森市ウェブサイトより)。

居場所がなくなる若者、市外流出も増加か

コンパクトシティを標榜する青森市では、2006年より郊外地域には厳格な出店規制が敷かれているため、いわゆる近代的な「郊外型ショッピングモール」は存在せず、市内で最も大きな郊外型商業施設である「イオン・サンロード青森」(21,733㎡)も1977年開店と、イオンとしては非常に古い”前近代的”な店舗となっている。

サンロード青森。築40年を迎える市内唯一のイオン。

青森市では、2006年より「コンパクトシティ」を目指した郊外大型店の出店規制を行っており、例え有名テナントであっても青森市内の郊外型商業施設への移転余地は多くなく、今回の閉館により多くのテナントは青森市から撤退することになってしまった。つまり、政策によって郊外の商業施設が規制された上に、政策によって造られた中心部の商業施設も、また政策によって消えてしまったことになる。
最終営業日が近付き、館内の大手雑貨・書籍販売店「ヴィレッジヴァンガード」に掲げられた「青森市から撤退します、さよなら」という文字は、今回のアウガ終幕を象徴するものであった。

2016年夏には期間限定で「おそ松さんショップ」が開設された。

アウガの閉館により「駅近くではプリクラも撮れない」という状態になった青森市。今後、地階の商店街「新鮮市場」は存続するものの、上層階が公共施設化された場合、新鮮市場や周辺施設の客足にどのような影響があるか未知数だ。
さらに、公共施設化までは1年ほどあり、1階~4階が閉鎖されている間、新鮮市場の客足は大きく減少する可能性もあり(弁当などを売る店は工事関係者への需要もあろうが)、市場の個人商店にとっては経営への影響も大きいであろう。

地階の商店街「新鮮市場」。

一部テナントは移転へ-「青森市内から撤退」も相次ぐ

地元紙・東奥日報によると、2月22日現在アウガで営業していた21店のうち4店は中心市街地の百貨店やテナントビルに、2店は市内の大型商業施設に移転。3店は現在も移転先と交渉中で、別の3店は移転先が未定。残る9店は閉店の意向となっているという。
閉館の正式発表から4ヶ月ほどしか経っておらず、移転先が決まらなかった店舗も多いという。
移転を決めた主なテナントは以下の通り。
(都商研調べ。情報があり次第、追記します。)

アウガ内テナントの移転先

(いずれも青森市内に移転、※は郊外移転)

ファッション・服飾雑貨・コスメ
  • TRADER LUCK:イオン・サンロード青森※
  • U.S.BOARDER:さくら野百貨店青森本店
  • 飛行船カーラ:さくら野百貨店青森本店
  • HAYARIYA(La claireに改名):イオン・サンロード青森※
  • LADY:ドリームタウンALi(2016年移転)※
食品・雑貨・そのほか
  • ビーモバイル(携帯修理):ミッドライフタワー
  • ユアコンタクト(コンタクトレンズ):ミッドライフタワー
  • ジェイエステティック(エステ):イオン・サンロード青森※
  • うらら(菓子など):マエダガーラモール店※
  • レコルト(ベーカリー):青森駅前公園そばの路面店
  • 青森県信用組合(銀行):アウガ1階から移転せず

外部リンク:Festival City AUGA | フェスティバル シティ アウガ
関連記事:アウガ・ショッピングフロア、2017年2月28日閉館へ-経営問題で市長辞任、混迷深まる活用方法

