東京の顔ともいうべき東京都中央区銀座6丁目に、銀座最大規模の複合商業施設「GINZA SIX」(ギンザシックス)が4月20日にグランドオープンする。
GINZA SIX。
銀座松坂屋跡、大丸松坂屋・森ビルら4社の共同開発
「GINZA SIX」は、J.フロントリテイリング(大丸松坂屋)、森ビル、L Real Estate(LVMHグループ)、住友商事の4社が共同出資した「GINZA SIX リテールマネジメント」が運営・開発を手がける複合商業施設。
2013年6月に閉店した「松坂屋銀座店」跡地とその周辺を再開発する銀座六丁目10 地区第一種市街地再開発事業によって生まれたもので、商業施設面積は約47,000㎡、敷地面積が約9,000㎡、延床面積は約148,700㎡、地上13階地下6階建。コンセプトを「Life At Its Best 最高に満たされた暮らし」とし、施設で展開される全てを高いレベルで提供するとしている。
「GINZA SIX」ロゴ。
商業フロア以外にオフィス、能楽堂、屋上庭園も
GINZA SIXの商業フロアは地下2階~6階・13階の一部。
そのほか、7階~12階・13階の一部は銀座地区では珍しい大規模オフィスとなる。
また、地下3階部分にはイベントホールを兼ねた文化・交流施設「観世能楽堂」が設けられるほか、地下4~6階を大規模地下駐車場、屋上を4,000㎡の庭園「GINZA SIX ガーデン」として活用する。
館内構成。
屋上庭園には桜などが植えられる。
1階には観光案内拠点「ツーリストサービスセンター」(ローソン併設)や、三原通りに銀座初の観光バス乗降場を開設。
銀座の渋滞対策に貢献するとともに、増加する外国人観光客にも魅力的な複合商業施設を目指す。
ツーリストサービスセンターのイメージ。
三原通り側に設けられる観光バス乗降場。
和と洋を取り入れた特徴的なデザインに
建物の基本設計・外観デザインは谷口建築設計研究所が、インテリアデザインはフランス出身のグエナエル・ニコラが担当する。
外観デザインは「ひさし」「のれん」をイメージした日本らしい外装で、美しい銀座の街を引き立てる建築になるという。
なお、開発によりかつての松坂屋銀座店本館とパーキング館の敷地が一体化され、あづま通りが分断されたため、館内に新たに通路が設置される。
中央通りより。
今までの銀座にはない241の「ブランド」を集積
GINZA SIX商業フロアのブランドスローガンは「Where Luxury Begins 世界が次に望むものを」。単なる高級品ではない、人生を豊かに充実させるための新たな価値「New Luxury」を提供することを標榜する。
GINZA SIXに出店する241ブランドのうち旗艦店級の店舗が半数を超える122を占めるほか、銀座初出店が81、新業態が65と、従来の銀座には無かった新たなブランドが進出。
中央通り側の路面店舗にはアジア初となるディオール メゾンを導入する「The House of Dior(ザ・ハウス・オブ・ディオール)(仮称)」をはじめ、「CÉLINE(セリーヌ)」、「SAINT LAURENT(サンローラン)」、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」「FENDI(フェンディ)」といった6のラグジュアリーブランドが出店する。
ブランド旗艦店が並ぶ。
そのほか、アパレルブランドとしては、2階には「FRANCK MULLER WATCHLAND」の日本4号店、3階には八木通商の「MACKINTOSH(マッキントッシュ)」、4階には「BEAMS HOUSE WOMEN」、NY発の「Theory」、「PAUL SMITH」、5階には「ノースフェイス」、「アディダス」などが出店する。
館内イメージ。
ファッション以外にも多くの店舗-レストラン街、蔦屋など
GINZA SIXには、ファッション関連以外にも多くの店舗が出店する。
地下2階はデパ地下のような食品フロアとなり、「はちみつ専門店 ラベイユ」、麹専門店「銀座 千年こうじや(仮)」、「発酵酢屋 庄分酢(仮)」、「ふふふあん by 半兵衛麩」、など個性的な店舗が出店。駅弁「峠の釜めし」で知られる「おぎのや」、白い恋人で知られる「石屋製菓」など百貨店の物産展でお馴染みの店舗が出店するのは百貨店系ならではとも言える。
そのほか、地下1階は資生堂、ゲランなど化粧品を中心とした店舗が、4階には新宿店なども人気となっているテレンス・コンランによるインテリア専門店「THE CONRAN SHOP」などが、5階にはカメラ店「ライカ」などが、6階にはTSUTAYAが運営するカフェ併設の大型書店「銀座 蔦屋書店」などが出店する。
追記:蔦屋は一般書店ではなく「アート特化の新業態」となる。
館内吹き抜けイメージ。
また、6階と13階にはレストラン街も設置され、日本各地・世界各地の味を楽しむことができる。
このレストラン街には、大阪新世界の本店を構える串かつだるまの高品質業態「だるまきわ味」が都内初出店となるほか、京都発の肉カフェ・NICK STOCKが新業態・肉パブ「GRILL & PUB The NICK STOCK」を開設する。
大丸松坂屋百貨店も新業態2店舗を出店
このGINZA SIXには、もともとこの地にあった大丸松坂屋百貨店も新業態としてGINZA SIX2階に、ライフスタイル型自主編集売場「SIXIEME GINZA(シジェーム ギンザ)」を、6階にアートギャラリー「Artglorieux GALLERY OF TOKYO(アールグロリュー ギャラリーオブトーキョー)」を展開する。
