大手流通グループ「イズミ」(本社:広島市東区)と同社熊本県内地域子会社「ゆめマート熊本」(本社:熊本市東区)は、同じく大手流通グループ「西友」(本社:東京都武蔵野市)の九州事業(西友・サニー69店舗)を吸収分割の方法により2024年8月1日を目処に承継する方針を2024年4月3日に発表した。
地場老舗百貨店系スーパーを母体とする九州の西友
サニーは1963年8月に福岡地場老舗百貨店「岩田屋」と大手総合商社「伊藤忠商事」の合弁による食品スーパー運営会社として設立。同年8月に熊本市に同社1号店「サニー水前寺店」を開店した。
サニー水前寺店。
サニーは地場食品商社系スーパー「スーパーヤマエ」との資本業務提携やマイカル九州系食品スーパー「サティ食品館」の譲受を始めとする積極的なM&Aで、岩田屋グループ屈指の優良子会社となったが、1990年代末の岩田屋債務超過を契機とした経営再建策の一環として、2001年8月に西友の子会社となった。
1974年6月に西友大分店として開店した大分パルコ。
サニーは西友による子会社化当初、福岡県内の西友小型食品スーパー(美野島店・茶山店)を譲受しつつ、各種販促(テレビCM・チラシ)やサービスを中心に独自路線を維持し、西友への出資比率拡大を図る米国系グローバル流通大手「ウォルマート」と一線を画す店舗づくりを進めたが、2008年7月の西友による吸収合併を機にEDLP型のウォルマート型店舗に順次転換することとなる。
西友那珂川店として開店したサニー那珂川中原店。
以後、西友は九州で既存店のリニューアルに特化した営業施策を打ち出していたが、2021年2月開店の「サニー福岡長浜店」(キテラタウン長浜/仮称:西友福岡港1丁目ショッピングセンター)を機に新規出店を再開。地元ブランドのスーパーとして生き残りを図っていた。
ニコニコドーを母体とする「ゆめマート」
ゆめマート熊本は2003年7月に「ゆうあいマート」として設立。
ゆうあいマートは、2002年4月に民事再生法を申請し事実上経営破綻した九州地場流通大手「ニコニコ堂」の熊本県内における中小型店舗の受け皿として発足した経緯もあり、2003年10月の創業当初は「ニコニコドー」ブランドでの店舗展開を行っていた。
同社は地場資本の総合スーパーとして生き残りを図ったが、イズミが旧ニコニコ堂の大型店(はません・サンピアン・あらお・鳥栖・大村)を承継したこと、経営基盤強化の必要性があったことなどを背景に2005年にイズミと資本業務提携を締結。一環として、2008年5月に社名を「ゆめマート」(店名は平仮名で「ゆめマート」)に変更した。
ゆめマートは2013年9月に店舗ブランドをイズミグループ共通仕様の「youmeマート」に変更。2015年6月にはイズミ系地場高級食品スーパー「ハローグリーンエブリー」(運営会社:西紅)、同年9月には同じくイズミ系地場食品スーパー「エース」(運営会社:広栄)を吸収合併し、2019年3月に現社名に変更するなど、2024年4月現在はイズミの熊本県内における中核的な食品スーパー事業会社となっている。
本社は従来通り熊本、「サニー」ブランドは存続の見込み
イズミは西友九州事業の吸収分割を2021年の第二次中期経営計画(2030年長期ビジョン)に基づく施策であるとしており、同社による「当社グループの店舗と承継対象事業に含まれる店舗は地理的に重複しておらず、相互補完しあえる関係」との認識のもと、西友の九州69店舗(九州事業売上高969億9700万円/営業総利益267億円/ともに2022年12月期)を系列化に収めることで、中四国・九州地域を軸とした300店舗体制の実現と営業収益1兆円、更に強固なドミナント形成を実現するとしている。
なお、ゆめマート熊本による西友九州事業の吸収後も、本社所在地や事業内容、資本金、決算期に変更はないとしている。
また、サニーのブランド名に関しても存続する見込みとなっている。
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