関連記事:中三百貨店、MiK傘下で経営再建へ
関連記事:イオンモールつがる柏に「つがる市立図書館」開館-ショッピングでの相乗効果狙う

中合福島店二番館、2017年8月31日閉館-旧・山田百貨店、築44年で老朽化

福島県福島市の福島駅前にある百貨店「中合福島店二番館」が老朽化による耐震性の問題のために8月31日で閉店する。

中合福島店二番館。

旧「山田百貨店」の平和ビル、耐震問題で44年の歴史に幕

中合二番館は1973年11月に「山田百貨店」として開店した建物。
ビル名は「平和ビル」で、売場面積は約12,000㎡。
山田百貨店は1930年に「山田呉服店」として創業。戦後に百貨店化した。1973年に再開発で建設された平和ビルにニチイ(のちのマイカル、SATYなど運営)と共同で出店したのち、1978年に東日本の百貨店4社(イチムラ(長岡市)、カネ長武田百貨店(青森市、現「さくら野百貨店」)、丸光百貨店(仙台市、「さくら野百貨店仙台店」、2月27日破産)、小美屋(川崎市))とともにニチイグループと業務資本提携し「百貨店連合」を設立。1982年にはこれらの百貨店5社が合併した「ダックビブレ」の運営となり、その後は店名を「ダックシティ山田」、「福島ビブレ」と改め、1998年3月に福島市曾根田町の福島交通曽根田駅前に移転した。
福島ビブレ(山田百貨店)の退去後、平和ビルは1998年に「中合福島店二番館」として生まれ変わり、中合本館(辰巳屋ビル)との連絡通路も設置された。

本館(辰巳屋ビル)と二番館を繋ぐ連絡通路。

なお、移転後の福島ビブレは2002年に「さくら野百貨店福島店」となった後、2005年に閉店。店舗跡は2010年よりダイユーエイトなどが出店する「MAXふくしま」になっている。

MAXふくしま。

現在、中合二番館には生鮮食品売場のほか、フードコート、コーチ、岩瀬書店、コムサ、シューラルー、ニコルなどの専門店が出店。商工中金福島支店も入居している。

二番館のエントランス。

解体後の活用方法は未定

長きに亘って福島市の地域一番店であった中合であるが、二番館閉館後の中合福島店の売場面積は、現在の約半分の約14,000㎡となり、(面積的には)地域一番店の座をイオン福島店(旧・福島サティ)に譲り渡すこととなる。
福島駅前の一等地だけに早期の再開発が望まれるが、今後の活用方法は未定だといい、中合が再増床を果たすことができるかどうかも注目される。

外部リンク:中合福島店
関連記事:山形セブンプラザ、再開発で解体へ-再開発に期待かける山形市七日町

西武百貨店筑波店、32年の歴史に幕-2017年2月28日閉店、跡地問題長期化か

茨城県つくば市の「西武百貨店筑波店」(筑波西武)が2月28日20時を以て閉店し、32年の歴史に幕を閉じた。
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西武百貨店筑波店。

万博に合わせた「セゾンショールーム」としての開店だった

西武百貨店筑波店は、つくば科学万博に合わせて1985年3月に新治郡桜村(現・つくば市)に開業。
当時、村にある大手百貨店は日本唯一で、開店当初は周辺人口が少なかったために西武セゾングループのショールーム的な存在の店舗だった。
開店時は日本初のスパイラルエスカレータが導入されたことでも話題を呼んだが、現在は撤去されている。

スパイラルエスカレータ、ポーターロボット…かつての西武には「近未来」があった。 (閉店時のパネル展より)

入居する「クレオスクエア」(売場面積30,832㎡)は、筑波都市整備株式会社が所有。そのうち、西武百貨店は売場面積16,688㎡を占める。
クレオスクエアは総合スーパーの「イオン」(売場面積6,681㎡)と2核1モールを形成している。

改装直後、真新しい外装に「閉店」の文字-静かな閉幕に

最終営業日を迎えた28日は、店舗の別れを惜しむ客で混雑した。
新築かと見紛うような建物は、実は半年ほど前に補修されたばかり。閉店発表時も外壁補修中であったため、真新しい外装に掲げられた「閉店」の文字は、余計に物悲しさを印象づけるものとなった。

真新しい外観。

2階の正面口では、開店した1985年にちなんで先着1985名にデンファレの花が贈られたほか、入口には開店からの歩みや、客から寄せられた西武の想い出が掲示された。
パネル展では、ロボットが働くという開店当時の写真を見ながら「未来的だな…」との驚く客の様子も見られた。

西武の想い出メッセージコーナー。

筑波西武は筑波大学にも近いことから、かつて大学に在籍した人の「お名残り訪問」とおぼしき姿も多くあった。
閉店セールに訪れた60代男性は「一つの時代が終わった。ネットで何でも買えるからなあ」と語ったほか、様々な世代の客から「跡地は何になるんだろう…」との声が多く聞かれた。また、「化粧品を買うところがなくなるから困る」という20代女子学生もいた。
閉店を迎えた20時すぎにシャッターが下ろされると、客から拍手が起きた。
「安全性」を名目に閉店セレモニーなどは実施されず、閉店挨拶もない静かな閉幕だった。

