エキソアレ西神中央、2022年4月1日開業-西神そごう跡、百貨店の歴史引継ぐ「ハイ・カジュアル」な商業施設に

兵庫県神戸市西区の神戸市営地下鉄西神中央駅に直結するセブン&アイHD系の百貨店「そごう西神店(西神そごう)」跡に、双日のショッピングセンター「エキソアレ西神中央」が2022年4月1日に開業した。

暫定営業続けていた西神ニュータウンのそごう跡

そごう西神店は、1990年10月に神戸市交通局が開発する「西神中央駅百貨店ビル(現西神中央駅ショッピングセンター)」を全館賃借するかたちで「西神そごう」として開業。建物は地上6階地下2階建で、延床面積は約30,301㎡。交通局完全子会社の神戸交通振興が所有する。
そごう西神店

開業当初は、旧・そごうグループが30店舗体制をめざし推し進めていた“トリプルそごう計画”の28店舗目として、キャッチコピーに「ハイ・カジュアル主義」を掲げ、1階には東京ディズニーランドとの提携により誕生したからくり時計「イッツ・ア・スモールワールド時計」、5階には神戸市内最大となる「川の流れるレストラン街」、屋上にはメリーゴーランドやエアーサイクルといった大型遊具を備えた遊園地「ファンタジーランド」を導入するなど、神戸市郊外のニュータウンに立地する地域密着志向の店舗ながら非常に豪華な設備を特徴としていた。
その一方、西神そごうはグループの経営悪化や過剰投資が災いとなり、2000年7月に民事再生法適用を申請(経営破綻)。2002年3月には再建の一環として運営体制を変更し、そごう西神店となった。
そごうのシンボルのひとつだった「からくり時計」

そごう西神店では、2002年の運営会社再編を機に「「自分」発見専門館」を掲げ、売場の最適化を目的とした全面リニューアルを実施。2009年8月の運営会社再編後はそごう神戸店の分店(そごう神戸店西神館)とすることで、経営効率の改善を図った。なお、2016年10月にはセブン&アイHDとH2Oリテイリング(阪急阪神百貨店)による資本業務提携の一環として、西神店を含む関西3店舗(そごう神戸店・西武高槻店)をH2O運営に移行する方針があったが、2017年8月に西神店の運営移行を白紙化。2019年10月には西神店を除く関西2店舗が「阪急百貨店」ブランドに移行したため、西神店は「そごう・西武としては関西唯一の店舗」「そごうの屋号を冠する関西唯一の店舗」となった。
そごう神戸店は神戸阪急となった

これにあわせ、そごう西神店は2019年9月に1階食品フロアの大規模なリニューアルを実施したが、同年10月に一転して閉店の方針を発表、改装から1年満たない2020年8月31日をもって約30年の歴史に幕をおろした。なお、施設を所有する神戸交通振興はそごう閉店に先駆けて、2020年4月に後継事業者公募を開始、同年7月に双日を優先交渉権者に選定し、同年11月から1階食品フロアと5階飲食店街の営業再開(臨時開業)を順次進めていた。

デパイチに新たなアクセント加えて再生

エキソアレ西神中央の営業フロアはそごう時代と同等の地上1階~5階で延床面積は約30,301㎡。運営業務は双日から委託を受けたプライムプレイス(東京建物グループ)が担う。
施設名称の「エキ」は西神中央駅に、「ソアレ」は太陽(ルーマニア語)に由来するもので、コンセプトに「日常にある上質な暮らし」を掲げ、百貨店が積み重ねた歴史や地域住民のライフスタイル向上を意識した専門店約60店舗が出店する。
営業フロアのうち、1階には関西地盤の高級食品スーパー「パントリー(大近)」や洋菓子銘店「モロゾフ」「ゴンチャロフ」「ケーニヒスクローネ」「アンリ・シャルパンティエ」、和菓子銘店「宗家 源吉兆庵・満果惣」「文明堂」といったそごう1階食品館エブリデイ(デパイチ)時代からのブランドが引続き営業するほか、「ゴディバ」「御座候」「RF1(Green gourmet)」がそごう閉店から約1年半ぶりに再出店、輸入食品グロサリー「ピープルズ」や沖縄県外への多店舗化を進めるアイスクリーム「ブルーシールアイスクリーム」が新規出店する。

エキソアレ西神中央
(西神中央駅ショッピングセンター)

