旧・奈良監獄、2017年7月15・16日に最後の見学会-2020年の「ホテル化」目指す

奈良県奈良市にある文化財「旧・奈良少年刑務所(旧・奈良監獄)」で奈良市、奈良市教育委員会、法務省主催の見学会・講演会が7月15日、16日に開催された。
 
旧・奈良監獄正門。

日本を代表する近代監獄、複合商業施設として再整備へ

奈良少年刑務所は1908年に、明治政府が監獄の国際標準化を掲げ建設した五大監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の1つ「奈良監獄」として設立され、戦後に奈良少年刑務所に転換された。設計は山下啓二郎。
2017年3月に閉鎖されるまで建築当時の赤煉瓦造りの建物がほぼそのままの形で残るなど高い歴史的文化的価値を有しており、2016年に重要文化財指定手続と法務省による「旧奈良監獄の保存及び活用に係る公共施設等運営事業」としての施設再活用、観光資源化が進められることを決定。施設運営の優先交渉権を獲得した「ソラーレホテルズアンドリゾーツ」により、複合商業施設「HISTERRACE奈良」としてリニューアルが実施されることになっている。

注目集めた最後の見学会

今回、最後となった見学会は2日にわけて行われ、7月15日には近隣住民やNPO法人を対象とした見学会が、16日には申込制講演会やガイド付き見学会、自由見学会となった。いずれも例年秋開催されていた「奈良矯正展」で非公開かつ撮影不可とされていた区域も公開されるということで大きな注目を集めた。
16日の自由見学会では、近鉄奈良駅からも臨時直通バスが運行され、本来予定されていた一般入場時刻(午後1時)が1時間前倒しされた。

多くの人が訪れた。

旧奈良監獄館内では所定の見学コースに沿った自由見学が可能となっており、警備を担当する職員やボランティアによる施設・設備の案内を聞くこともできた。
奈良少年刑務所の閉庁から4ヶ月が経過し、実習場など設備の撤去が進められているもの、入口付近には指紋認証にも対応した鍵保管庫や検査機器も残されるなど、往時の姿が感じさせられた。

所内の廊下。

旧奈良監獄のシンボルゾーンでもある中央看守所は、第一寮から第五寮まで各舎房が見通せる構造となっており、最高気温34度を観測した真夏日ながら暑さを感じさせなかった。

設立当初からの中央看守所。真夏日にかかわらず風通しが良い。

その他、表門裏では地元・般若寺町自治会による旧奈良監獄関連書籍や絵葉書の販売、道場前では奈良地方検察庁によるパネル展や記念写真付広報資料の配布、ポンプ庫前では隣接する植村牧場によるソフトクリームや飲料の販売が実施された。

地元自治会による物販も。

HISTERRACE奈良、1棟は現状のまま保存へ

奈良監獄を活用して整備される「HISTERRACE奈良」は「建築行刑史料館」(2019年秋に先行開業予定)、旧監獄棟・独房を改修した「文化財ホテル」、新たなホテル増設棟(仮称)「そらみつ奈良」、病監を改修した無印良品ブランドの簡易宿泊型ドミトリー(仮称)「MUJI HOSTEL」、レストラン、カフェバー、温浴施設、商業施設などにより構成され、2020年の全面開業に向けた施設再整備、耐震補強が行われる。
明治期建築の外観を残す舎房のうち、1棟は現状のまま完全保存される予定だ。

現状のまま保存される舎房居室。


今後の活用計画(ニュースリリースより)。

奈良市では以前から宿泊施設不足が深刻であったが、近年はその弱点を克服しつつある。
旧・奈良監獄を活かした「HISTERRACEプロジェクト」は、これまでの奈良の観光地とは異なるタイプの新たな観光資源であり、宿泊機能強化も含めて古都「奈良」の魅力を一層向上させることに繋がるものになるであろう。

外部リンク:旧奈良監獄(奈良少年刑務所)見学会を開催します! – 奈良市(奈良市)
外部リンク:「旧奈良監獄の保存及び活用に係る公共施設等運営事業」優先交渉権獲得のお知らせ(ソラーレホテルズアンドリゾーツ)
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