旧さくら野百貨店仙台店、2025年11月解体-ドンキが再開発めざす仙台駅前一等地、2017年2月の経営破綻から約8年の廃墟状態に幕

流通大手「パン・パシフィック・インターナショナルHD(PPIH)」は、宮城県仙台市青葉区の百貨店「さくら野百貨店仙台店」跡の解体工事を2025年11月より開始する。
解体工事を控えた「さくら野百貨店」(2025年10月10日)。

仙台駅前の象徴、マイカル系百貨店連合の本店格だった

さくら野百貨店仙台店の前身「丸光」は、1946年6月に宮城県仙台市青葉区の仙台駅前で創業。丸光は1953年にシンボル的設備「ミュージックサイレン」を整備するなど戦後復興の象徴として、駅前を代表する百貨店として段階的に店舗建物の増床を実施。1968年6月までに東北地方太平洋側全域(青森・岩手・宮城・福島)に支店を展開するなど店舗網を急拡大し、1978年3月には流通大手「ニチイ(後のマイカル)」主導のもと東日本百貨店4社と新会社「百貨店連合(DAC)」を設立し連合の主要企業となった。
解体工事を控えた「さくら野百貨店」(2025年10月10日)。
写真右側が「丸光」百貨店開業当初の建物にあたる。

丸光は1981年6月にDAC加盟百貨店「小美屋」と共同で神奈川県厚木市に百貨店新ブランド1号店「ダックシティ厚木百貨店」を開店、1982年3月に小美屋と経営統合、1982年9月にDAC加盟各社を経営統合したことで、1985年3月に「ダックシティ丸光」に改称、1991年3月の同社運営店舗「ビブレ」転換開始にあわせて同年10月に「ダックシティ仙台ビブレ」として新装開業(リニューアル)、1998年1月の社名変更にあわせて「ダックビブレ仙台ビブレ」となった。
仙台ビブレの運営会社「ダックビブレ」は隣接複合再開発施設「AER仙台(アエル)」に本社移転、東証上場準備や北海道への進出計画を打ち出すなど、マイカルグループ唯一の日本百貨店協会加盟企業として存在感を示したが、2001年9月の親会社民事再生法適用申請にあわせて連鎖倒産するなど信用力が大幅に低下した。

高島屋やOPAと連携、武田さくら野と再統合も失敗

ダックビブレ仙台ビブレは、2002年5月に運営会社設立母体の一角を占める青森地場不動産会社「武田」など地場複数社出資による経営体制に刷新。同年10月にマイカルグループから正式に独立したうえで「さくら野百貨店仙台店」として新装開業することとなった。
さくら野百貨店仙台店は、2005年4月の仙台店設備管理事業及び地方店舗の分社化後も従来通りの都市型百貨店としての経営体制を維持しつつ、高島屋との業務提携に基づく「高島屋ハイランドグループ」(2025年10月現在は解散を冠した販促やダイエー系ファッションビル「OPA」との業務提携に基づく若年層向けアパレル雑貨店導入を進めるなど、個店経営による迅速な経営基盤と信用力/集客力の回復、武田過半数出資の地方店舗運営会社(さくら野東北)との再統合をめざした。一方、さくら野百貨店仙台店では再び経営悪化が浮き彫りとなっていた。

17年2月自己破産後もドンキ親会社が保守管理、再開発へ

さくら野百貨店仙台店では2010年6月には東北最大の複合新古書店「BOOKOFF仙台さくら野店」、2012年11月には東北初となる外資系ファストファッションブランド「H&M」をを導入するなど大型専門店導入による業態改革をしつつ、2010年8月には社名を「エマルシェ」に変更、2011年9月には経営陣出資新会社「エマルシェ・フェニックス・プロジェクト」による自社株買収(MBO)により武田からの独立を図るなど、経営面でも全面刷新を図った。
一方、2016年4月には東京都港区に本社を置く「東北リテールマネジメント(2025年10月現在はPPIH本社所在地=東京都目黒区青葉台に本社移転)がエマルシェ株を取得するなど経営状態が不透明化、2017年2月に自己破産し71年の歴史に幕をおろすこととなった
自己破産当日2017年2月27日のさくら野百貨店仙台店。

さくら野百貨店仙台店は、1995年1月の阪神淡路大震災翌年の1996年度に大規模耐震改修工事を実施しており、2011年3月の東日本大震災被災時においても被害は少なく早期の営業再開を実現した。2017年2月の自己破産後も土地建物の約7割を有するドン・キホーテ親会社「パン・パシフィック・インターナショナルHD(PPIH)」による保守管理や落下防止改修工事が行われたもの、東北地方における首都ともいえる仙台の一等地は約8年間未活用状態となっており、宮城県民を中心に廃墟化進む旧さくら野百貨店仙台店跡の早期再開発を期待する声が聞かれていた。
PPIHは2023年8月開業の超高層複合商業施設「道玄坂通 dogenzaka-dori」同様のホテル複合施設として再開発する意向を示しており、旧さくら野百貨店仙台店跡地の解体が一等地再生の一歩となりそうだ。

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