ツインモールプラザ北上さくら野百貨店、2025年12月15日以降も当面営業継続-商品券や資生堂取扱終了、北上都心開発からリオ・コンサルティングへの管理移行にともない

岩手県北上市の地場百貨店「ツインモールプラザ北上さくら野百貨店」が2025年12月15日以降も当面営業を継続する方針が明らかとなった。

ツインモールプラザ北上さくら野百貨店。

運営会社の経営不振に悩まされ続けた「ツインモール」

ツインモールプラザ北上は、1993年11月設立の組合「北上市本通り・新穀町地区市街地再開発組合」施行による再開発事業の一環として2000年3月に開業。建物は地上8階建で営業フロアは1~4階、店舗面積は24,795㎡。
再開発組合は発足当初、岩手地場老舗百貨店「川徳」(本社:岩手県盛岡市)を核とする都市型複合商業施設の開業をめざす方針であったが、1997年8月に川徳が再開発事業より撤退したため、同年10月に流通大手「マイカル」(本社:大阪市中央区)出資の東北地場百貨店連合「ダックビブレ」(本社:仙台市青葉区/後のエマルシェ)を代替に施設整備を進めることとなった。

さくら野百貨店北上店。

ツインモールプラザ北上の建物は同方針に基づき1999年3月に着工、2000年2月に竣工したもので、鉄筋コンクリート造(RC造)地上8階建で営業フロアは1~4階、店舗面積は24,795㎡、延床面積は87,093㎡。
同施設は2000年3月の開業当初、北上市出資の第3セクター「北上都心開発」が施設全体の管理運営を担い、マイカル系百貨店「ダックビブレ北上ビブレ」が商業フロアの核として営業する分業体制を採っていたが、2001年9月のマイカル経営破綻を受け、同年10月に同社から正式独立した百貨店「さくら野百貨店北上店」を核とする複合商業施設として新装開業することとなった。(詳細は過去記事を参照
その後、2017年2月のさくら野百貨店仙台店運営会社「エマルシェ」自己破産や高島屋との業務提携解消、北上市商圏の競争激化や高齢化にともなう経営効率化策の一環として専門店比率を拡大。2023年8月14日にさくら野百貨店全額出資の新会社「いわて北上リテールマネジメント」に事業承継(分社化)したうえで同年8月31日に北上都心開発が同社全株式を取得し、同年9月1日より施設全館の管理運営を北上都心開発が一気通貫で手掛ける体制に移行した。

2018年3月に新装した「さくら野百貨店北上店」。
大型専門店「Belf」「Seria」「DAISO」の看板が目立つ。

北上都心開発、さくら野承継で経営悪化

ツインモールプラザ北上全館の運営会社となった北上都心開発は、2021年4月に西館1~2階を北上市保健子育て支援複合施設「hoKko」に転換、2024年秋には半導体営業拠点「東京エレクトロンFE北上ステーション」を従来の4階レストラン街跡に加えて3階大部分に増床するなど、西館土地建物の北上市への一部売却や東館商業フロアの集約及びオフィスフロア転換といった取組みにより百貨店存続を図った。
一方、北上都心開発は百貨店事業承継にあわせて約1.5億円の借入れを実施、6期連続営業赤字となるなど経営悪化が深刻化しており、施設運営継続が極めて困難な状態に陥っていた。

市が土地建物取得、リオ社主導で新たな管理運営体制に

北上市は「北上都心開発の経営破綻によるツインモールプラザの機能停止を避け、円滑かつスピードある移行によって、テナントの事業と雇用の継続を確保」することなどを目的に、北上都心開発及び地権者27名より区分所有権を約9億4000万円で取得。2025年4月22日に非公開での市議会全員協議会を開催、5月28日の北上市議会臨時会議で「ツインモールプラザ再生事業」に向けた補正予算審議を可決、6月9日に公募型プロポーザルを公告するなど、北上都心開発に代わる新たな運営事業者選定を急いだ。
北上市によるツインモールプラザ北上再生に向けた取組みの一環として、2025年10月6日に新たな運営事業者「リオ・コンサルティング」と基本協定を正式締結、12月14日をもって北上都心開発が施設全館の管理運営を一気通貫で手掛ける体制が終了することとなった。

百貨店商品券や資生堂取扱終了、屋号や贈答は当面維持

ツインモールプラザ北上さくら野百貨店の運営体制変更にともない、2025年9月30日をもって「全国百貨店共通商品券」「旧さくら野法人商品券(ダックシティ/ダックビブレ発行含む)」を取扱終了。12月14日には北上都心開発系によるインフォメーションカウンター及び電話交換業務、百貨店向け化粧品コーナー「資生堂ショップ」を営業終了する方針が決まった。
一方、ダックビブレ時代から続く贈答対応のうち、2025年12月20日まで今期分の「さくら野のおせち」受付を、12月28日まで今期分の「さくら野のお歳暮」受付を引続き実施していることに加え、2026年2月28日まで本館3階での高級タオルブランド「UCHINO」がクリアランスセールの開催を継続することを明らかにしており、2026年春を目処とするリオ・コンサルティング主導による新装開業まで地域に親しまれた屋号と百貨店業態が事実上存続することとなった。

映画館「イオンシネマ」存続は不透明

ツインモール北上さくら野百貨店が2025年12月15日以降も当面営業継続する一方、2026年2月に開業以来の主要テナント「イオンシネマ北上(旧ワーナー・マイカル・シネマズ北上)」が契約期間満了を迎え、同年春以降に自治体と新事業者が合意のもと「市場の需要に基づくビルの最大限の活用による最大の経済効果」を意識したオフィスフロア主体の複合施設として新装開業する基本方針に変わりなく、引続き北上市民の懸案事項となりそうだ。

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