夕張市は、「夕張線」(JR石勝線夕張支線)の廃線を認める方針を明らかにした。
JR夕張駅(Googleストリートビューより)。
後ろのビルは「ホテルマウントレースイ」。
1892年開通の歴史ある路線
JR石勝線夕張支線は北海道炭礦鉄道の路線として1892年に開通。1906年に国有化。
その後、1981年10月の国鉄石勝線(新夕張-新得間、札幌方面から帯広方面の高規格短絡路線)開通に伴い、夕張線は「石勝線夕張支線」となった。当時の夕張市の人口は約4万人。奇しくも夕張市の石炭産業終焉に繋がる原因の1つとなった「北炭夕張新炭鉱ガス突出事故」が起こる数日前の開通であった。
当時の夕張駅は市街地の北側にあったが、石勝線開通後の2度の移転にともない、現在は市街地南側のスキー場入口に移転(2.1km短縮)。路線延長(営業キロ)は16.1kmとなっている。
なお、現在も地元では「夕張線」の通称(旧名)で呼ばれることが多い。
JR新夕張駅。石勝線との接続駅、夕張市内の南側に位置する。
(Googleストリートビューより)
民営化後、輸送密度が10分の1以下に
北海道新聞によると、JR転換前の1985年度の輸送密度は1187人/kmだったのに対し、2014年度には117人/kmまで減少。2014年度の営業係数(100円の収益に必要な費用)は1421円だったという。
夕張市側は廃止容認の条件として、バス転換後の代替交通構築への協力を求めるとともに、JRが市内に所有する土地(主に鉄道用地)の無償譲渡、夕張市へのJR北海道社員派遣などを提案する方向だという。
新夕張駅・平行バス路線・高速バス路線を生かす形での
持続可能な「公共交通網再構築」が最善
現在の夕張市の人口は約8,000人。人口密度も全国の市の中で最低となっている。
広大な夕張市ではあるが、夕張線の沿線は全線に渡って道路が並行しており、鉄道に並行する路線バスや、市内から札幌に直通する高速バスも運行されている。
夕張線の運行本数は2016年3月改正で大きく減便され、2016年夏現在で僅か5往復。乗客数もあまりに少なく、鉄道として存続するのは困難であろう。
一方で、夕張市の高齢化率は約44パーセント、平均年齢は57歳と、いずれも全国の市のなかでワースト1となっており、公共交通の確保は必須である。
JR側の廃止表明よりも先手を打つかたちとなった夕張市。
しかし、例え夕張線が廃止されても、「夕張」の名は鉄道路線図に残り続けることになる。今後は、同市南部に位置しており石勝線の特急停車駅である「新夕張駅」を交通網の拠点とし、並行するバス路線を取りこむかたちで、また札幌に直通する高速バス路線の増発なども検討することで、地元の人がより便利で使いやすいかたちでの、「持続可能な」バス路線網の再構築を行うことが最善であろう。
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追記:JR北海道は2019年にも夕張支線を廃止する方針を発表した。
外部リンク:JR北海道
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