大阪府大阪市中央区心斎橋筋の百貨店「大丸心斎橋店(しんさいばしみせ)本館」が、約3年半の建替工事期間を終え、2019年9月20日13時に開業した。
大丸心斎橋店本館。
心斎橋の象徴、約3年半ぶりに復活
大丸心斎橋店は1726年に呉服店として開店。
旧本館は1922年から1933年にかけて建設された。アメリカ人著名建築家「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ」により設計されたもので、商業都市・大阪を代表する繁華街「心斎橋」のシンボルとなっていたが、2015年7月に再開発計画が正式発表され、同年12月30日をもって営業を終了。2016年2月から建替工事が進められていた。
建物は地上8階地下2階建、高さ40m、売場面積は約31,000㎡、延床面積は約49,000㎡だった。
大丸心斎橋店本館。
86年ぶりに本館建替え、テナントとの融合で368店出店
建替え後の大丸心斎橋店本館は地上11階地下3階建、営業フロアは地上10階~地下2階、高さ60m、売場面積は約40,000㎡、延床面積は約66,000㎡。
エントランス。
ストアコンセプトに「Delight the World「世界が憧れる、心斎橋へ。」」を掲げ、新業態47店舗、関西初出店41店舗を含む368店舗を導入。
従来、百貨店が特徴としていた「買取」「消化仕入」主体の取引形態、契約に加え、一般的な商業施設と同様の「定期賃貸借契約」によるブランド導入を推進。全売場面積のうち、約3分の2をテナントに貸し出すという運営モデルを採り、百貨店と専門店の融合を目指した構成となる。
商店街側エントランスのピーコック像。以前のままの雰囲気。
大丸は、同店独自の「5つの提供価値「フィロソフィ」」を策定するなど「世界と未来にむけて進化する百貨店」を目指すとしている。
エントランスにはシンボルのステンドグラスが。
地下部分には「フードホール」登場
地下2階では生鮮食品やグロサリー専門店に加え、NYスタイルのライブキッチンを取り入れたフードホール「心斎橋フードホール」を展開。
心斎橋フードホール(約350席)では「五感が刺激されるライブキッチン」を掲げ、トリュフ専門店「Artisan DE LA Truffe PARIS」、不二製油グループが手掛ける植物性フード専門店「UPGRADE Plant based kitchen」、日本橋・黒門市場に本店を構えミシュラン1つ星を獲得する「六覺燈」のグルテンフリー串揚げ専門店「あげもんや 六覺燈」など新業態11店舗を含む13店舗が出店。スマートフォン端末を活用する事前オーダーシステムなど西日本の百貨店では初となるサービスも導入される。
心斎橋フードホール。
地下1階では和洋菓子や惣菜、婦人洋品雑貨売場を展開。
食品売場では「ここにしかないNEWが凝縮されたデパチカ」を掲げ、ハウス食品の「クワエル スパイス」、味富士の発酵バター専門店「BUTTER ROUEN(バタールーアン)」、船場吉兆を前身に持つ大阪・北新地の「日本料理 湯木」など新業態12店舗、石屋製菓の“北海道では手に入らないスイーツ”を取扱う「イシヤ心斎橋」、東京・恵比寿の日本料理店「賛否両論」が手掛けるスイーツ専門店、BAKEのガトーショコラ専門店「Chocolaphil(ショコラフィル)」、仙台銘菓「萩の月」や「ずんだシェイク」で知られる「菓匠三全」の「HONMIDO(本実堂)」、フランス料理シェフのデザートサロン「ル・ショコラ・アランデュカス」(カフェ併設)など関西初9店舗を含む62ブランドが出店。ウィリアム・メレル・ヴォーリズが洋菓子部門設立に携わった「たねや」(滋賀県近江八幡市)では、「ヴォーリズ建築の意匠を象った香川県産和三盆のお干菓子」も販売する。
たねや心斎橋大丸店「お干菓子ヴォーリズ」。
また、地下1階では大阪メトロ心斎橋駅とも直結される。
駅直結となる。ここにもヴォーリズのモチーフが。
1階ではシャンデリアなどの内装も復原