跡地は未定-茨城県の百貨店は1店のみに

閉店を迎えた西武百貨店筑波店であるが、跡地の活用方法は未定となっている。オフィスビルとして再活用を目指すクラウドファンデイングが実施されたこともあったが、不成立に終わっている。
西武百貨店の閉店により、クレオスクエアは半分以上が空きビルとなってしまう。館内に出店するイオンについては、今後も営業を継続する。
また、西武百貨店に出店するテナントのうち、ハウスオブローゼ、ファンケル、第一花壇、JTB(交通公社)は隣接する「Q’t」に、ブックセンターリブロはクレオのエスカレータ横の空きスペースに移転する。
(リブロは売場面積が狭いため、仮店舗と思われる)

感謝の挨拶が掲げられた。

かつて県内最大手であった伊勢甚をはじめとして、各地に多くの百貨店が立地していた茨城県であるが、西武百貨店筑波店の閉店により、県内の百貨店は水戸京成百貨店のみとなる。

外部リンク:西武筑波店
関連記事:西武百貨店八尾店、36年の歴史に幕-2月28日閉店、新施設に期待の声も
関連記事:
筑波西武・八尾西武、2017年2月末閉店-百貨店リストラに突き進むセブンアイ
関連記事:筑波西武跡の再活用に向けたクラウドファンディング開始-オフィスビル化目指す
関連記事:そごう柏店、43年の歴史に幕-9月30日、西武百貨店旭川店も閉店

西武百貨店八尾店、36年の歴史に幕-2017年2月28日閉店、新施設に期待の声も

八尾市の近鉄八尾駅前にある百貨店「西武百貨店八尾店」(八尾西武)が2017年2月28日20時を以て閉店し、36年の歴史に幕を閉じた。

西武八尾ショッピングセンター。

ショッピングセンターとして開業、現在はアリオと連結も

西武百貨店八尾店」は「西武八尾ショッピングセンター」の核店舗として1981年5月に開店。建物は八尾市都市開発と八尾ビルディングが所有している。売場面積は37,536㎡。
八尾西武は、高槻西武、大津西武、つかしん西武などとともに従来の百貨店に専門店を加えた「ショッピングセンター」として開業した(当時は百貨店としての出店申請が難しかった背景もある)。
現在も、ユニクロ、ロフト、エディオン、無印良品、ABC-MART、山野楽器、JINSなど数多くのテナントが出店している一方、近年は類似したテナントが出店するショッピングセンターとの競争も激しかったと思われる。
また、隣接する「アリオ八尾・イトーヨーカドー八尾店」(2006年12月開業)と連絡通路で接続されたことは、西武百貨店のセブンアンドアイホールディングス入りを印象づける出来事であった。八尾西武の広告塔屋には「アリオ」の名前も記されている。
 
閉店セール中の八尾西武。
最終営業日には多くの看板が撤去されていた。

また、通常は屋上にあることが多い稲荷神社が8階のレストラン街に設置されていることも特徴となっており、現在、神社は向かいの大手お好み焼きチェーン「千房」などが管理をおこなっていた。この千房は、千房の百貨店出店1号店でもあった。

8階レストラン街の稲荷神社と千房。

天候に恵まれた最終日、新施設に期待の声も

最終営業日となった28日は、朝から天候にも恵まれ多くの買物客が店に訪れた。既に建物外壁に設置されていた「SE[I]BU」看板の大半が取り外されており、広告塔屋や日除けに描かれたロゴもシールなどで覆われるなど閉店前とは思えない異様な光景が見られた。

閉店当日の八尾西武。

また、1階ではアクセサリー売りつくしセールが開催されるなど、館内は大いに賑わいを見せた。

閉店セールで賑わう館内。

8階レストラン街には、閉店を記念した「メッセージボード」が設置された。開業当時の写真やチラシ、紙袋、記念品など様々な資料が公開され、当時を懐かしむ客の涙腺を刺激した。
「キラッキラの、八尾。」「おや、おや、やおや。」などのセゾンらしいキャッチコピーも並ぶメッセージボード

