米・JCペニー、2020年5月15日倒産-米国の大手大衆百貨店、新型コロナ影響でさらなる店舗閉鎖も

米国大手大衆百貨店(総合スーパーに近い業態)「JC Penny」(JCペニー)が、日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条の適用を申請し、2020年5月15日に経営破綻した。
New Concept Shop.Penny’s Hurst North East Mall.(from JCPenny)

米国大手小売の経営破綻は、5月4日の「J・CREW(J・クルー)」、5月7日の「Neiman Marcus(ニーマン・マーカス)」に次ぎ3社目となる。

米国大手大衆百貨店、ネット通販との競合で苦戦していた

JCペニーは1902年4月にワイオミング州ケメラーで創業。創業当初より全米各地に店舗網を拡大し、1962年には後の中核事業となるカタログ通販に参入、金融事業など多角化経営を打ち出し、大手流通グループとして地位を築いた。
2010年代からは、Amazonなど大手ネット通販との競合による業績低迷を受け、不採算店舗の閉鎖や従業員の削減に加え、中核事業のひとつであったカタログ通販から撤退するなど、大胆なリストラ策を推し進めていた。その一方、2019年11月には新コンセプト店舗「Penny’s」1号店をテキサス州ハーストの大型ショッピングセンター「サイモン ノースイーストモール」に出店、ECサイト「jcp.com」を核とした事業モデルへの転換を図っていた。
New Concept Shop.(from JCPenny

その最中、2020年に入り新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)が行われたため、3月19日をもって全店舗を休業、5月現在も大半の店舗が営業再開に至っていなかった。

青山・デオデオと提携し日本でも多店舗展開していた

JCペニーは1994年に大手紳士服チェーン「青山商事(洋服の青山)」と提携し、青山グループ運営のカジュアル衣料専門店「CALAJA(キャラジャ)」に商品供給する形で日本市場に参入。1996年には広島地盤の大手家電量販店「デオデオ(現・エディオン)」と提携し、西日本のショッピングセンターや同社運営店舗を中心に大型インテリア雑貨店「JCペニー・ホームコレクションズ」を多店舗展開していたが、青山・デオデオ運営店舗ともに当初から業績不振が続いたため提携を解消、2020年現在は日本市場から完全撤退している。
JCペニーが核店舗のひとつとして出店した「パピヨンプラザ」。

DIP融資で営業を継続、不採算店舗は閉鎖の可能性も

JCペニーは連邦破産法11条の適用により、債権者70%との合意のもと、手元資金約5億ドル(約535億円)に加え、9億5,000万ドル(約1,010億円)の一時的な運転資金融資(DIP融資)を受けることで、経営再建を目指すこととなる。
同社は経営再建の一環として、米国本土及びプエルトリコで展開する約850店舗のうち、一部の店舗を段階的に閉鎖(詳細は未発表)することを発表しているが、JCペニーの Jill Soltau(ジル・ソルタウ)最高経営責任者(CEO)は「Implementing this financial restructuring plan through a court-supervised process is the best path to ensure that JCPenney will build on its over 100-year history to serve our customers for decades to come. (「裁判所の監督下で財務再構築プランを進めることは、100年以上の歴史に築かれたJCペニーが、今後何十年にもわたりお客様にサービスを提供するための最善の方法である」)」とコメントしており、同社の多くの事業は存続する見込みとなっている。

厳しい米国小売、今後も経営破綻相次ぐか

JCペニーは、2020年5月7日に連邦破産法11条の適用を申請した「Neiman Marcus(ニーマン・マーカス)」などの高級百貨店チェーンと異なり、国内大手総合スーパー(イオン・イトーヨーカドーなど)に近いデイリーユース型の店舗モデルを採用するなど、米国小売屈指の店舗網を展開していた。
2018年10月には、JCペニーと同様の事業モデルで米国最大手流通グループとなった「Sears Holdings(シアーズHD)」も連邦破産法11条を申請、主力業態である「Sears(シアーズ)」「K-mart(Kマート)」を年間50~200店舗単位で閉鎖しているが、未だに経営再建には至っていない。
シアーズやJCペニーは米国全土に店舗網を展開しており、大型ショッピングモールの核としての役割を担う店舗も多いため、両社による店舗網の再構築は、新型コロナに苦しむ商業施設ディベロッパーや関連業種チェーンの持続的な経営にも大きな影響を与えるとみられる。

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