岩手県北上市と不動産大手「リオ・ホールディングス」(本社:東京都千代田区)系「リオ・コンサルティング」(本社:同上)は、北上市内の複合商業施設「ツインモールプラザ北上」再生に向けた基本協定を2025年10月6日に締結した。
ツインモールプラザ北上は同協定に基づき、北上市出資の第3セクター「北上都心開発」(本社:岩手県盛岡市)からリオ・コンサルティングに同年12月15日を目処に運営移行、2026年春を目処に新施設として新装開業する。
さくら野百貨店北上店。
北上市を代表する複合商業施設「ツインモールプラザ」
ツインモールプラザ北上は、1993年11月設立の組合「北上市本通り・新穀町地区市街地再開発組合」施行による再開発事業の一環として2000年3月に開業。
再開発組合は発足当初、岩手地場老舗百貨店「川徳」(本社:岩手県盛岡市)を核とする都市型複合商業施設の開業をめざす方針であったが、1997年8月に川徳が再開発事業より撤退したため、同年10月に流通大手「マイカル」(本社:大阪市中央区)出資の東北地場百貨店連合「ダックビブレ」(本社:仙台市青葉区/後のエマルシェ)を代替に施設整備を進めることとなった。
建物は同方針に基づき1999年3月に着工、2000年2月に竣工したもので、鉄筋コンクリート造(RC造)地上8階建、延床面積は87,093㎡。北上市出資の第3セクター「北上都心開発」が施設全体の管理運営を担う。
核店舗「北上さくら野」、開店時は「北上ビブレ」だった
ツインモールプラザ北上の核店舗「ツインモールプラザ北上さくら野(TMさくら野)」は、2000年3月にマイカルグループ系百貨店「北上ビブレ」として開業。建物は地上8階建で営業フロアは1~4階、店舗面積は㎡。
北上ビブレ開業当初は、百貨店直営フロアを核に系列複合映画館「ワーナーマイカルシネマズ北上」やスポーツクラブ「エグザス北上」を併設するなど、時間消費型商業施設に強みをもつ親会社のノウハウを活かした売場を展開した。一方、2001年9月の親会社の民事再生法適用にあわせて同店運営会社も連鎖的に経営破綻したため、2002年5月にダックビブレ設立母体にあたる不動産会社「武田」(本社:青森市)など地場複数社出資による新体制に移行。同年10月にマイカルグループから正式に独立したうえで「さくら野百貨店北上店」として新装開業することとなった。
さくら野百貨店北上店。
北上さくら野、紆余曲折経て第3セクター傘下に
さくら野百貨店北上店は2002年10月の新装開業を機に経営再建に向けた営業改革を本格化。2005年4月には武田が過半数出資する新会社「さくら野東北」(本社:仙台市青葉区→青森市/現さくら野百貨店)に運営移行し、高島屋との業務提携に基づく「高島屋ハイランドグループ」(2025年10月現在は解散)を冠した販促を行うなど、若年層向けファッションビル色の強い旧ビブレから高級志向を高める戦略に方針転換した。
一方、同戦略は2017年2月のさくら野百貨店仙台店運営会社「エマルシェ」自己破産や高島屋との業務提携解消、北上市商圏の競争激化や高齢化により見直しを迫られることとなり、2018年3月に直営食品スーパーを岩手地場大手生協系食品スーパー「いわて生協ベルフ北上」に転換、ドラッグストア「アサヒドラッグ」やアウトドア用品店「好日山荘」を導入するなど、都市型ショッピングモール色を再び強めることとなった。
2018年3月に新装した「さくら野百貨店北上店」。
大型専門店「Belf」「Seria」「DAISO」の看板が目立つ。
さくら野百貨店北上店は、2020年代初頭の感染症拡大を背景として武田傘下から独立、2023年8月14日に新会社「いわて北上リテールマネジメント」に事業承継(分社化)したうえで同年8月31日に北上都心開発が同社全株式を取得、同年9月1日より現名称/現体制に移行した。
北上都心開発、さくら野承継で経営悪化
ツインモールプラザ北上全館の運営会社となった北上都心開発は、2021年4月に西館1~2階を北上市保健子育て支援複合施設「hoKko」に転換、2024年秋には半導体営業拠点「東京エレクトロンFE北上ステーション」を従来の4階レストラン街跡に加えて3階大部分に増床するなど、西館土地建物の北上市への一部売却や東館商業フロアの集約及びオフィスフロア転換といった取組みにより百貨店存続を図った。
一方、北上都心開発は百貨店事業承継にあわせて約1.5億円の借入れを実施、6期連続営業赤字となるなど経営悪化が深刻化しており、施設運営継続が極めて困難な状態に陥っていた。
市が土地建物取得、リオ社主導でオフィスを大幅拡大
北上市は「北上都心開発の経営破綻によるツインモールプラザの機能停止を避け、円滑かつスピードある移行によって、テナントの事業と雇用の継続を確保」することなどを目的に、北上都心開発及び地権者27名より区分所有権を約9億4000万円で取得。2025年4月22日に非公開での市議会全員協議会を開催、5月28日の北上市議会臨時会議で「ツインモールプラザ再生事業」に向けた補正予算審議を可決、6月9日に公募型プロポーザルを公告するなど、北上都心開発に代わる新たな運営事業者選定を急いだ。
北上市によるツインモールプラザ北上再生に向けた取組みの一環として、2025年10月6日に新たな運営事業者「リオ・コンサルティング」と基本協定を正式締結、12月15日に新事業者に運営移行し、2026年春を目処にリオ・コンサルティング主導のもと新装開業する。
ツインモールプラザ北上の運営体制変更にともない、TM北上さくら野の親会社でもある北上都心開発は運営撤退、新事業者による「市場の需要に基づくビルの最大限の活用による最大の経済効果」を意識したオフィスフロアが半数近くを占める複合施設として生まれ変わることとなる。
なお、開業以来の主要テナントである複合映画館「イオンシネマ北上(旧ワーナー・マイカル・シネマズ北上)」も2026年2月に契約期間満了見込み(更新未定)であり、市中心部での役割を大きく変えることとなりそうだ。
関連記事:さくら野百貨店、北上店を2023年8月に分社化ー建物管理者の子会社化で実質「三セク百貨店」に
関連記事:メイプル、2023年4月閉店-水沢駅近くの旧ジャスコ、奥州市が再生を検討
関連記事:盛岡バスセンター、2022年10月4日リニューアル開業-飲食街やホテル、温浴施設も併設
関連記事:しらゆりセントラルモール、2022年9月23日開業-旧北上済生会病院跡地、ユニバース北上花園町店を核に
関連記事:スーパーアークス北上店、2022年7月14日開店-北上ショッピングプラザの核店舗、ビッグハウス業態転換で