買物客からは「子供の頃からなぁ、遊び場だったもんなあ、かくれんぼしたよなぁ」(10代男性学生)、「親が子供の頃からあったのにつらいなあ」(10代男性学生)など、閉店を惜しむ声が多く聞かれたほか、「ただただ寂しい、でも建物は残るみたいで安心やねぇ、若い子が寄るような店は残る?無印は閉店するのねぇ」(60代女性)、「H&Mが入ると嬉しい」(30代男性)、「ロフトが残るの初めて知ったんだけど!」(学生団体)といったような、新施設への期待の声も多くきかれた。
また、地階食品売場でも、食品スーパー、惣菜専門店の営業継続について店員に尋ねる買物客が多く、西武閉店後の買物場所を心配したり、一部テナントの営業継続に安堵する様子も見られた。

店頭に掲げられた閉店カウントダウン。

式典なく静かな閉店に

閉店間際となった午後8時、「お客様の安全性」を名目に閉店記念セレモニーなどは実施されなかったもの、多くの買物客が閉店の瞬間を見届けるべく1階玄関前に集まっていた。買物客の一部からは「大の西武なのに安全上の理由もせんとか、せやから西武潰れるんやで」(50代男性)といった不満の声も聞こえたが、午後8時10分にシャッターが閉まった瞬間拍手が巻き起こった、
その後店員の1人が「ありがとうございました」といい、八尾西武は36年の歴史に幕を下ろした。

多くの人が詰めかけた。

新たな施設として再生へ-多くのテナントが営業継続

八尾都市開発と八尾ビルディングは、不動産会社「ザイマックス」とともに西武百貨店跡を新たな商業施設として再生する計画を発表している。
3月1日以降は西武百貨店運営フロアを除く多くのテナントが営業を継続。2017年9月ごろの全面リニューアルオープンを目指して工事が進められる。

営業継続の案内を掲げる八尾ロフト。

3月1日以降も営業を続けるテナント
地下1階
  • パントリー(食品スーパー)
  • おきな昆布(乾物・惣菜)
  • 花屋敷(洋菓子)
  • 三都屋菓子舗(和菓子)
  • 千鳥屋(和菓子)
  • 播彦(和菓子)
  • 桃林堂(和菓子)
1階
  • E.R.G(婦人服)
  • ハニーズ(婦人服)
  • フリースタイル(婦人服)
  • ミューゼ(婦人服)
  • ラナンキュラス(婦人服)
  • リップスター(婦人服)
  • 靴下屋(靴下)
  • ブランハンナ(フラワーラウンジ)
  • ラフィネ(リラクゼーション)
  • ミスターミニット(靴の修理・合カギ)
  • すまいSelect(住宅相談)
  • 八尾自動車教習所カウンター
  • カフェJr.(カフェ)
  • カラダファクトリー(リラクゼーション)
  • 八尾 チャンスセンター(宝くじ)
1階別棟
  • 八尾市ワークサポートセンター(就労支援)
  • 小学館英語教室(スクール)
  • フタバクリーニング(クリーニング)
2階
  • アミティエ(婦人服)
  • ミューゼ(婦人服)
  • 資生堂(化粧品)
  • 宝飾サロン(宝石)
  • アールズステージ(婦人カラーフォーマル)
  • 香里乃港(仏壇・仏具・線香)
  • アンフィドゥ(婦人肌着)
3階
  • エムニバイ・センソユニコ(婦人服)
  • 京都ふうや(婦人服)
  • タケオニシダ(婦人服)
  • ブティックエコー(婦人服)
  • ブティック・キュア(婦人服)
  • ブティック サラン(婦人服)
  • プレタセレクト(婦人服)
  • ベルミラン(婦人服)
  • リサルトジョカーレ(婦人服)
  • ルートアン(婦人服)
  • ビーズリー(パンツショップ)
  • フォーマルサロン(婦人フォーマル)
  • 京のきもの屋 四君子(呉服)
  • クラフトハートトーカイ(毛糸・生地・手芸)
  • リフレッシュサロン(リラクゼーション)
  • マジックミシン(洋服のお直し)
4階
  • ライトオン(カジュアル衣料)
  • ユニクロ(カジュアル衣料)
  • ABCマート(靴)
  • かんかん(エスニック雑貨)
  • イケダペットファーム(ペット)
  • ヴァンカウンシル(美容室)
  • 小学館幼児教室ドラキッズ(スクール)
5階
  • ロフト(生活雑貨・文具)
  • JINS(メガネ)
7階
  • メガネの三愛(メガネ・補聴器)
  • 保険ひろば(保険コンサルティング)
  • もりかわ歯科(歯科)
  • エディオン(家電・携帯・リフォーム)
  • 山野楽器(音・映像・楽器・音楽教室)
  • リブロ(書籍)
  • カフェ・ド・クリエ(カフェ)
8階
  • とんかつ 八尾 花(とんかつ)
  • 串のアイワ(串揚げ専門店)
  • 千房(お好み焼)
  • 五旬(季節料理)
  • にっこりマッコリ(韓国食彩)
  • 占い開運館(占い)

