日本統治時代に建設された百貨店「ハヤシ百貨店」(林百貨、台南市中西区)の前に、親中派の野党・中国国民党が台湾初となる従軍慰安婦像と、南京大虐殺を紹介する看板を設置する方針であることが分かった。
産経新聞、複数の台湾メディアなどが報じた。
林百貨(公式サイトより)。
日本統治時代の建物が並ぶ繁華街に設置
産経新聞と地元メディアなどによると、慰安婦像の設置場所は林百貨の前にある野党・中国国民党の台南市支部前。慰安婦像に加えて、南京大虐殺など日中戦争について中国の立場から紹介する多言語看板も設置するという。
ハヤシ百貨店は1932年に台南市末廣町に開店。戦後は軍隊や警察により使われたのち永年空きビルとなっていたが、台南市により古蹟に指定され、2014年に台南市に本社を置く小売業「高青開発」を指定管理者とし、「林百貨」(HAYASHI DEPARTMENT STORE)として営業を再開した。屋上には神社も設置されている。
屋上にある末廣神社。一部壊れているがそのまま保存されている。
(公式サイトより)
周辺は日本統治時代の繁華街であり、戦前からの建物が多く並ぶ立地だ。
「古蹟修復」などに対する報復の意図も?
林百貨の修復が完了して再開店した際の台南市長は親日派として知られる医師・頼清徳氏。同氏は与党「民主進歩党」に属しており、現在は台湾の行政院長を勤める実力者だ。
台南市では、日本統治時代の面影が残る街並みを活かした街づくりを進めており、2018年現在も旧台南警察署、台南州会、台南公園、新化公会堂など多くの建物の修復を行っている。その一方で、近年は蒋介石像の撤去を進めるなど、中国国民党独裁時代の「負の遺産」の清算も進めている。
中国国民党が日本統治時代の象徴である林百貨前を反日活動の象徴的な場とすることは、単にそこに党支部があったからという理由のみならず、日本統治時代の面影を大切にしつつ中国国民党独裁時代を否定するという民主進歩党の政策に対する報復であるとも受け取られる。
設置場所は日本人観光客も非常に多い場所であるため、今後の動きが注目される。
(現地報道があり次第、更新することがあります)
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