リムふくやま、2020年8月30日閉店-旧・福山そごう、ごく一部のみ活用へ

広島県福山市のJR福山駅西側にある複合商業ビル「リム福山」(エフピコRiMふくやま)が、2020年8月30日に閉館する。

リム福山。

なお、核店舗のミスターマックスは閉店に先駆けて8月16日限りで閉店する。

そごうのなかでも特に豪華な店舗だった

リム福山は大手百貨店「福山そごう」として1992年4月29日に開店。
建物は地上9階・地下2階、店舗面積は34,440㎡(そごう27,222㎡)。出店地は福山駅西側、駅から徒歩6分の工場跡で、建物はそごうグループが、土地は元々この場所に工場を構えていた山陽染工が所有していた。

福山そごう。(提供:黒崎そごうメモリアル

キャッチフレーズは「夢発信、素敵が集うミュージアム」で、福山市では駅前に地場百貨店「天満屋」(本店:岡山市)があったため、そごう各店のなかでもとくに豪華な造りの店舗となった。

中央の吹き抜け。(提供:黒崎そごうメモリアル

当初の商圏は北は松江市、南は今治市までを収める計画であり、当初年商は350億円・将来的には年商600億円台を目標、さらにJR福山駅前の伏見町(天満屋の北側)にも同規模のそごう店舗を出店するとしていたが、実際の年商は200億円台に留まり、そごうの経営破綻に伴い2000年12月に閉店した。伏見町の再開発は2020年時点でも実施されていない。
なお、閉店により一部の百貨店向けテナントは天満屋へと移転した。

天満屋が再生するも10年で再閉店

福山市長はそごうの破綻は福山市側にとって「落ち度が無いにも関わらず降って沸いた天災のような難題」(福山市長)であるとし、当初は破綻処理に関わらない方針であったが、入居する企業が見つからないことから結局は市が建物を約26億円で買い取り、また土地所有者の山陽染工は土地を福山市に寄贈することとなった。
市が購入したことにより家賃が減免されたことで、閉店から約2年半後の2003年4月にようやく「天満屋」が10年契約で出店。同社のファッションビル「福山ロッツ」となった。 
福山ロッツ。

福山ロッツは天満屋が運営する百貨店とファッションビルの中間業態として営業することとなり、豪華な内装などはある程度維持されることとなった。

エントランス。2階にはモロゾフも。


中央の吹き抜け。

福山ロッツには中国地方初の「コムサストア」を核に、米国の大手アパレル「GAP」、イズミの高級ブランド店「エクセル」、地場大手書店「廣文堂」、雑貨・書店「ヴィレッジヴァンガード」、雑貨店「ロフト」(2007年から出店)、雑貨店「Francfrancfranc」、子供服ミキハウスの旗艦店「MIKI HOUSE こどもぱぁく」、天満屋の食品売場、地場大手家具店「小田億」(のちに天満屋の家具売場)、「福山市立ふくやま書道美術館」、フードコート、レストラン街などが出店。中国地方初のテナントも少なくなく、百貨店系の都市型ファッションビルとして当初は賑わいを見せた。

コムサストア福山。

地階・キッチンガーデン。天満屋が運営。


2階。ファッションフロア。


5階・福山ロフト。天満屋に移転した。


8階・レストラン街。まだ多くのテナントがあった頃。

しかし、駅から少し距離があるうえ、2007年11月に駅構内の商業施設「さんすて」がリニューアルしたこと、郊外ショッピングセンターの増加などを受け、売上の低下から10年間の営業を以て以降の契約を更新せず2013年4月に閉店。一部のテナントは天満屋へと移転した。

ロッツからリムへ-近年はテナント撤退が相次ぐ

福山ロッツの閉店後、2013年4月(9月までは暫定営業)に大和ハウスグループの「大和情報サービス」が運営する「リム福山」(エフピコがネーミングライツを取得し「エフピコRiMふくやま」)として営業を再開した。

リム福山・エントランス。


中央の吹き抜け。

地下は家電量販店・ディスカウントストア「ミスターマックス」の生鮮導入(総合スーパー)業態となり、コムサストアは縮小されたものの「コムサスタイル」として継続出店することとなった。
そのほか「くまざわ書店」、100円ショップ「セリア」、ファミリーレストラン「サイゼリヤ」、家具「ナフコ」などが出店、また「ヴィレッジヴァンガード」、「福山市立ふくやま書道美術館」などが継続出店した。
公共施設も拡大され、福山市男女共同参画センター、少年サポートセンターふくやま、子育て応援センター、ひろしましごと館福山サテライト、ものづくり交流館などが設けられた。

リム福山イメージキャラクター・リムムン。


公共施設・ものづくり交流館。

しかし、ロッツに比べて郊外型店舗が増えたことによりテナント構成の見劣り感は否めず、開店直後からコムサ、ナフコ、any SiSなど有力テナントの閉店が相次いだほか、川の流れるレストラン街はほぼテナントを埋められない状態であった。
郊外店と直接バッティングするテナントが増えたこともあり、2018年ごろからは下層階にも穴埋めとして物販以外の店舗の出店が相次ぎ、売場は歯抜け状態となった。

2020年の1階。物販店は少なく空き床が目立つ。


川の流れていたレストラン街はほぼ空き床。

さらに、館内設備の老朽化も運営上の大きな課題となった。照明や空調など多くの設備はそごう時代のものを引き継いでおり、現在の商業施設と比べるとランニングコストも高かった。
そのため、大和情報サービスはリム福山の運営から撤退することで福山市と合意、2020年8月30日の営業を以て閉店することとなった。

館内にはさよならメッセージが。

ごく小規模で再生へ-「1階だけ個人商店主体」案も

福山市は「スピード重視」の観点からリム福山のごく一部だけを用いて複合施設として再生される考え。
現時点では建物は「1階のみ」(延床6,800㎡)を活用する方針だといい、市は一例として「小規模な飲食店」「チャレンジショップ」等を入居させる案を提案している。
2020年7月からは再生に向けたサウンディング調査を開始しており、その後に新たな事業者を募集。2021年にはそれらの事業者によるプレゼンテーション大会をおこなったうえ、新事業者に駐車場を含めて一括貸借し、2022年4月の開業を目指すとしている。

リム福山の再生案(一例)(福山市)。
核店舗を設けず小規模の個人商店を多く並べている。
高知市の「ひろめ市場」のような施設を想定したものか。

一方で、福山そごう時代には近隣にダイエーなど複数のスーパーがあったものの、現在リム福山周辺の最寄りスーパーは約500メートル東(駅寄り)にあるアイネスふくやまの小型スーパー「フレスタおかず工房」であるなど周辺にはスーパーマーケットが少ない状態となっており、リム福山は周辺のマンション住民などにとって貴重な大型スーパーとしても利用されていた。

地域住民の利用が多かったミスターマックスも閉店。

そのため「プレゼンテーションなどにより選ばれた個性的な店舗」よりも大型スーパーの再入居を望む声や、利用者の多かった100円ショップや書店、ファミレスの復活など「日常生活に便利な店の差異出店」を望む声も大きいと思われる。
しかし、現時点ではそうした店舗の再出店は「望み薄」であるといえよう。
(福山そごう提供:黒崎そごうメモリアル

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