※無印良品は閉店する。

外部リンク:西武八尾店
関連記事:西武百貨店筑波店、32年の歴史に幕-2月28日閉店、跡地利用長期化か
関連記事:
筑波西武・八尾西武、2017年2月末閉店-百貨店リストラに突き進むセブンアイ
関連記事:そごう柏店、43年の歴史に幕-9月30日、西武百貨店旭川店も閉店

アリオ松本、2017年9月10日閉店-アルピコ松本バスターミナルの核店舗

セブンアンドアイグループが運営するJR松本駅前のショッピングセンター「アリオ松本」が2017年秋ごろに閉店する。
追記:閉店日は9月10日となった。

アリオ松本。

「JR松本駅前の顔」、39年の歴史に幕へ

「アリオ松本」は1978年4月に「イトーヨーカドー松本店」として開業。
松本電鉄(2011年に「アルピコ交通」に改称)が建設した「松電バスターミナルビル」への出店で、建物は地上7階、地下1階建。1階にはアルピコ交通(松本電鉄)のバスターミナルが設けられている。売場面積は13,178㎡。
 イトーヨーカドーは1996年にショッピングセンター業態の「エスパ松本」に、2011年には「アリオ松本」となったが、核店舗としてはイトーヨーカドーが開店以来継続して出店している。なお、かつて食品売場にはアップルランド(松電ストア)が出店していた。

1階にはバスターミナルが設置されている。

1月に西武、コムサなど相次ぎ撤退

2011年12月のアリオ化による全面改装では、テナントとして雑貨店の「ロフト」、「ヴィレッジヴァンガード」、「パスポート」や、タワーレコードの小型店「タワーミニ」、ベビー用品「赤ちゃん本舗」、レストラン街などが出店したほか、2階と5階には準核店舗として「西武百貨店アリオ松本ショップ」も出店。これまでのイトーヨーカドー直営フロア中心の売場からイメージを一新した。

アリオ化により多くのテナントが出店した。

しかし、2017年1月には西武百貨店が全面撤退したほか、同時期にファストファッション「コムサ」、写真館「スタジオマリオ」、クリームパン「八天堂」、信州そば「こすげ亭」なども相次いで閉店。一部はヨーカドーの直営売場拡大で埋められたものの、空き店舗が目立つ状態となりつつあった。

イオン開業を見越した閉店か-一変する松本の商業地図

アリオ松本の閉店を報じた地元紙・信濃毎日新聞によると、今回の閉店は2017年秋の開業を目指して工事が進められている「イオンモール東松本」(延床面積約97,000㎡、旧カタクラモール建替え事業)の影響を見越したものだと見られるという。
また、築40年を迎える松電ターミナルビルの老朽化も閉店の大きな要因であろう。
スクリーンショット 2016-08-13 22.29.14イオンモール東松本(イオンモール公式サイトより)。

