東日本大震災の影響により不通となっていたJR常磐線の相馬駅―浜吉田駅間が線路移設され、2016年12月10日に運転を再開した。
5年9ヶ月ぶりに運転を再開したJR常磐線相馬-浜吉田間。(山下駅)
内陸移設で約5年9ヶ月ぶりの運転再開
JR常磐線は上野駅(東京都台東区)と岩沼駅(宮城県岩沼市)を結ぶ全線343.1kmの路線。2011年3月に発生した東日本大震災の影響により一部区間が不通となっていたが、復旧工事の進展に伴い運転再開区間を徐々に広げている。
今回復旧したのは、相馬駅(福島県相馬市)-浜吉田駅(宮城県亘理町)間の約23.2kmで、この区間での運転再開は約5年9か月ぶり。当初は2017年中の復旧を目指して工事が進められていたが、早期の営業再開となった。
今回の復旧区間のうち、駒ヶ嶺駅-浜吉田駅間の約14.6kmは津波対策として線路を最大1キロほど内陸に移設。合わせて同区間内の新地駅(福島県新地町)、坂元駅(宮城県山元町)、山下駅(山元町)の3駅も内陸に移設されており、移設区間の約4割が高架区間となっている。
山下駅では始発列車が出発する午前5時40分すぎに出発式典が挙行されたほか、新地駅の開通記念式典には安倍総理大臣や震災時に列車の乗客の避難誘導にあたった警察官も出席した。
仙台駅との直通列車も復活、観光面にも期待
また、相馬駅-浜吉田駅間の運転再開に伴い、震災前まで運行されていた原ノ町駅(福島県南相馬市(旧・原町市)、相馬駅-原ノ町駅間は2011年12月に営業再開)と仙台駅を結ぶ直通列車も復活。
これまでの代行バス(相馬駅-亘理駅間)利用と比べて所要時間が大幅に短縮されたことにより、福島県相双地域(相馬市・南相馬市・双葉郡)と仙台都市圏間の人の流れが再び活発化しそうだ。
復活した原ノ町-仙台間の直通列車。(仙台駅)
内陸移設駅はいずれも「中心市街地」近くに移転
-開発進む各駅、山下駅前には地場ショッピングセンターも
もともと、新地町や山元町の中心市街地は従来の駅周辺ではなく、それよりも内陸にあった。そのため、今回の内陸側への線路・駅移設によって、両町の中心部に住む住民の利便性は大きく向上することになる。
両町では、今回の線路移設に合わせて新駅の駅前整備も行っており、山下駅前では地場スーパー「フレスコキクチ」、ドラッグストア「薬王堂」などが、坂元駅前ではコンビニエンスストア「ローソン」が新たに出店したほか、各駅周辺では仙台からの直通列車も走るとあって、復興住宅の整備やニュータウンの建設、公園の整備なども行われており、今後の町の発展にも大きな期待が寄せられる。
山下駅近くの高架区間を走る常磐線。
駅前には2016年10月に山元ショッピングセンターが開業。
旧駅よりも中心部に近いため、新たな街づくりが行われる。
2020年3月までに全線再開めざすJR常磐線
今回、相馬駅-浜吉田駅間が運転再開となったことにより、常磐線の宮城県内の不通区間は消滅した。
福島県内の常磐線は、2011年12月に相馬駅-原ノ町駅が、2016年7月に原ノ町駅-小高駅間が復旧するなど、徐々に運行再開区間を伸ばしてきた。
一方で、2016年12月現在も運休が続いている福島県内の竜田駅(楢葉町)-小高駅(南相馬市)間は、2020年3月までの全線再開を目指して工事が進められている。
このうち、浪江駅(浪江町)-小高駅は2017年3月までに、竜田駅-富岡駅(富岡町)は2017年12月末までに、そして福島第一原子力発電所と近接する富岡駅-浪江駅は2020年3月までにそれぞれ復旧する予定。常磐線は晴れて全線での営業再開を迎えることになる。
浪江方面に続く線路。(小高駅)
甚大な被害により、一時は全線の営業再開が危ぶまれたJR常磐線。
全線復旧に向けて、鉄路は着実に繋がりつつある。
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