1階では「圧倒的な美の空間」を掲げ、関西初となるディオールの新フレグランスコレクション「MAISON CHRISTIAN DIOR(メゾン クリスチャン ディオール)」など、化粧品やアクセサリーを中心とした45ブランドが出店。サードウェーブ系グルメバーガー「シェイクシャック」も心斎橋初となる店舗を出店する。
なお、同店は日本国内では「アフタヌーンティールーム」などと同じ「サザビリーグ」が展開している。
シェイクシャック。
店内の壁画には「大阪のモチーフ」も。
フロアには大丸心斎橋店の象徴ともいえるウィリアム・メレル・ヴォーリズによる装飾が保存されていることから、「ヴォーリズ建築を復原したクラシカルな内装と、ウルトラモダンな鏡面天井を組み合わせ、物語の中に入り込んだような世界観を生み出す」としており、戦時中ごろに撤去されたシャンデリアなど失われていた内装も一部が復原されている。
1階・化粧品内装。シャンデリアも復原された。
1階・エレベーターホール。以前のままの雰囲気。
また、エントランスには名和晃平氏によるプラチナとゴールドの鳳凰像が飾られ、華やかさを演出する。
鳳凰像。もともと大丸のシンボルは「ピーコック」ではなく「フェニックス」となる予定だったという逸話もある。
2階では「世界最高水準のラグジュアリーブランドの伝統と今が体感できるフロア」を掲げ、西日本最大級のVIPルームを備えた「Cartier(カルティエ)」やフルラインナップの「Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)」など20のラグジュアリーファッション・ジュエリーブランドが出店。NY発のチョコレートレストラン「MARIEBELLE」も新ブランド「MARIEBELLE the LOUNGE(マリベル・ザ・ラウンジ)」を出店する。
3階では「世界最旬のコンテンポラリーデザイナーズの魅力を体感できるフロア」を掲げ、「Christian Louboutin(ク
リスチャン・ルブタン)」の西日本旗艦店や「CELINE(セリーヌ)」など、ラグジュアリーファッション、シューズを中心とした26のブランドが出店。大丸松坂屋百貨店が手掛けるGINZA SIX発の生活提案型自主編集コンセプトストア「SIXIÈME GINZA(シジェームギンザ)」も導入する。
SIXIÈME GINZA。
4階では「世界最新のファッションカルチャーを提案するフロア」を掲げ、国内3店舗目の直営店かつ大阪エリアの百貨店内初となるNY近代美術館の「MoMA Design Store」(ロフト運営)、ジェイソン・デンハムが手掛けるデニム専門店「DENHAM」の工房併設型店舗など20ブランドが出店する。
DENHAM.
5階では「自分らしさ・自然体を大切に上質なライフスタイルを提案するフロア」を掲げ、オンワード樫山の旗艦店「23区 SHINSAIBASHI」など新業態2店舗、ワールドのコンセプトショップ「UNTITLED salon(アンタイトル サロン)」、3Dボディスキャナや接客AIを導入した下着専門店「ワコール 3D smart & try」など関西初4店舗を含む26のブランドが出店する。
6階では「Art & Craftsmanshipが体感できるフロア」を掲げ、西日本初となるバーバー併設のアメリカントラッドファッションの旗艦店「FREEMANS SPORTING CLUB」、タキヒヨーのライフスタイル提案型セレクトショップ「BOB for Melangetop」、AKMのデザイナーとして知られた小澤智弘が手掛ける「1PIU1UGUALE3(1PIU1UGUALE3 )」、大丸が1959年に立ち上げた既製スーツブランド「TROJAN(トロージャン)」、ドイツの名門カメラブランド「Leica(ライカ)」のギャラリー併設店舗など45ブランドが出店。
FREEMANS SPORTING CLUB DAIMARU SHINSAIBASHI.