アリオの閉店とイオンモールの開店は、松本市の商業地図を大きく塗り替えるものとなり、アリオと同じく中心市街地に立地する井上百貨店、松本パルコ、ミドリ(駅ビル)への影響も必至である。
アリオ跡の活用方法などについては発表されていないが、松本駅前の一等地であるうえにバスターミナルが入居しているということもあり、早期の再活用や再開発が望まれる。

追記:新施設は「アルピコプラザ」

アルピコ交通はアリオの建物を新たな複合商業施設「アルピコプラザ」として再活用する方針を示しており、核店舗として「デリシア」(松電ストア)が出店する。

外部リンク:アリオ松本
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さくら野百貨店仙台店、自己破産-2017年2月27日より店舗閉鎖、同名他店は影響なし

宮城県仙台市青葉区の「さくら野百貨店仙台店」を運営する株式会社エマルシェ(本社も同地)が、 2月27日に仙台地方裁判所に自己破産を申請した。
さくら野百貨店仙台店は同日朝より閉鎖されている。

閉店告知を見る人々(2月27日)。

丸光百貨店が起源、ミュージックサイレンで親しまれる

さくら野百貨店仙台店は「丸光百貨店」として1946年6月に仙台駅前のバラックに開業。
その後、丸光百貨店は石巻(移転後、現:石巻市役所ビル)、釜石(のちのニチイ釜石店→閉店)、気仙沼(のちのイコーレ気仙沼→閉店)、郡山(現:エリートビル)、八戸(現:さくら野百貨店八戸店、資本関係はない)に出店したほか、スーパーマーケット「トーコーチェーン」(1995年に自己破産)の運営も開始した。
1953年から1987年まで続いた屋上からの「ミュージックサイレン」は、長きに亘って仙台市民に親しまれた。

ニチイ(マイカル)との提携で一度破綻、再生はかるも…

丸光は1978年に東日本の百貨店4社(イチムラ(長岡市)、カネ長武田百貨店(青森市)、山田百貨店(福島市)、小美屋(川崎市))とともにニチイグループ(のちのマイカル、SATYなど運営)と業務資本提携し「百貨店連合」を設立。1982年にはこれらの百貨店5社が合併した「ダックビブレ」の運営となり、その後は店名を「ダックシティ丸光仙台店」、「ダックビブレ仙台店」、「仙台ビブレ」と改めた。
しかし、マイカルグループの民事再生法申請に伴い、2001年9月にダックビブレも民事再生法適用を申請。ダックビブレは2002年9月に「さくら野百貨店」と社名を変更、仙台ビブレは「さくら野百貨店仙台店」として再スタートを切り、2004年からは大手百貨店「高島屋」との提携も開始した。
民事再生手続きの終了に伴い、2005年4月には青森店など他店を「カネ長武田百貨店」を源流に持つ「さくら野東北」(のちに社名を「さくら野百貨店」に)として分離。
さくら野百貨店仙台店は単独での運営となった。

さくら野百貨店仙台店(2月27日)。

71年の歴史に幕-負債額は約31億円

さくら野百貨店仙台店の運営会社は、2010年8月に社名を「エマルシェ」と改め、その後はブックオフ、石井スポーツ、H&Mなどを新規テナントとして導入するなどの経営改革を行っていた。2016年には、開店70周年記念イベントが開催されたばかりだった。
店舗は綺麗に改装されていたものの、度重なる増築を繰り返しているために老朽化が深刻で、耐震性の問題も経営破綻の遠因になったとも考えられる。

閉店を知らせる貼り紙。

負債額は約31億円、店舗は2月27日から閉鎖されているが、一部テナントは営業を継続している。

レストラン街は閉鎖に。

さくら野百貨店仙台店で当面営業を続けるテナント
  • ドコモショップ
  • 楽天モバイル
  • 伊藤豆屋
  • 宝くじチャンスセンター
  • H&M
  • ゼクシィ
  • ニットソーイング倶楽部
  • 石井スポーツ
  • エルセーヌ
  • ブックオフ
  • 佐藤貴美枝ニットソーイングクラブ
    (2月27日現在)


