2016年6月7日に閉店した「マルカン百貨店」(岩手県花巻市)の経営を引き継ぐ「上町家守舎」(花巻市、花巻家守舎が設立した新会社)が、7月31日に盛岡市のショッピングセンター「ななっく」で開かれた「マルカン百貨店を応援する会」において再開計画の進行状況の報告を行い、そのなかで、再活用は1階と6階食堂の2フロアのみとする方針を発表した。
マルカン百貨店。
営業は「大食堂」と「1階」のみに
「マルカン百貨店」は岩手県内でスーパーマーケットや書店を運営するマルカングループの中核企業の1つで、1957年に開店。花巻市内では唯一の百貨店であったが、近年はライフスタイルの変化などに伴い売上が著しく減少。耐震化工事にも多額の費用がかかることから、2016年6月7日を以て閉店していた。
マルカン百貨店の現在の建物は1973年に建築されたもので、地上8階、地下1階(7~8階は店舗事務所、塔屋など)。
マルカン百貨店の建物と運営を引き継ぐ予定の「上町家守舎」の発表によると、当初は全館の再活用を目指していたものの、実際に再活用を行うのは1階と6階のみと改め、地階、2階、3階、4階、5階は閉鎖となる。6階は大食堂、1階には複数のテナントを入店させる方針。また、事務スペースであった8階~7階を解体することで建物の自重を軽くし、耐震性を高めるという。
人気だった6階大食堂。
殆どのフロアを閉鎖とすることで、当初は約6億円としていた耐震補強や店内改修の初期投資を、3億5千万円~4億円にまで圧縮できるという。また、駐車場を有料化することで資金を確保する。再開は早くても来年以降の予定。営業が好調ならば、今後上層階へのテナントの誘致も検討するとしている。
なお、7月末現在、ビル再開に向けたクラウドファンディングには約1,200万円が集まっており、支援グッズの販売も行われているが、上町家守舎としては、主な資金は金融機関の融資と自社出資で賄う予定だという。
食堂以外は1フロア、駐車場有料化…前途多難
当初の想定通りにマルカン百貨店が新しい「大型複合商業施設」として復活することを望んでいた花巻市民は、今回の発表を少し残念に思ったのではないだろうか。
グランドオープン時に「食堂」以外に目玉となるテナントが誘致できないのであれば、初期集客も限られたものになることは間違いなく、さらに、クルマ社会である花巻市において、わざわざ駐車料金を払ってマルカン跡の新店舗に来る市民がどれだけいるか未知数であるため、名物の大食堂が「市民の憩いの場」から、「遠方からの観光客」のみをターゲットにした場所へと変わってしまう可能性もある。結果として、単独企業による将来的な継続運営は難しいものとなることさえも危惧される。
老朽化した百貨店の建物を営業再開させるだけでもその道のりは困難を極めることが予想され、多大な努力が必要となろう。そして、再開後に経営を軌道に乗せるためには、地元住民からの安定した集客ができるような店づくりにすることが課題となっていくことは間違いない。
もし無事に営業再開が実現した場合には、他フロアへのテナント誘致を行うなどし、再び賑わう施設として、そして中心商店街周辺で生活する住民が便利だと感じるような、再び長く親しまれる施設になることを切に願う。
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