【熊本地震】「九重”夢”大吊橋」7月末まで無料化-地震後の客激減で

大分県九重町は、熊本地震に伴う観光客の激減を受けて、同町のシンボルである「九重”夢”大吊橋」の通行料金を6月1日から7月31日まで無料にする。
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九重”夢”大吊橋。

町民の”夢”を乗せた吊り橋

大分県九重町は由布市湯布院町に隣接、熊本県との県境に位置する人口約1万1000人の温泉観光地で、中心駅は久大本線の豊後中村駅。
「九重”夢”大吊橋」は2006年10月に開通した歩行者専用橋で、紅葉の名所「九酔渓」と日本の滝百選の1つである「震動の滝」が一緒に見られる景勝地「鳴子川渓谷」の標高777m地点に架かっている。
長さは390m、川床からの高さは173m。通行料金は1人往復500円。
もともと観光橋をかける構想は1950年代からあったものの、長年「夢のような話」と言われており、それが名称の由来にもなったという。
吊り橋の総工費は約20億円で、そのうち九重町の総事業費は約8億円だった。
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九重”夢”大吊橋から見た震動の滝。

「無駄」と言われるも大盛況、町民生活支える人気施設

九重”夢”大吊橋は建設当初在京マスコミから「無駄な公共事業」などと揶揄を受けたが開通直後から大人気を呼び、特に紅葉の時期は大渋滞を引き起こすほどの状態となった。
橋の開通後に近隣の温泉地は大いに賑わいを見せ、初年度の年間集客数は年間目標の約8倍である約230万人。
2年目も集客力は衰えず、九重町が吊り橋の建設のために国から借りた地域再生事業債7億3000万円は、開通から僅か2年で完済してしまった。
2007年に大銀経済研究所(大分銀行)が大分大学と共同で行った調査によると、大吊橋が及ぼした経済効果は356億円にも達するという。
橋の通行料収入によって財政が豊かになった九重町では、町内在住の中学生以下の医療費が無料化され、町営ケーブルテレビやブロードバンド網の整備が行われるなど、文字通り「町民の生活を支える吊り橋」となっていた。
最近の来客数は1日平均で千数百人ほどで推移。開通10年目となる2016年内には来客数1000万人を達成する予定だった。
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賑わう九重”夢”大吊橋。

しかし、4月16日の熊本地震本震後からは客が激減。
昨年の4月は42,283人の客が訪れたものの、西日本新聞の報道によると4月21日の客は僅か2人で、過去最低を記録した。
地震後は町内の宿泊者数も例年の16パーセントほどとなっており、 観光の起爆剤として無料化を決めたという。
九重町では、橋の無料化により周辺観光地にも客を呼ぶことで、 観光復興の起爆剤としたい考え。
「九重”夢”大吊橋」の長期無料化は開業以来初となる。
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再び賑わう観光施設となれるであろうか。

外部リンク:九重”夢”大吊橋
参考文献:大銀経済経営研究所(2008):九重”夢”大吊橋の地域経済効果.おおいたの経済と経営 (210),pp.1-9.

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