井上百貨店本店、2023年8月31日減床ーEC拡充しつつ4階以上を改装、5階は「オフィス化」

長野県松本市のJR松本駅近くにある百貨店「井上百貨店本店」が、2023年8月より4階から6階の改装を行うことが都商研の取材で分かった。
同社は2022年よりEC事業の拡大を図っているが、これに呼応するかたちで5階売場を8月31日で営業終了するなど、実店舗は事実上の減床(売場縮小)となる。

井上百貨店本店。

創業約150年、かつては2館体制だった

井上は1885年に呉服店として創業、1979年に現在の店舗へ移転した。
かつては本館と新館の2館体制であったが、2010年に新館(現在「コングロM」として丸善など出店)を閉鎖した後は本館に売場を集約し営業している。
本館の売場は地階から7階、店舗面積は8,000㎡となっている。

井上本店、13年ぶりの大規模改装-売場は縮小

都商研の取材によると、井上百貨店本店本館のうち、おもに家庭用品や子供服を扱っていた5階売場は8月31日をもって営業終了、オフィス(事務所)に転用される。
5階で展開していた売場は多くが取り扱い終了となり、さらに一部は4階と6階に集約、事実上の売場縮小となる。
井上百貨店への取材によると、5階には別棟の事務所などが移転するとしており、また一部の子供服ブランドは郊外支店「井上アイシティ21店」に移転することを検討したものの「売場スペースの都合上移転を断念することになった」としている。

4階で展開の準備が進んでいる子供服売場。

今回の改装(減床)に伴い、子供服売場は縮小して4階の上りエスカレーター正面の元紳士服ショップがあった壁面沿いに、家庭用品や食器は6階の上りエスカレーターの左側の元和雑貨売場の部分に売場を集約。
これによりリビング関連の商品は元々同階で転換している寝具も含め1フロアに集約して展開することになる。
このほか「上りエスカレーター正面のスペースをお客様用の休憩スペースとして整備する可能性があるが、まだ検討中」だとしている。

売場を縮小しつつ「ネット通販は拡充」へ

井上百貨店では2022年11月から食品を中心としたインターネット宅配事業「井上アイシステム」(ネットスーパー)をおこなっているほか、2023年1月には自社サイトによるネット通販(EC)「井上オンラインショップ」を開始するなど通信販売事業に力を入れており、これによって実店舗の縮小による売り上げ減を補う考えだとみられる。

井上百貨店近くにある松本パルコ。

松本市内では2017年9月の「イオンモール松本」の開業以降、井上百貨店の近くでは「アリオ松本(イトーヨーカドー)」が2017年9月に閉店(「アルピコプラザ」として2018年に再開業)、「松本パルコ」が2025年2月に閉店する予定が発表されるなど、商環境の大幅な変化が生じている。
今後はパルコの顧客やブランドを取り込むことができるかどうかも店舗活性化へのカギとなるであろう。

井上百貨店本店・おもなブランドの移転先
5階⇒4階 ※全て子供服
  • ミキハウス
  • ハッカキッズ
  • こどもの森(ムージョンジョン)
  • 学生服売場
5階⇒6階
  • キッチン用品売場
  • 和洋食器売場
  • 漆器売場
  • インポートギャラリー(特選洋食器)
  • エプロン売場
  • スリッパ売場
  • ハウスオブローゼ(ボディケア、化粧品)
8月31日に取り扱い終了した5階のブランド
※★が付いているブランドは「井上アイシティ21店」で展開中。
  • 赤ちゃんの城(新生児用品)★
  • ワコールマタニティ(マタニティ用品)★
  • メゾピアノJr(子供服)
  • ポンポネットJr(子供服)
  • バイラビット(子供服)
  • シーズンメッセージ(ナイキほか、子供服)
  • 松本山雅FCオフィシャルショップ★
  • サンリオショップ「ハートクリップ」★
  • 玩具売場★
  • 生活の木(アロマ用品)★
  • オーダーワイシャツ売場(同店のみ4階)
    :9月10日をもって承り終了予定
井上百貨店本店

長野県松本市深志2丁目3−1
営業時間:10時~18時半

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