仙台空港、7月1日完全民営化-東急系運営、「仙台国際空港」に

宮城県名取市の「仙台空港」が2016年7月1日より完全民営化し、愛称を「仙台国際空港」に改称した。P1040397完全民営化を果たした仙台空港。

国管理空港から東急系の第三セクター運営に

仙台空港を運営するのは、東京急行電鉄が筆頭株主で、前田建設工業、豊田通商、宮城県などが出資する第3セクター企業の「仙台国際空港株式会社」。
同社は2015年12月に設立。民営化を控えた2016年4月には、仙台空港ビル、仙台エアカーゴターミナル、仙台エアポートサービスの空港子会社3社を吸収合併していた
国内の民営空港は、成田国際空港、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港に次いで5施設目となる。
7月1日からは滑走路の管理・着陸料の徴収が開始されるとともに愛称を「仙台国際空港」とし、これまで国管理空港であった仙台空港は晴れて完全民営化を果たした。

 LCC専用棟を建設、料金体系見直し国際線増を目指す

仙台空港の年間旅客数は2015年現在で約315万人。そのうち、国際線旅客数は約17万8000人と、石川県の小松空港(小松飛行場)、北海道の旭川空港などよりも少ない。
 仙台国際空港では、今回の民営化により国の供用規定により定められていた着陸料などの空港使用料を自由に設定できるようになったため、伸び悩む国際線旅客数を増やすための起爆剤として、2016年11月からの冬のダイヤ運航に合わせて新たな料金体系を導入、旅客数に合わせ空港使用料をフレキシブルに設定することで、主にLCC(格安航空会社)国際線の就航数増加を狙う。
さらに2018年度を目途にLCC専用の搭乗棟「ピア棟」を建設し、LCC需要の受け皿を確保する予定。
これらのLCC誘致の姿勢を積極的に示した甲斐もあり、さっそく同空港初となる海外LCC「タイガーエア台湾」の誘致に成功。6月29日より台北―仙台間で週4往復の運航を開始した。P1040401現在の国際線チェックインカウンターは閑散としている。

 仙台国際空港では、東京オリンピックを迎える4年後の2020年度には410万人、さらに30年後の2044年度には550万人の旅客数を見込んでおり、「国際」の名に恥じない空港になることが期待される

商業施設も充実、面積は現在の7倍へ

これまでの仙台空港内の商業施設・飲食店等の店舗はきわめて小規模であり、空港ビルとしての魅力の低下を招いていた原因でもあった。
そこで、仙台国際空港を運営する新会社は、空港内の商業施設の充実も掲げている。
改装第一弾として、2016年度中には1階部分を改装しカフェなどを新設。さらに2018年度中には東北の魅力ある産品を扱う商業施設を開設する予定で、これまで多くの商業施設を手がけてきた東急グループの手腕が試される。P1040399現在の小規模な商業スペースは将来的に7倍まで拡大する見込み。

最終的には、商業エリアは現在の7倍ほどに拡大する見込みで、空港の「商業施設」としての価値の向上が期待される。

空港への交通網の充実も

また、今回の空港民営化に合わせる形で、空港への二次交通を整備する動きも出ている。
福島交通、会津バス、岩手県北バスなどを傘下に持つ「みちのりホールディングス」は、広域な営業エリアを生かす形で、仙台空港を起点とし、福島市を経由し会津若松まで運行する路線バスと、松島・平泉を経由し岩手の安比高原に至る観光バスを年内から運行させる方針を固めた。
仙台空港から東北各地へと繋がる二次交通網の一体的な整備は、東北観光を振興させるために必要不可欠であり、このように、民営化された仙台空港が「東北の玄関口」としての役割を確立するためには、空港だけでなく自治体や関連事業者を含めた積極的な政策が求められている。

空港民営化の動き、全国へ-高松、福岡など

仙台空港に次いで、高松空港や福岡空港などでも民営化の動きが出ている。
仙台空港では、国が空港の所有権はそのままに運営権だけを民間に売却する「コンセッション方式」により民営化を果たしたが、高松や福岡もこの方式での民営化が検討されている。
地方空港の民営化は地域の活性化にも繋がる可能性を秘めている一方で、「空港」という公共性が高い事業であるからこそ、運営の失敗は許されない。
それだけに、仙台空港での事業の成否は、全国的な空港民営化の流れにも影響を及ぼすことが予想され、仙台空港の動向は今後も注目を集めることとなりそうだ。

外部リンク:仙台国際空港

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