2階「SIXIEME GINZA」(150坪)の顧客ターゲットは「本質を極めた大人の女性」で、売場を「デイリータウン」「トラベルアクティブ」「コージーリラックス」「ドレスアップ」「ギフト」「プロモーション」の6ゾーンに構成、国内外から仕入れた雑貨を中心に商品提案をする。
(店名の由来はフランス語で「第6の」という意味で、第6感を刺激する売場づくりをしたい大丸松坂屋の思いが込められているという。)
また、店内什器の配置はGINZA SIXのインテリアを手掛けるグエナエル・ニコラがプロデュース、松坂屋の商標「いとう丸」からインスピレーションを受けたデザインにした。
6階「Artglorieux GALLERY OF TOKYO」(30坪)のコンセプトは「銀座で見つける人生の宝物」、百貨店ギャラリー・美術画廊と同様に常設展示は行わず、2週間毎に展示内容が変わる「企画展示」を実施。従来、百貨店ギャラリーに縁がなかった30代後半~40代にも訴求する企画展示を行う。
富裕層に照準合わせ「年会費5万円」のカードも
GINZA SIXでは施設のナビゲーションやサービス予約、イベント申込など様々な機能を備えた「GINZA SIX アプリ」をスマートフォンユーザー向けに提供する。
上顧客対象のプレミアムラウンジ「LOUNGE SIX」では、他言語対応のコンシェルジェが常駐し、施設内飲食店とコラボしたオリジナルメニューの提供などを行う。
LOUNGE SIX。
また、GINZA SIXオリジナルのクレジットカード「GINZA SIXカード」を発行。このカードは年会費5千円の「ゴールドカード」と年会費5万円の「プレステージカード」の2種類を選ぶことができる。
プレステージカードの年会費は5万円と高額だが、その特典内容は2016年12月現在明らかにされていない。しかし、銀座エリアの店舗で様々なサービス特典が受けられることで知られる「銀座ダイナースクラブカード」の年会費が2万5千円であることから、プレステージカードではダイナースクラブカード以上の“特別なサービス“が提供されるものと想定される。
「脱百貨店」は「百貨店の原点」に立ち返った売場づくりから
-GINZA SIXは新たな百貨店像を生み出せるか
GINZA SIXの運営主体の一社である大丸松坂屋は、旧松坂屋銀座店から引き続き銀座の地に「のれん」を掲げることとなる。しかし、全館を大丸松坂屋が運営していた旧店とは異なり、GINZA SIXで同社が直接運営に携わる売場は2店舗に過ぎない。
大丸松坂屋はGINZA SIXについて「従来の百貨店とは全く違う、フロア構成やブランド編成」と認識し、かつての松坂屋銀座店が作り上げた「古典的な百貨店像からの脱却」をテーマの1つとして掲げている。
実際、ショッピングアプリの導入や外国人向けサービスの充実など、変わりゆく時代背景に適合しようとする姿勢はまさに「新時代の商業施設」そのものであると言えるだろう。
しかし、GINZA SIXのフロア構成を見ていくと、地下2階はいわゆる「デパ地下」的な食物販ゾーン、1階・地階などの低層階にはインポートブランドの直営店や化粧品サロン、2階は服飾雑貨、3階~5階は婦人・紳士アパレル、5階は宝飾品、眼鏡、家具・インテリアなど、6階はレストラン街や美術画廊、書店となっており、テナント貸し中心ではありながら、まさに「古典的な百貨店」を連想させる内容だ。
銀座界隈では「銀座三越」、「銀座松屋」、「銀座松坂屋」をはじめ、「数寄屋橋阪急」「有楽町阪急」「有楽町西武」「有楽町そごう」「プランタン銀座」など、多くの百貨店が凌ぎを削って来た。しかし、長年同地の覇権を握っていた三越と松屋の牙城を崩すことはできず、その多くが専門店ビルやファッションビルへと姿を変えた。
このGINZA SIXの最大のライバルも、かつての百貨店跡地に建つ「東急プラザ銀座」だ。
東急プラザ銀座。
この東急プラザ銀座は、かつて百貨店であった「数寄屋橋阪急」(のちにファッションビルに業態転換し「モザイク銀座阪急」となる)の跡地に2016年3月に開業した。
この東急プラザ銀座では、下層階にブランド店や中層に東急百貨店による大型セレクトショップ「HINKA RINKA」こそ入居しているものの、東急ハンズの新業態など複数の雑貨店、空港型免税店、そしてレストラン街・フードコートを集客の要としており、松坂屋跡の新施設と比較すると、アミューズメント性を備えた複合商業施設としての性格が強いものとなっている。
東急プラザ7階「HANDS EXPO」
それに対し、松坂屋銀座店は1924年の開業から2013年6月に老朽化で閉店するまで、末期に大型専門店の導入はあったものの一貫して「百貨店」としてのスタンスを崩すことはなかった。 そして、銀座初の百貨店であった「松坂屋」の看板が街角から消えたあと、同地に深く根を張る松坂屋の「百貨店としての遺伝子」は、いまGINZA SIXの精神に受け継がれようとしているともいえる。
「古くて新しい」GINZA SIXは、低迷する百貨店業界の希望の星となることができるであろうか。その成否が注目される。
建設すすむGINZA SIX。
(写真以外はプレスリリースより)
外部リンク:GINZA SIX | ギンザ シックス
外部リンク:銀座エリア最大の商業施設「GINZA SIX」 2017年4月20日誕生
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