佐賀玉屋、京都の不動産会社への経営譲渡を2023年12月発表-建替え含めた経営再建へ

佐賀県佐賀市の百貨店「佐賀玉屋」は、京都府の不動産会社「さくら」への経営譲渡を2023年12月11日に発表するとともに、2024年春以降に老朽化した本館の建て替えに取り組むことを発表した。
これにより、200年以上続いた創業家・田中丸家による経営に終止符を打ち、新体制に移行して経営再建に取り組む。

建て替えを発表した佐賀玉屋本館。

200年以上の歴史を誇る「玉屋」、百貨店化90年

佐賀玉屋は1806年に肥前国小城(現在の佐賀県小城市)で荒物商として創業、1933年12月に佐賀市呉服町商店街に百貨店として開店。1965年に中心商店街から佐賀中央大通り(駅前通り)の現在地に移転し、1980年に新館(現在の南館)を開業。1992年に新館を建設(本館と一体化増床)、ピーク時の1996年には165億円の売り上げを誇り、長年にわたって佐賀県内唯一の百貨店として親しまれてきた。
現在地下1階・地上7階建の本館(本館と一体化されている新館)・南館2館体制の営業で、売場面積は16,000㎡となっている。

佐賀玉屋南館。今後は南館での営業となる。

耐震問題が課題となるなか、コロナ禍で空き床増加

佐賀市では21世紀に入って以降「モラージュ佐賀イオン佐賀店(開業当時はイオンスーパーセンター佐賀店)ゆめタウン佐賀(2016年に増床)」イオンモール佐賀大和(2006年に増床)」といった近隣地域に郊外型の大型商業施設が続々と開業。加えて佐賀県内の人口減少、1時間程度でアクセス可能な福岡市内への買い物客の流出に加え、中心商店街エリアでは2005年に窓乃梅寿屋、2013年にはマルキョウが閉店、さらに2018年7月には駅前の核であったJR佐賀駅前の総合スーパー「西友佐賀店」が閉店する(跡地は2020年6月に「コムボックス佐賀駅前」が開業)など、中心市街地の求心力低下といった商環境の変化が生じていた。
こうした環境の変化に対応し、本館7階の呉服専門フロア「和のフロア」や、2015年から2016年にかけて行った本館1階などの各階リモデルを行ったり、食品売場の全面刷新、南館6階に室内遊園地「USキッズランド」の導入などといった営業面でのテコ入れや、内部でも2021年から佐賀県の補助金支援を受け業務のDX化を進めて来たが、コロナ渦で経営環境がさらに悪化。コロナ禍以降の約3年間で婦人服や化粧品を中心に約30テナント以上が撤退し、撤退後の新たなテナントの導入も難航。今年(2023年)8月には南館7階のレストラン街が全面閉鎖となった

2023年8月に閉鎖された南館レストラン街。

2023年12月時点で、佐賀玉屋では本館7階、南館6階・7階が全面閉鎖中のほか、南館4階の大部分が事務所転用、本館3階・4階もフロアの約半分が閉鎖に追い込まれている。
2023年にはピーク時の3分の1である約46億円までに売り上げが低下し、債務超過に陥っていた。また、2017年に佐賀県と佐賀市が実施した大規模建築物の耐震診断結果では本館が震度6強以上の大規模地震で倒壊または崩壊する危険性が高いと判断され、本館の耐震化対策と長年経営面で厳しい状況が続いていたこともあり、今後の対応が注目されていた。

2022年8月から閉鎖中の南館6階。

関西が地盤の「さくら」、百貨店経営に初進出

今回経営を引き継ぐ予定の京都市の不動産会社「さくら」は、1994年に京都市で設立。本業の不動産事業に加え近年は他業種のM&Aを加速させており、これまでには貸衣装店「紫増」の買収や、今年10月にはスポーツ用品店「スポーツ館ミツハシ」を事業承継している。
一方で、それらはいずれも関西の企業であり、同社にとって九州での事業展開は初めてになる。

創業家は退陣、「本館建替え」で当面は南館に集約

今後、佐賀玉屋は老朽化した本館を取り壊し、時期は未定としつつもオフィスビルやホテルといった複合的な形で新たにビルの建設を検討している。
本館の建て替え中は売場を南館に集約し、「佐賀玉屋」の名前も変更せず、百貨店としての営業を継続する。現社長である田中丸雅夫社長は退任し、新社長はさくら側から派遣される予定。なお、田中丸家は佐世保玉屋(佐世保2フロア、長崎1フロアで営業継続中)の経営もおこなっている。

2フロアのみとなった佐世保玉屋は田中丸家の経営が続く。

今回の佐賀玉屋の経営再建発表に伴い、メインバンクの佐賀銀行、佐賀共栄銀行は両行合わせて約30億円程度ある債権の一部放棄を発表したが、引き続き経営再建に関わる見通し。また、佐賀県も制度融資の貸付分の債権放棄を発表した。
なお、従業員144人の雇用と友の会の継続も発表しており、これまで同店が発行した友の会お買い物券、商品券や全国百貨店共通商品券といった金券類やポイントカードは通常通り利用できる。

地方百貨店の再生モデルとなれるのか?

佐賀玉屋は2023年12月17日に丁度「百貨店開店90周年」という節目を迎えるが、その直前の経営譲渡の発表となった。
佐賀駅近くでは2020年6月に西友佐賀店跡にショッピングセンター「コムボックス佐賀駅前」の開業に加えて同年のサイゲームス佐賀ビル完成、そして2023年4月にはJR佐賀駅ビル「えきマチ1丁目佐賀」の西館が「サガハツ」として改装オープンするなど、中心市街地活性化の動きもある。
今後迎える創業100周年に向けて、中心市街地の中核的商業施設としてどのように変貌するのか、また地方百貨店の新たな再生モデルになれるのかどうかが注目される。

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