H&Mは営業中(2月27日)。

さくら野の他店とは「資本関係なし」、他店は営業継続

先述の通り、さくら野百貨店のそのほかの店舗は、かつてマイカルの資本が入り同一企業となっていたために屋号を同じくしているが、現在は青森市に本社を置く「カネ長武田百貨店」を起源とする「株式会社さくら野百貨店」が運営しており、仙台店との資本関係は無く、これまでと変わらずに営業を継続する。
なお、さくら野百貨店仙台店が発行した商品券やポイントなどについては、現在の「さくら野百貨店」4店舗(青森、弘前、八戸、北上)での取り扱いを継続するほか、エマルシェ発行の百貨店商品券は今後も全国で使用できる。

さくら野百貨店青森本店(カネ長武田百貨店)。

寝耳に水の閉店「駅前で便利だったのに…」

さくら野百貨店仙台店の経営破綻は、地元民にとっても寝耳に水であった。

停止したエスカレータ。地下鉄連絡口も封鎖された。

仙台駅に直結していたため、「駅前で便利だったのに」(40代女性)と話す人や、近年はテナントの導入により若者客も増えていただけに「テナントしか利用しないけれど残念」(10代男性)という声も聞かれた。
27日より一部テナントのみの営業となっている店内は、売場に柵が設けられるなど、前日までの状況とは一変した。

さくら野百貨店仙台店の店内(2月27日)。

外部リンク:さくら野百貨店仙台店
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イオンモール新小松、2017年3月24日開業-北陸最大級のイオン、福井県も商圏に

石川県小松市の大型ショッピングモール「イオンモール新小松」が3月24日にグランドオープンする。イオンモール新小松。

約160店舗の専門店が集結-福井県も商圏に

「イオンモール新小松」は、JR小松駅の南東約2kmの区画整理地に出店。国道8号線のアクセスが便利な位置にあり、小松空港へも約5kmと近い。
建物は地上3階建てで、延床面積は約83,000㎡、総賃貸面積は約63,000㎡。同じ石川県に立地する「イオンモールかほく」(延床面積約75,500㎡)より少し大きい規模で、イオンモールとしては北陸最大級となり、福井県の一部(嶺北地方)も商圏とする。

イオンモール新小松位置図(Googleマップより作成)。

イオンモール新小松の開発コンセプトは「加賀ノ国文化ヲ嗜ム-豊かな時と美意識が息づく加賀文化で過ごす」。
核店舗の総合スーパー「イオンスタイル新小松」(1-3階)をはじめ、サブ核店舗の娯楽施設「楽市楽座」(2階)、映画館「イオンシネマ」(3階)、スポーツ用品の「スポーツオーソリティ」(3階)など約160店舗の専門店が出店する。
また、館内の吹き抜けにはシンボルモニュメントとして九谷焼を用いた「九谷五彩柱」が設置される。

シンボルモニュメント「九谷五彩柱」(公式サイトより)。

「イオンスタイル新小松」、イオン初の「カレーバー」導入

核店舗となるイオンスタイル新小松では“おもてなしSTYLE STORE”をコンセプトに、これまでになかった「経験」と「出会いの場」を提供する。

イオンスタイル新小松。

1階・食品売場、生鮮コーナーで展開するジューススタンド「デポデサンテ」では、加賀の観光農園「加賀フルーツランド」の果実を原料としたこだわりのジュースを提供する。
惣菜コーナー「リワードキッチン」ではイオン初となる「カレーバー」を導入。ビーフやチキン、キーマ、トマトカレー、金沢カレーの5種類のカレールーと、とんかつやハンバーグと言ったトッピングを組み合わせることで、オリジナルの一皿を作ることができる。

カレーバーなどを展開する1階・食品売場。

2階・美と健康の専門ショップ「グラムビューティーク」では、300種類のカラーアイテムが揃う「コスメティック・バー」や毎日の健康状態を気軽にチェックできる「SALU STATION」を展開。
また、年中無休の調剤薬局「イオン薬局」を併設し、処方箋情報をスマートフォンで送るだけで予約と薬の出来上がりの連絡を受けられる「スマホde調剤薬局」サービスを実施する。

