相次ぐ大規模災害で全国各地の鉄道が寸断されるなか、自由民主党は鉄道が災害に遭い不通となった場合でも路線収支が赤字であれば国が補助できるように「鉄道軌道整備法」の一部を改正する法律案を提出する方針を固めた。
熊本地震で一部が不通となっているJR豊肥本線(阿蘇駅)。
「ローカル線災害復旧議連」が提案、秋提出めざす
この改正案は「赤字ローカル線の災害復旧等を支援する議員連盟」により提案され、2017年8月1日に自民党本部で開催された「政調、国土交通部会関係合同会議」において承認されたもの。
「赤字ローカル線の災害復旧等を支援する議員連盟」は災害による被災路線を多く抱える衆議院比例東北ブロック選出から選出された菅家一郎衆議院議員らによって立ち上げられたもので、改正案は2017年秋の臨時国会への提出を目指しており、今後与野党での協議を進めるとみられる。
同法の適用が見込まれるJR只見線(会津若松駅)。
事業者が黒字でも補助対象に-国の補助率も引き上げ
現在の「鉄道軌道整備法」では、災害に遭い不通となった鉄道は鉄道事業者自体が過去3年間に亘って赤字でなければ補助の対象とならなかったが、今回の改正案では、事業者が黒字であっても、その路線が過去3年間赤字であれば復旧補助の対象となる。
また、国の補助率も、現在の4分の1以下から国土交通省が認めれば3分の1以下へと引き上げられる。なお、沿線自治体が補助をおこなう場合は、国と地方自治体がそれぞれ復旧費用の最大4分の1(合わせて最大で2分の1)を、鉄道事業者が残り半分を負担することになる。
今回の法改正に合わせ、事業者には収支の改善など長期的な運行を確保する計画の作成も求める方針だという。
「早期復旧」で災害被災地復興の促進に
法改正後の補助対象としては、水害で一部が不通となっているJR只見線(福島県・新潟県)、熊本地震で一部が不通となっているJR豊肥本線(大分県・熊本県)などが想定され、大規模災害に遭った地域の交通網の復旧を早期に進めることで地域住民や観光客の利便性を向上させ、災害被災地域全体の復興・活性化にも繋げたい考えだ。
このうち、JR只見線については施設の一部を福島県が所有する上下分離方式での復旧を目指し、調整が進められている(詳しくは関連記事を参照)。
外部リンク:「鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案」部会了承(佐藤正久外務副大臣)
外部リンク:JR只見線の早期復旧・復興に伴う「赤字ローカル線の災害復旧等を支援する議員連盟」の活動報告(菅家一郎衆議院議員)
関連記事:JR只見線、”上下分離”で復旧へ-豪雨被害で長期不通、JRと福島県が合意