【4月1日】林百貨店、1932年12月5日開業-商店街「台南銀座」も完成、台湾南部に百貨店時代到来へ

台南州台南市末廣町(通称:台南銀座商店街)に、台湾南部で初となる百貨店「林百貨店(ハヤシ百貨店)」が、昭和7年12月5日に開業した。

ハヤシ百貨店と台南銀座。写真の右側は日本勧業銀行。

台湾南部の中心・台南

台南州は台湾本島の南部に位置し、人口は約130万人。本島一の人口密度を誇る。北は新高山系および濁水溪を以て台中州に、東南は新高山系および二層行溪を以て高雄州に接する。

台南驛。(昭和11年竣工)

台南市は台湾随一の古都であり、300年の歴史がある赤崁樓や鄭成功を祀る開山神社、孔子廟など多くの名勝があることでも知られる。山地部には高砂族が多く住むが、台南州は「理蕃なき州の建設」を掲げており、近年は「山地の平地化」をめざして高砂族への農林業を振興。本島人・内地人・高砂族の混住も進んでいる。

赤崁樓。大正10年に大規模修復がおこなわれた。

新しく生まれた商店街「台南銀座」の中心店舗

林百貨店は台南市中心部の区画整理で生まれた新しい商店街「台南銀座」に出店。
台南市では三越(本社:東京市日本橋区)が宮古座(台南市西門町)などでたびたび出張販売を行っていたものの、本格的な出店には地元商店主の反対もあり、地元資本で台南市大宮町に店舗を構えていた「林方一商店」(のち林百貨店)が出店するに至った。
 
林百貨店・広告ロゴ。

林百貨店の建設を前に、末廣町一帯では林方一氏を代表として建設組合を結成。昭和2年から再開発と共同商店ビル「末廣町商業店舗住宅」(台南銀座)の整備が行われており、昭和6年より林百貨店とあわせて本格的な建設工事が進められた。
経営は山口県出身の林家が行う一方で、従業員には本島人も多く採用された。支配人は林家と同じく山口県生まれで、日本製材出身の藤田武一氏が就任している。

銀座通りに整備された林百貨店とそれに続く商店街。
道路は舗装され、歩道は屋根がある亭仔脚。街灯も整備された。

林百貨店の建物は鉄筋コンクリート地上5階(一部6階)建てで、延床面積は548坪。
設計は石川県出身で台南州内務部土木課の梅澤捨次郎(市内では台南警察署の設計でも知られる)、施工は台北市の田村組(外装)、台北市の共益社(電気機器・内装)、神戸市の横山装飾品店(装飾)などが行った。
外観はスクラッチタイル張り、1階から6階までは台南で初となるエレベーター(日本エレベーター製)が設置されている。1階にはショーウインドウが設けられ、亭仔脚は歩きやすいように柱が少なく開放的な雰囲気となった。また、夜間は建物全体に照明が点灯される。
屋上遊園地には、電動木馬や金魚すくいが設置されている。
各階の概要は以下の通りとなる。

階数 台南銀座 ハヤシ百貨店
6階 遊園地・展望台・神社(昭和8年開設)
5階 レストラン(洋食堂)
4階 玩具・文房具・通信販売部
3階 呉服・太物・反物・服地・催場
2階 和洋雑貨・子供服
1階 食品・化粧品・煙草等専売品(昭和12年にJTBも出店)

以下は台南銀座の共同ビルの主なテナント
・愛国堂薬局
・近藤商会
・正直屋旅館
・小出商店
・今林商行
・森永製菓喫茶室
・今中歯科

台南の文化拠点として期待

開店を迎えた12月5日には台南市内から多くの人が来館。闘病中の林方一氏に代わり、夫人の林とし氏らが挨拶を行った。
(経営者の林方一氏は12月10日に死去)
洋食堂は早くも人気を集めており、名物のカレーライスを求め多くの客が押し寄せている。
昭和8年中には、台南州出身で台湾工芸の父と称される顔水龍氏の作品展などが開催される予定となっており、台南市の芸術文化拠点としても機能することとなる。

女学生からも人気を集める台南銀座。
林百貨店前から向かい側(味の素ネオン前)を撮影。

このほか、隣接する3階建ての共同ビル(末廣町商業店舗住宅)も12月8日より本格的に営業を開始。洋品雑貨・書籍・文具の大型店「小出商店」、和用雑貨卸売「今林商行」、森永製菓運営のカフェー「森永喫茶店」など多くの店舗が出店している。

台湾にも「百貨店時代」来たる

台湾では近年「都市の繁栄には百貨店が欠かせない」との声が高まっており、昭和4年に台湾日日新聞が行った講演会「百貨店の組織と経営」は大きな反響を呼んだ。

菊元百貨店(台北市榮町)

台北市では菊元商店が今年12月3日に「菊元百貨店」を開業させたばかりであり、今後は台湾においても百貨店の時代が来ることは間違いないであろう。
(画像:台湾中央研究院ほか)

林百貨店

台南州台南市末廣町二丁目120番地
営業時間:午前8時~午後10時
電話:台南607・617
台南駅からバス10錢(徒歩20分)

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林百貨店は戦後、国民党に接収されたのち80年代から放置。
紆余曲折を経て内外装を復元され、地元資本で2014年に営業を再開、営業再開時には林家と元従業員も招待された。
末廣町商業店舗住宅は台南大空襲で一部破壊されたものの半分は同じ建物のまま営業している。向かいの銀行は土地銀行が利用。

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