2階には「無印良品」や美容と健康に強みをもつドラッグストア「AINZ&TULPE」、アダストリアの生活提案型衣料・雑貨店「LAKOLE」といった7店舗が出店。 LAKOLEは「国内最大級の店舗」(237坪)として従来からの生活雑貨・アパレル分野をフルラインナップで展開するほか、アダストリアグループ初となるセルフレジの導入や新カテゴリ(ペット・フィットネス分野)の先行導入、店舗限定商品の拡充といった実験的な取組みを打ち出す。

LAKOLEエキソアレ西神中央

3階には大型家具インテリア雑貨店「ニトリ」がワンフロアに出店。4階には精文館書店のBOOK&CAFE「TSUTAYA BOOKSTORE」「LE GARAGE/ohagi3(ル・ガラージュwithおはぎさん)」や100円ショップ「ダイソー」、「POLA」といった5店舗が出店。

DAISO西神中央

TSUTAYAでは従来からの「多彩なライフスタイル提案」を掲げた書籍・雑誌フロアに加え、文具・雑貨フロアを中心に食雑貨を幅広く展開。店内各所に「成城石井Selection」コーナーを配置するほか、和洋菓子やレトルト食品・調味料売場の集積を進めるなど、一般的な都市型グロサリー専門店に匹敵するような異色な店舗づくりを打ち出した。

食雑貨を前面に押し出したTSUTAYA BOOKSTORE

5階には紀伊國屋書店跡の地場総合進学塾「若松塾」、飲食店街の地場中国料理レストラン「金龍閣」、地産地消和食レストラン「旬菜みやこ」といった12店舗が出店。エスカレーターホールでは、双日が源流企業とする戦前の総合商社「鈴木商店」の栄枯盛衰(伝説性と悲劇性)とその後の各種産業への貢献を取り上げた展示を行うほか、そごう時代からの噴水設備は円柱の休憩所として再整備する。

日本一の総合商社だった鈴木商店

鐘の音が祝うリニューアル開業

エキソアレ西神中央開業当日の午前9時30分からはオープニングセレモニーが開催された。式典には施設所有者の神戸市・OMこうべ関係者、施設運営者の双日・プライムプレイス関係者、地元議員などが参加し、双日が源流企業とする鈴木商店の歴史とエキソアレ開業による貢献、地元神戸市をホームタウンとするJ1サッカークラブ「ヴィッセル神戸」とのスポンサー契約締結といった内容が語られた。

エキソアレ西神中央のオープニングセレモニー

式典はヴィッセル神戸のマスコットキャラクター「モーヴィ」の登場やテープカットにより盛り上がりをみせ、営業開始時刻となる午前10時を知らせるからくり時計の鐘の音が施設の開業を華々しく彩った。
開業当日は春休み期間であり、施設・専門店各店ともに福袋や特価商品を打ち出したため、制服を着た学生からファミリー、高齢者まで幅広い年齢層により賑わいをみせた。

鐘の音が鳴り響く午前10時

神戸市は以前より、2022年2月の西区役所庁舎移転や今回の西神中央駅ショッピングセンター(エキソアレ西神中央)リニューアルなど、神戸市営地下鉄の起終点駅である西神中央駅一帯の再整備を進めている。
2022年秋には複合文化施設(西神中央ホール)の整備を、2023年春には駅前広場・バスロータリーの整備を、同年秋には隣接するショッピングセンター「プレンティ」(ダイエーイオンフードスタイル・KOHYOなど出店)のリニューアルを迎える予定であり、これらの取組みが人口減少が続く神戸市の起爆剤となるか今後も注目が集まりそうだ。

エキソアレ西神中央(西神中央駅ショッピングセンター)

住所:兵庫県神戸市西区糀台5丁目9-4
営業時間:午前10時~午後8時(一部店舗除く)

関連記事:ダイエーグルメシティ新長田店、2021年12月31日閉店-アスタくにづか3番館の核店舗、西神戸店から60年の歴史に幕
関連記事:いかり摂津本山駅前店、2021年2月11日開店-ガーデンライフ岡本に
関連記事:ヤマダ、ベスト電器・ツクモ・マツヤデンキ・星電社などの運営会社を2021年7月吸収合併-事業再編で、レオハウスなども統合・消滅
関連記事:ライフ阪神鳴尾店、2020年9月16日開店-阪神鳴尾・武庫川女子大前駅前ビルの核店舗
関連記事:KOHYO神戸店、2020年9月8日開店-光洋、JR神戸駅ナカ「ビエラ神戸」に再出店
関連記事:イオンフードスタイル西神中央店、2020年9月1日開店-プレンティのダイエー、そごう・パントリー閉店にあわせ“高級化”

このエントリーをはてなブックマークに追加