2階・美と健康の専門ショップ「グラムビューティーク」。

3階・ファッションと雑貨のゾーンのメガネ専門店「グラスアップ」では、メガネの特産地として有名な福井・鯖江産のメガネフレームを使用したメガネを多く取り揃える。
キッズ・暮らしのゾーンでは北陸最大級の幼児向けギフトコーナー「ベビーポケット」や、ホームファニシングストアの「ホームコーディ」を展開する。
そのほか、館内にはイオンモール従業員の家族が利用できる「イオンゆめみらい保育園」も開設される。

専門店街には「めいてつエムザ」の小型店

1階イオンスタイルに隣接して設けられる食物販の専門店ゾーン「Komatsu Marche」では、JA小松市運営の「道の駅 こまつ木場潟」が地場産品を品揃えする食の発信拠点「えちゃけな」や、金沢市を中心にレストランやケーキショップを展開する「ぶどうの木」のカフェ業態「カフェぶどうの木」など13店舗が集結する。

Komatsu Merche。

また、Komatsu Marcheには名鉄グループ傘下の百貨店「めいてつ・エムザ」のセレクトショップ「めいてつ・エムザ 黒門小路」も出店。金沢銘菓を自由に選べる“金澤づつみ”をはじめ、北陸・金沢の名産品を提供する。

「ファストファッション大型店競争」も?

ファストファッションとしては、スウェーデンの「H&M」とスペインの「ZARA」(今夏オープン)が1階と2階のメゾネットタイプ(売場面積はともに約2,000㎡)で出店。ユニクロ傘下の「G.U.」も1階に北陸最大級となる売場面積約1.900㎡の大型店を出店する。
これら3店舗合計の売場面積はおよそ6,000㎡にものぼり、モール内での白熱した店舗間競争が見込まれる。

「レストラン・フードコート」には「金沢グルメ」の新業態が

1階レストラン街「小松食回廊」では「金沢カレー」の元祖として県民から愛される「カレーのチャンピオン」が初めて手がけるラーメン店「チャンピオンカレーヌードル」が出店。
また、北陸の新鮮なネタが楽しめる回転寿司「もりもり寿し」や、北陸初出店となる立ち食いステーキ専門店「いきなり!ステーキ」など13店舗が出店する。

小松食回廊。

2階フードコート「Food Forest」では、地元のラーメンチェーン店“8番らーめん”で知られる(株)ハチバンが、野菜の種類や量を増やした新メニューを提供する「8番らーめんエクスプレス」を出店。
また、富山県射水市創業の老舗料亭「料亭 三角」が手がけるトンカツ・牛カツの新業態店「三角屋」や、ローストビーフ丼専門店「ローストビーフ 星」など13店舗をラインナップする。

Food Forest。

また、別棟のカフェ「星乃珈琲」はイオンモールの開店に先駆けて2月1日にオープンしている。

北陸最大、広い商圏-商業地図を塗り替えるか

先述の通り、イオンモール新小松は北陸最大級のイオンモールとなり、金沢都市圏は勿論のこと、福井県嶺北地方(福井市周辺)も商圏に据え、年間800万人の来店を見込む。

福井市中心部。

福井県には現在イオン系ショッピングセンターが全くなく(過去にあったが撤退)、売場面積が3万㎡を超える店舗はユニー系の「フェアモール福井・エルパ」(福井市、売場面積44,571㎡)のみ。このほかにもユニーはこの地域に多くの郊外型ショッピングセンターを持つが、ユニーはファミリーマートとの経営統合に伴い、東海地方以外に立地する店舗網の縮小を示唆している。
また、イオンモール新小松には福井県に本社を置くテナントも7店が出店することを決めており、北陸最大級のモールの登場で、北陸地方の商業地図が大きく塗り替わる可能性もあろう。
なお、イオンモールの開業に先駆け、福井市では2016年より「西武百貨店福井店」、「フェアモール・エルパ」(ユニー)、「ベル」(平和堂)、「パリオシティ」(ヤスサキ)の「ライバル同士による共同販促」も開始されているという。

イオンモール新小松

住所:石川県小松市沖周辺土地区画整理事業地内、三田町
営業時間:8:00~23:00 (専門店街9:30~21:00など)
敷地面積:約128,000㎡
延床面積:約83,000㎡
総賃貸面積:約63,000㎡
駐車台数:約3,200台

外部リンク:イオンモール新小松
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