プラッセだいわえびの店、2026年3月29日閉店-京町温泉の核、寿屋の新たな時代を描いた「ジャンクえびの」2度目の再生なるか?

宮崎県えびの市のJR京町温泉駅ちかくにある総合スーパー「プラッセだいわえびの店」が、2026年3月29日17時に閉店する。

プラッセだいわえびの店。

1987年に「寿屋えびの店」として開業して以来、約40年にわたり地域のにぎわいを支えてきた同店の歩みは、単なる「地方の総合スーパーの閉店」というのみではなく、地方小売業の興隆と再編の歴史そのものでもあった。

寿屋の新時代を描いた多機能店「ジャンク」えびの

プラッセだいわえびの店の前身となった大手スーパー「寿屋」(本社:熊本県熊本市、のち九州最大の大手流通企業集団「ラララグループ」を形成)の総合スーパー「寿屋えびの店」は1987年4月に開店。京町温泉街から歩いてすぐの場所で、出店地にはもともと民家や個人商店、田んぼなどがあった。
寿屋えびの店は2階建てで、売場面積は6,740㎡(届出上6,654㎡)。出店時の愛称は九州自動車道えびのジャンクションにちなんで「ジャンクえびの寿屋」、開店時のキャッチフレーズは「うれしい出来事がいっぱい!新しい話題発信地」「原宿、六本木発!ニュートレンド・コミュニティプラザ」。駅前かつ国道沿いにあり、インターチェンジも近いことから熊本県・宮崎県・鹿児島県の3県にまたがる広大なエリアを商圏に据えた。
それゆえ、駐車場は850台と当時この立地としては非常に多くの台数を備えており、JR化された直後の吉都線では臨時列車「ジャンク号」も運行された。

キャッチフレーズどおり館内には当時流行していた最新ファッションの導入はもちろんのこと、同時期に開業したアスティ日向寿屋(1987年10月開業)とともに館内に児童図書館ゲームセンターを導入、中心の吹き抜けにはイベント広場を設けたほか、駐車場部分でのイベント開催にも対応。市内初のファミリーレストラン「グルッペ」(寿屋傘下)を出店、フードコート「スナックプラザ」を設けるなど、若年層を中心に幅広い世代の集客をめざし、都市規模を考えると異例の多機能型の総合スーパーとなった。

ジャンクえびの寿屋。
(寿屋創業家・壽崎育英財団公式サイトより)

さらに、寿屋はえびの警察署京町駐在所(当時は京町交番)の新築移転にも協力するなど「地域貢献」の姿勢を示した。

菊陽と共に寿屋が大きく変わるなか生まれた店だったが

ジャンクえびの寿屋の都市規模としては異例ともいえる店づくりの背景には、出店当時は大店法の規制などにより大型店の新規出店が現在よりも難しい時代だったこと、そして寿屋の経営体制の立て直しにより新たなスタイルの店づくりが模索されていたことがあった。
ジャンクえびの寿屋が開店する3年前、寿屋は1984年度の中間決算で会社化後初の赤字転落。これにより、寿屋は不採算店の閉店を含む経営体制の立て直しと社内システムの近代化を図っていた。特にジャンクえびの寿屋が開業した1987年は社内EOSシステムの強化(同年全店に導入完了)とPOSシステムの確立(菊陽店開業時より)、自社クレジットカード「Kiカード」(のちJUJUカードラララカード)の新規導入を実施している。
こうしたなか、寿屋はサンリー菊陽寿屋(1987年2月開業)とジャンクえびの寿屋、アスティ日向寿屋の開業を控えてカナダ・エドモンドンのウエスト・エモンドンモールを視察し、ショッピングセンター運営には付加価値が必要だと実感。「顧客志向」「生活空間の創造」をテーマとした店づくりが行われ、さらに(出店を地元と円満に有利に進めるという意図もあって)様々なかたちで地域貢献の姿勢が強く示されることとなった。
同時期に開業したこの3店舗や増築改装した玉名寿屋、全館改装した新宮寿屋などはいずれも単なる総合スーパーに留まらない多機能性を備えており、これらの寿屋大型店は寿屋にとって新たな時代のモデル店舗だったといえよう。

サンリー菊陽寿屋。

寿屋はこの1987年は創業40周年の節目でもあった。同年は福岡の地場大手スーパー「博商」のグループ化もあって初の連結決算3000億円を達成、全社を挙げた創業40周年記念パーティーを行うとともに、壽崎社長の半生をテーマとした記念映画も制作されたという。
しかし、このあと寿屋は激動の時代を迎える。
寿屋は事実上の銀行管理となったのち1993年に「新創業宣言」をおこない、1995年にはCIを実施し大手流通企業集団「ラララグループ」を形成することとなった。

