大阪府枚方市の京阪枚方市駅前にあった近鉄百貨店跡地に、複合商業施設「枚方T-SITE」が5月16日に開業した。
枚方T-SITE。
西日本初となるCCCの生活提案型商業施設
「T-SITE」はTSUTAYA、蔦屋書店、蔦屋家電などのカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が手掛ける複合商業施設。
枚方T-SITEは近鉄百貨店枚方店(ひらかたサンプラザ2号館)跡地の再・再開発プロジェクトとして、「街のリビングをつくる」のコンセプトのもと百貨店を意識した施設の開発が進められた。
1階入口付近のスタバは屋外からも注文可能。
36のテナントが新規出店-今夏には「デパ地下」も
枚方T-SITEは5月16日に36のテナントが先行開業し、今夏には地階に高品質食品スーパー「北野エース」、ユニーHD傘下の惣菜専門店「e’z mart」、CCC系列の惣菜専門店「鳥ぷろ」などが出店するデパ地下フロアが開業する。
地階は夏開業予定。
1階:食マルシェ
「食マルシェ」をフロアコンセプトに、関西初進出となるフローズンバー「PALETAS」、心斎橋に本店を構える人気パンケーキ店「gram」、大阪・黒門市場発祥のワイン食堂「フジマル食堂」、京都錦市場の「錦一葉かふぇ」などが出店。
CCC直営の書籍売場でも、専門店との相乗効果を狙った料理本、料理雑貨の提案などを行う。
洒落た雰囲気漂う1階「食マルシェ」。
2階:TSUTAYA
「エンターテイメント」をフロアコンセプトに、TSUTAYAのCD・DVD販売・レンタル部門が売場を展開。
伊賀の里モクモク手づくりファーム直営の「農場ものがたりレストラン モクモク」、枚方初のApple正規販売店なども出店する。
モクモクは梅田ルクアやあべのハルカスなどにも
展開する直営農場レストラン。
3階:TSUTAYA
「BOOK&CAFE」をフロアコンセプトに、蔦屋書店とSTARBUCKS COFFEEが融合した売場を展開。
また、格安航空会社(LCC)Jetstarの航空券手配を、日本初のリアル店舗で手掛ける旅行カウンター「Tトラベル」も併設される。
天井いっぱいに積み上がる本棚が特徴的な3階。
4階:暮らしと美容
「暮らしと美容」をフロアコンセプトに、期間限定のショップを集めたマルシェ「毎日の暮らし市」、京都・小川珈琲の期間限定業態となる「OGAWA COFFEE LiMiTED CAFE」、化粧品クチコミサイト@cosmeとのコラボ店舗「T-SITE COSME 」などのテナントが出店。
「caelum(カエルム)(旧・おしゃれ雑貨のイイダ)」、「向井化粧品店」など近鉄百貨店時代から営業していた一部テナントも入居する。
5階:子どもと学び
「子どもと学び」をフロアコンセプトに、蔦屋書店の児童書コーナーが展開。大手百貨店各社に出店するセレクトショップ「レ・キャトルサンク」、北欧輸入玩具専門店「ボーネルンド」の体験型施設や、ベビー用品店、ギフトショップも入居する。
子供でも安心して本を手に取ることができる本棚。
6階・7階:銀行
6階には三菱東京UFJ銀行が、7階にはりそな銀行が入居。りそな銀行には年中無休店舗「セブンデイズプラザひらかた」が開設される。
8階:レストラン街
レストラン街には、大阪初となる台湾発祥の小籠包専門店「恵比寿 京鼎樓」、梅の花の新業態カフェ・レストラン「TSUMUGI by 梅の花」、95席のルーフテラスから枚方の街並みが見渡せるイタリアンレストラン「MEAL TOGETHER ROOF TERRACE」など3店舗が出店する。
枚方の街並みが一望できるレストラン
「MEAL TOGETHER ROOF TERRACE」。
ネットとリアル店舗の融合を目指す枚方T-SITE
-独自アプリでオムニチャネル化を推進
枚方T-SITEの開業に伴い、CCCは新たなスマートフォン向けアプリ「T-SITE Passport」の配布を開始した。
