国内アパレル業界3位「アダストリア」(本部:東京都渋谷区)は「アンドエスティHD」への社名変更にあわせ、2025年9月1日付で持株会社体制に移行した。
北関東で「福田屋洋服店」として創業
アダストリアは1953年10月に茨城県水戸市で洋服店「福田屋洋服店」として創業/設立。1973年3月開店のメンズFC「メンズプラザベガ」を転換するかたちで1978年に「POINT」事業を、1992年3月にレディスブランド「LOWRYS FARM」事業を開始するなど、自社独自ブランドの育成を本格化していく。なお、栃木地場百貨店の福田屋百貨店は同社の親類筋にあたるが、資本業務提携など関係はない。
アダストリア初のレディスブランド「LOWRYS FARM」(高雄市)。
2020年春夏からメンズを展開、ファミリーブランドとなった。
マルチブランド展開で急成長
福田屋洋服店は1993年3月に“魚の集まる場所”を由来とする主力ブランド「ポイント」を冠した社名に変更、1994年9月にモール向けファミリーブランド「THE WORKS(現GLOBAL WORK)」事業を開始し、1995年5月に本部を東京都墨田区に移転集約、2000年12月に株式の店頭登録(上場)を行うするなど、アパレル業界のなかでも急成長を遂げる企業として認知されることとなった。
THE WORKS前身の主力ブランド「GLOBAL WORK」(台中市)。
同社屈指の幅広い年齢層をターゲットにさだめたブランドだ。
その後も2001年3月に同社の主力となる新ブランド「GLOBAL WORK」「HARE」「Heather」事業を開始、積極的な国内外への店舗展開を経て、2004年2月に東証一部(現東証プライム)上場を果たした。
モード系ファッションブランド「HARE」(川崎市)。
積極的なM&Aで国内アパレル業界3位に
ポイントは2013年9月のグループ各社経営統合及び持株会社制移行にともないラテン語の格言“Per aspera ad astra”を由来とする新ブランド「アダストリアHD」に社名変更。2014年11月にはグループ統合WEBストア「.st(ドットエスティー/現and ST)」を開始し、実店舗/各ブランド間とECの相互送客強化を図った。
持株会社となったアダストリアHDであったが、2015年3月に主要子会社2社(ポイント/トリニティアーツ)を吸収合併するかたちで事業会社に復帰、同年6月に「アダストリア」に社名変更していた。
トリニティアーツ系レディスブランド「STUDIO CLIP」(山形市)。
旧社名はスタジオクリップ、ブランド名はスタディオクリップ。
アダストリアは国内同業首位(ファーストリテイリング)と同業2位(しまむら)に次ぐ事業規模であるが、両社を上回る「マルチブランド戦略」の一環として、2024年6月に飲食会社「ゼットン」への出資比率を引き上げ完全子会社化、7月にはDEAN&DELCA運営会社「ウェルカム」からライフスタイル雑貨店「TODAY’S SPECIAL」「GEORGE’S」を新会社に承継するかたちで取得するなど、積極的なM&Aによる事業多角化を実施。
あわせて、資本関係をもたない非グループ店舗(Wacoal・PEACH JOHN・MATY QUANT・FANCL・Zoff・DEAN&DELCA・靴下屋など)を自社プラットフォーム「and ST」に参画させることで、小売業からの脱却とプラットフォーマーへの変革を推し進めた。
持株会社化でOMO戦略深化めざす
アダストリアの持株会社体制移行は「各事業の魅力や収益力を可視化し、迅速な経営判断を可能とすること」を目的としたものであり、同社グループ実店舗(約1,500店舗)とデジタルプラットフォーム(and ST/会員数2,060万人超)融合(OMO)により「ファッションとライフスタイルのワクワクを国内外に広げる“Play fashion!プラットフォーマー”として新たな購買体験を創出」するとしている。
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