LaLaLaグループ結成時の広告。

しかし、1990年代に入ると大店法の規制が緩和されたこともありジャスコサティニコニコドーといった総合スーパー、さらにはドラッグストアやディスカウントストアの出店ラッシュによって一気に競争が激化。えびの店開業から約14年後の2001年12月にラララグループ・寿屋は経営破綻してしまう。
大店法緩和により競合郊外店出店が相次いだ。

当時の寿屋えびの店はまだ建物も新しく業績好調であったため営業を継続するとしていたが、寿屋が小売業を廃業することを決めた(のち寿屋の資産を中心に不動産を主業とするカリーノに転換)ため2002年1月に寿屋他店とともに休業。そのまま営業再開することはなく閉店した。「ジャンク」自体のイメージもあってかこの頃にはジャンクという愛称はあまり使われなくなっていたが店自体がジャンクとなる危機に陥った。

寿屋倒産後、いち早く再開した「だいわ」

寿屋えびの店は当時競合店も少なく比較的好調だったこともあって寿屋の経営破綻後はいち早く引き継ぎ企業が決まり、鹿児島県川内市(当時)に本社を置く地場大手スーパー「大和」が多くの従業員を引き継ぎ「プラッセだいわえびの店」として2002年6月に営業を再開した。

「日本三大車窓」の矢岳越えからも見ることができる。

これは寿屋としては宮崎県内で2店目の営業再開だった。
当時、宮崎県では全ての市に寿屋(全て百貨店業態もしくは総合スーパー・ショッピングセンター業態)が出店していたため、寿屋の倒産は極めて大きな社会問題となっていた。それゆえ、だいわによる従業員を再雇用するかたちでの早期の営業再開は大きな歓迎を受けた。

空き床を活用した「大型オフィス」も入居

当初、プラッセだいわえびの店は殆ど寿屋の内外装のまま大きな改装もおこなわず営業を再開したが、店舗の老朽化もあってかその後店舗のリニューアルを行い2階を閉鎖。エスカレーターや一部客用エレベーターの使用も取りやめた。
それに伴い、トイレの移設や1階のイベント広場を衣料品売場とするなどの改装をおこなっている。

館内。寿屋当初のコンセプト通り明るい色遣いのまま。

だいわが売場を減らすなか、カリーノグループは閉鎖された2階にオフィスゾーンを開設。2020年3月より2階には核テナントとして物流大手「センコー」のグループ企業「センコービジネスサポート」が入居しており、地域を代表する大型オフィスの1つとなっている。
そのほか、1階のプラッセだいわえびの店には2026年時点で100円ショップ「ワッツウィズ」、「リフォーム三光」「メガネの光学堂(寿屋時代からのテナント)」などが出店。また「グルッペ」跡はauショップを経て「ヘアサロンイワサキ」が出店。館内にはかつて「ピノキオランド」「宝くじ」なども出店していた。このほか2階は先述の通りオフィスが入居しつづけている。
なお、寿屋第2駐車場跡には2025年にコンテナホテル「HOTEL R9 The Yard えびの」が出店。また、直接関係はないものの同店向かいには2016年に「ディスカウントドラッグコスモスえびの店」が出店している。

跡地は未定-建物は現在も寿屋系所有、再生なるか?

プラッセだいわえびの店の閉店後の活用方法などは、2026年3月時点は発表されていない。
建物は2026年現在も寿屋の後継企業であるカリーノグループが所有。また、2階オフィス部分は今後も活用が続けられるとみられる。それゆえ、1階には新たなテナントを募集し、ショッピングセンターとして営業を再開する可能性も大きい。
大規模小売店舗法の規制下での挑戦的な新規出店、経営再建の象徴としての多機能化、そして破綻と事業承継を経た再生、空き床を大型オフィスとして再活用――寿屋えびの店、そしてプラッセだいわえびの店の軌跡は、地方小売業が直面してきた課題とその対応の縮図であったといえよう。

寿屋えびの店の開店から39年。建物は老朽化しているといえども、現在も京町温泉エリアで最大かつ駅チカ・交通量が多い国道沿いに立地するというシンボル的な存在であり、温泉街からも歩いてすぐであるため、旅館勤務者をはじめとした地域住民や観光客双方からも親しまれた店舗だった。また、大型オフィスは地域における大きな雇用拠点にもなっていると思われる。こうした立地の優位性や地域との結びつきといった資産は依然として色あせていない。

LaLaLaグループCI。
「ラララ」は「ランド」「ライフ」「ラブ」の頭文字から、丸い笑顔のデザインは地球や九州の大地とそこで暮らす人々の豊かな生活を表現。
店舗と地域・人々との結びつきを示したものだった。

地方都市における商業施設の盛衰は、そのまま地域経済と消費構造の変化を映し出す鏡でもある。人口減少と消費の分散が進むなか、こうした地域の資産の1つともいえる大型施設を、新たな価値として時代に合ったかたちで再生することができるのか。人口減少地域の商業施設の次の一手を問うケーススタディともなりそうだ。
永年親しまれた地域のシンボルが、新たな時代を担う新施設として再び灯がともることを願いたい。

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