このアプリは、店舗公式サイトへのショートカットとしてだけでなく、Tカード携帯会員証、商品検索、駐車場情報など多彩な機能を備えるのが特徴。
将来的には館内レストランの予約受付と言ったサービスの拡充を目指しているとされている。
5つのボタンで完結する直感的なユーザーインターフェースが特徴
T会員証として使うには店頭でのアクティベーションが必要となる
枚方市駅周辺のTSUTAYA既存店舗も大規模再編
枚方T-SITEの開業に伴い、従来CCCが枚方駅周辺で営業していた「TSUTAYA枚方駅前本店・物販館(旧・枚方三越)」、「TSUTAYA枚方駅前本店・レンタル館(旧・枚方駅前デパート)」、京阪電車エル高架街・エル枚方の核テナント「TSUTAYA 枚方市駅前店・GAME館」では、現在大規模なリニューアルが進行中。
CCCの企業城下町とも言える枚方駅周辺のTSUTAYA店舗
T-SITE開業後も旧・物販館2階がコミック売場として、GAME館が中古メディアを取扱う売場として営業を継続しており、旧・レンタル館もCCCグループがFCとして運営するコンビニ「ファミリーマート」が入居を続けているが、旧・レンタル館、旧・物販館1階、GAME館の一部などが空き床となっていることから、売場の更なる再編・集約が予想されている。
T-SITEでは三越伊勢丹との提携は”ナシ”
-「蔦屋百貨店」大成への針路は
2015年10月、枚方T-SITEを運営するCCCと三越伊勢丹が業務提携を締結した。その際に、共通ポイントサービス「Tポイント」の導入と共に、共同での商業施設開発プロジェクトを発表していた。
関連記事:三越伊勢丹がCCCと業務提携、Tポイント導入
2014年12月開業の湘南T-SITE(神奈川県藤沢市)では伊勢丹の化粧品セレクトショップ「イセタンミラー」が、蔦屋書店横越バイパス店(新潟市江南区・グループ会社運営)では新潟三越伊勢丹の生活提案型サテライトショップ「エムアイプラザ横越」が出店するなど、業務提携以前より両者の連携の動きは見られていた。
かつて三越は枚方で直営店を営業していたこともあり、 枚方T-SITEには専門店の出店や運営に関するノウハウの投入が予想された。しかし、今回の開業で三越伊勢丹が関わることはなかった。
旧・物販館はTSUTAYA以外にも
高級スーパーや手芸専門店が出店している
CCC増田CEOが新たな百貨店像を目指し、枚方市民の「ハレの場」としての成功が期待されている枚方T-SITEであるが、現時点では既存のT-SITE2店舗(代官山、湘南)と比較しても、テナント面での差別化が不足している印象は否めず、「ライフスタイル提案型百貨店」として明確な訴求ができているとは言い難い。
枚方市駅には日常利用を重視した売り場構成で根強い支持のある京阪百貨店が存在する。4年前に撤退した近鉄百貨店の亡き跡にやってきたT-SITEが、枚方の地で「百貨店」として大成するためには、他の追随を許さない明確な指針を持つことが求められる。
地盤沈下が進む枚方駅周辺活性化への起爆剤となるか
枚方市は、2013年3月に策定した枚方市駅周辺再整備ビジョンの中で京阪枚方市駅周辺を都市の拠点として位置付けており、築40年が経過した隣接地のひらかたサンプラザ1号館再開発や、3号館(さんぷら座)のリニューアルを目指している。
枚方市駅周辺は、大阪-京都間の周辺自治体(茨木・高槻)と比較しても店舗の撤退が顕著で、2005年には枚方三越が、2011年には近鉄百貨店が駅前から姿を消していた。再開発ビル「ビオルネ」の経営破綻や、くずはモールの増床リニューアルもあり、中心部の地盤沈下に歯止めが掛からなかった。
かつては枚方ビブレも営業していたビオルネ
現在はイオンの総合スーパーと専門店が営業している
そのような危機的状況の中で、創業の地である枚方に回帰したCCC。果たしてT-SITEは枚方駅周辺の地盤沈下を食い止める起爆剤となるか、こちらも注目が集まる。
外部リンク:枚方 蔦屋書店 大阪府 枚方市 – TSUTAYA 店舗情報 – 店舗検索
プレスリリース:枚方市駅前に枚方T-SITEオープン(CCC公式サイト)