経営再建中の百貨店「中三」(青森県青森市)が、2016年10月6日に北東北を中心に飲食店事業などを手がける「MiK」の傘下となることが発表された。中三青森本店。
青森の呉服系百貨店、かつては北東北3県で展開
中三は1896年、五所川原市に呉服店として創業。
1950年に株式会社化、1962年には中三弘前店を開業。百貨店としての営業を本格的にスタートさせた。
その後、1974年にはJR青森駅前に青森店(1981年に本店化)、1981年には盛岡・川徳旧店跡に盛岡店、二戸店(1983年閉店)を開業させるなど、北東北の主要都市の中心市街地に積極的に進出した。
1997年には秋田市御所野ニュータウンの「イオン秋田ショッピングセンター(現:イオンモール秋田)」に郊外型百貨店となる秋田店を出店し、当時画期的であった総合スーパーと百貨店の2核1モール体制を築いた。
かつて中三が出店していたイオンモール秋田。
また、同年に中三創業の地である五所川原市に開業した地元主導型ショッピングセンター「エルムの街」では、テナントとしての出店こそなかったものの、計画段階において当時の中三・中村伸太郎会長が「市外への消費人口流出を阻止するための一大プロジェクト」と位置づけ、のちに運営に関わることとなる地元商店主達に対し積極的に勉強会などを開いていた。
業績不振で閉店相次ぎ、2011年には震災の影響で倒産
しかし、中村会長が開業に携わったエルムの街が順調に業績を伸ばす一方で、中心市街地の五所川原店は業績不振に陥り、2006年に閉店。中村会長が提唱した五所川原市外への消費人口流出は免れたものの、集客を奪われた創業店が店をたたむという皮肉な結果を招いた。その後、イオンモール秋田に出店していた秋田店も業績不振のため2008年に閉店した。
さらに、2011年3月11日に発生した東日本大震災の3日後の3月14日に盛岡店で地震の影響とみられるガス爆発が発生。年商の約3割を占めていた同店が営業休止に陥ったことは、兼ねてより経営状況が悪化していた同社にとっては致命傷となった。青森店、弘前店も震災の影響で売上が落ち込み、3月30日に民事再生法の適用を青森地裁に申請・受理され、中三は倒産した。
旧盛岡店は現在、複合商業施設「ななっく」となっている。
「MiK」傘下で本格再建へ
中三百貨店は2011年4月14日に民事再生手続きを開始。日本百貨店協会は退会となり、百貨店としての地位は失った。その後、7月29日には投資ファンド「フェニックス・キャピタル」とスポンサー契約を締結し、同社の子会社となった。
経営再建に当たって、中三は盛岡店の閉店と青森・弘前両店への経営資源の集中、弘前店の改装を進めた。
2015年2月には再建手続きが終了し、中三は新たな支援企業を模索していた。中三弘前店。百貨店としては非常に前衛的なデザイン。
新たな支援企業となる「MiK」は、青森市に本社を置き、北海道・東北地方などで「カプリチョーザ」をFC運営しているほか、北海道・北東北を中心に飲食店や八甲田温泉などでのホテル運営など、多岐に渡る事業を行っている。
MiKはフェニックス・キャピタルからの株式譲渡契約をすでに済ませており、今後は中三を完全子会社する。これにより、中三は本格再建への道を歩むこととなる。
なお、完全子会社化後も「中三」の屋号は維持され、青森・弘前の両店も継続して営業する。
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