宮城県仙台市青葉区の「さくら野百貨店仙台店」を運営する株式会社エマルシェ(本社も同地)が、 2月27日に仙台地方裁判所に自己破産を申請した。
さくら野百貨店仙台店は同日朝より閉鎖されている。
閉店告知を見る人々(2月27日)。
丸光百貨店が起源、ミュージックサイレンで親しまれる
さくら野百貨店仙台店は「丸光百貨店」として1946年6月に仙台駅前のバラックに開業。
その後、丸光百貨店は石巻(移転後、現:石巻市役所ビル)、釜石(のちのニチイ釜石店→閉店)、気仙沼(のちのイコーレ気仙沼→閉店)、郡山(現:エリートビル)、八戸(現:さくら野百貨店八戸店、資本関係はない)に出店したほか、スーパーマーケット「トーコーチェーン」(1995年に自己破産)の運営も開始した。
1953年から1987年まで続いた屋上からの「ミュージックサイレン」は、長きに亘って仙台市民に親しまれた。
ニチイ(マイカル)との提携で一度破綻、再生はかるも…
丸光は1978年に東日本の百貨店4社(イチムラ(長岡市)、カネ長武田百貨店(青森市)、山田百貨店(福島市)、小美屋(川崎市))とともにニチイグループ(のちのマイカル、SATYなど運営)と業務資本提携し「百貨店連合」を設立。1982年にはこれらの百貨店5社が合併した「ダックビブレ」の運営となり、その後は店名を「ダックシティ丸光仙台店」、「ダックビブレ仙台店」、「仙台ビブレ」と改めた。
しかし、マイカルグループの民事再生法申請に伴い、2001年9月にダックビブレも民事再生法適用を申請。ダックビブレは2002年9月に「さくら野百貨店」と社名を変更、仙台ビブレは「さくら野百貨店仙台店」として再スタートを切り、2004年からは大手百貨店「高島屋」との提携も開始した。
民事再生手続きの終了に伴い、2005年4月には青森店など他店を「カネ長武田百貨店」を源流に持つ「さくら野東北」(のちに社名を「さくら野百貨店」に)として分離。
さくら野百貨店仙台店は単独での運営となった。
さくら野百貨店仙台店(2月27日)。
71年の歴史に幕-負債額は約31億円
さくら野百貨店仙台店の運営会社は、2010年8月に社名を「エマルシェ」と改め、その後はブックオフ、石井スポーツ、H&Mなどを新規テナントとして導入するなどの経営改革を行っていた。2016年には、開店70周年記念イベントが開催されたばかりだった。
店舗は綺麗に改装されていたものの、度重なる増築を繰り返しているために老朽化が深刻で、耐震性の問題も経営破綻の遠因になったとも考えられる。
閉店を知らせる貼り紙。
負債額は約31億円、店舗は2月27日から閉鎖されているが、一部テナントは営業を継続している。
レストラン街は閉鎖に。
さくら野百貨店仙台店で当面営業を続けるテナント
- ドコモショップ
- 楽天モバイル
- 伊藤豆屋
- 宝くじチャンスセンター
- H&M
- ゼクシィ
- ニットソーイング倶楽部
- 石井スポーツ
- エルセーヌ
- ブックオフ
- 佐藤貴美枝ニットソーイングクラブ
(2月27日現在)
H&Mは営業中(2月27日)。
さくら野の他店とは「資本関係なし」、他店は営業継続
先述の通り、さくら野百貨店のそのほかの店舗は、かつてマイカルの資本が入り同一企業となっていたために屋号を同じくしているが、現在は青森市に本社を置く「カネ長武田百貨店」を起源とする「株式会社さくら野百貨店」が運営しており、仙台店との資本関係は無く、これまでと変わらずに営業を継続する。
なお、さくら野百貨店仙台店が発行した商品券やポイントなどについては、現在の「さくら野百貨店」4店舗(青森、弘前、八戸、北上)での取り扱いを継続するほか、エマルシェ発行の百貨店商品券は今後も全国で使用できる。
さくら野百貨店青森本店(カネ長武田百貨店)。
寝耳に水の閉店「駅前で便利だったのに…」
さくら野百貨店仙台店の経営破綻は、地元民にとっても寝耳に水であった。
停止したエスカレータ。地下鉄連絡口も封鎖された。
仙台駅に直結していたため、「駅前で便利だったのに」(40代女性)と話す人や、近年はテナントの導入により若者客も増えていただけに「テナントしか利用しないけれど残念」(10代男性)という声も聞かれた。
27日より一部テナントのみの営業となっている店内は、売場に柵が設けられるなど、前日までの状況とは一変した。
さくら野百貨店仙台店の店内(2月27日)。
外部リンク:さくら野百貨店仙台店
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