かつて中2階にあった喫茶「サロン・ド・デ・ヴォーリズ」も5階に設けられる。
サロン・ド・デ・ヴォーリズ。
7階「心斎橋ひとときテラス」では「心斎橋エリアのオアシスとなるフロア」を掲げ、伊藤園の新業態カフェ「Four Green Leaves ITOEN」、国内初となる常設カスタムコーナーを併設したベビー用品ブランド「familiar(ファミリア)」、化粧品・健康食品「DHC」、BBQやパーティも可能なテラスレストラン「TUFFE TERACCE EAT」(店内82席、テラス48席、全130席)など31ブランドが出店。
かつての屋上部分はテラスに。
ひとときテラス。
8階では「これからの日本のくらしのヒントがみつかるフロア」を掲げ、「中川政七商店・茶論」初の一体型店舗などライフスタイル雑貨、美術・呉服・宝飾、ギフトを中心とした31ブランドが出店する。
8階。
「海洋堂」や「ポケモンセンター」も登場
9階では「モノ・コトを通して“本物の日本”を世界に向けて発信していくフロア」を掲げ、日本初となる海洋堂フィギュアの展示・販売スペースを併設する「タリーズコーヒー KAIYODO」や関西初となるカフェ併設ポケモン直営店「ポケモンセンターオーサカDX&ポケモンカフェ」、少年ジャンプのグッズ店「JUMPショップ」、スーツケースブランド「ACE BAGS&LUGGAGE」「Samsonite」など8店舗が出店。
ポケモンセンターオーサカ(ショーウインドウ)。
ジャンプショップ。
訪日外国人観光客のインバウンド需要に対応した免税・観光案内・手荷物預かり拠点「海外お客様サービスカウンター」も設けられる。
Pokemon Center OSAKA DX.
10階では「日本の食文化を世界にむけて発信するフロア」を掲げ、老舗大阪寿司店「すし萬」(1653年創業)や京都・八坂通に本店を構える「京都祇園 天ぷら圓堂」「お茶屋バー 近江榮」(1885年創業)、名古屋みそかつ「矢場とん」(1947年創業)、焼肉「叙々苑」、船場吉兆を前身に持つ「日本料理 湯木」、ミシュランのビブグルマンにも選定された大阪・肥後橋の「青空blue」、お好み焼き店・千房の高級業態「ぷれじでんと千房」、大阪初出店となる韓国料理店「美菜莉」、うなぎ料理店「赤坂ふきぬき」など14店舗が出店。
10階・飲食街。
ホームページや店内サイネージで混雑状況がわかるタッチパネル式の順番待ちシステムも導入される。
心斎橋北館、9月15日閉店-2021年にパルコ出店
今回の大丸心斎橋店本館リニューアルに伴い、北館(旧・そごう心斎橋本店)は1階一部ブランドを除き2019年9月15日18時をもって一時休館。2021年春を目途に「心斎橋パルコ」と大丸心斎橋本店の専門店街により構成される新施設に転換し、本館と一体的な都市型ショッピングセンターとなる予定。
旧・そごう心斎橋本店。
J.フロントリテイリングの山本良一取締役兼代表執行役社長によると、新本館を「百貨店改革の集大成」、2021年の全館開業後の新施設を「Jフロントが手掛ける商業施設の到達点」と位置付けてられてるといい、2017年4月に開業した「GINZA SIX」とは異なる商業施設として、大阪ミナミを、そして新時代の百貨店業界を牽引していく役割が期待される。
大丸心斎橋店の夜景。
(撮影:びるまちさん/イメージはニュースリリースより)
大丸心斎橋店本館
住所:大阪市中央区心斎橋筋1-7-1
営業時間:10:00~20:30(ショップ)
営業時間:10:00~23:00(フードホール)
営業時間:11:00~23:00(レストラン)
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