多賀城市のJR仙石線・多賀城駅前に「多賀城市立図書館」が3月21日に開館した。
多賀城市立図書館。
全国3番目のツタヤ図書館
新しい「多賀城市立図書館」はTSUTAYAなどを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が図書館の指定管理者となり、佐賀県の武雄市図書館、神奈川県の海老名市立中央図書館に次ぐ全国で3番目の「ツタヤ図書館」となった。
内観イメージ(CCCホームページより)
東北初出店の「ファミマ!!」出店、スタバも入居
多賀城駅では、第三セクターの「多賀城駅北開発株式会社」が手がける多賀城駅北地区第一種市街地再開発事業により、再開発ビルA棟、B棟、C棟が建設された。
市立図書館が入居するのはA棟の南側であり、北側の商業施設には「蔦屋書店」を中心に「スターバックスコーヒー」やレストラン「PUBLIC HOUSE」、ファミリーマートの別業態「ファミマ!!」が入居する。
「ファミマ!!」は首都圏・大阪を中心に店舗を展開していたが、この店舗が東北初進出となる。
駅前広場を挟んで正面のB棟は子育てサポートセンター、保育所等を中心としたビルで、仙石線の高架を挟んで南側のC 棟は5階建ての立体駐車場となる。
ファミマ!!。
駅周辺で進む都市機能集約-被災地・多賀城の拠点に
東日本大震災の被災地となった多賀城市では、国道45号線沿いの商業集積地である八幡や町前といった砂押川より南にある地区が津波の被害を受けた。
一方、砂押川の北側に位置する多賀城駅周辺は津波の被害を受けなかった。
JR多賀城駅。
多賀城市は2013年に策定した都市計画マスタープランの中で多賀城駅周辺を都市の拠点として位置付けており、2014年には多賀城駅の高架下に商業施設「エキト多賀城」が開業するなど商業機能の強化が進んだ。今回の一連の開発は市役所や大学も立地する多賀城駅周辺での都市機能の集約に繋がり、更なる都市の拠点化を目指す上で重要なピースとなった。
2014年開業のエキト多賀城。
真価を問われるツタヤ図書館
「ツタヤ図書館」は多くの自治体において図書館・地域を活性化させる起爆剤として期待を集めている反面、佐賀県武雄市、神奈川県海老名市のツタヤ図書館では昨年”蔵書問題””古書購入問題””分類問題”に揺れるなど、CCCの図書館運営に対する厳しい目が向けられた。
この影響から、愛知県小牧市では名鉄小牧駅前に持ち上がっていたツタヤ図書館計画が、住民投票の末に白紙化された。
武雄市図書館。
これらの問題を受け、多賀城市ではツタヤ図書館の開設に当たっては市教育委員会を諮問機関とする「図書館運営審議会」を新設する方針となった。
諮問委員会は教育関係者や企画運営の専門家などで構成され、CCCの図書館運営を調査・審議する。
一方で、今回も蔵書のうち1万冊以上が古書店のネットオフからの購入だという。また、他図書館と同様、国内ほとんどの図書館で用いられているNDC(日本十進分類法)に基づかない独特な分類方法も導入されている。
まだまだ増える「ツタヤ図書館」
今後、CCCが手がける図書館事業としては、岡山県高梁市に第4のツタヤ図書館が、宮崎県延岡市にはツタヤの運営による読書スペースのある複合施設が開館予定であるが、駅ビルへのツタヤ図書館入居構想が持ち上がっている山口県周南市では市民による反対運動が起こっている。
社会問題化した武雄市、海老名市の後に開館した「多賀城市立図書館」において市民の信頼が獲得できるかが、今後の「蔦屋図書館事業」の行方を占う上で重要な指標となろう。
外部リンク:多賀城市立図書館
外部リンク:多賀城駅北開発株式会社
外部リンク:多賀城市/多賀城市都市計画マスタープラン(PDF)
ニュースリリース:宮城県多賀城市とカルチュア・コンビニエンス・クラブの 「東北随一の文化交流拠点整備」に関する連携合意について(PDF)