2015年7月1日現在の基準地価が発表された。
全体の下落幅はリーマンショック以後で最低となり、大都市圏に加え、地方中核都市の中心部で上昇に転じた地点が目立つ。
2015年基準地価の都道府県別変動率(商業地)
※この日本地図では離島を省略しています
都市中心部は大都市、地方中核都市ともに上昇
地価の最高地点は10年連続で東京都中央区の銀座二丁目「明治屋銀座ビル」。価格は2,640万円/㎡で、前年よりも16.8%上昇した。
大都市の中心部は軒並み上昇しており、東京特別区、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市の6大都市に加え、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方中核都市中心部も揃って上昇している。

地価の最高地点である銀座二丁目「明治屋銀座ビル」前。
商業地で全国で最も上昇率が高かったのは名古屋駅桜通口前の名古屋市中村区名駅3丁目で、45.7%の上昇。地価の最高地点も名駅桜通口で、これは駅前再開発の進行と、リニア中央新幹線の開通に期待してのものだ。
東京23区では、港区南青山(表参道)が上昇率トップの20.2%、次いで中央区銀座六丁目が19.6%上昇。外国人観光客が多い銀座、秋葉原、渋谷などが高い上昇率を見せた。
名古屋駅桜通口は全国で最も上昇率が高かった。
大阪では、地価の最高地点があるキタ(梅田)よりもミナミ(難波・心斎橋)での上昇率の高さが目立つ。関西の地価最高地点は大阪駅北口のグランフロント大阪で1,100万円/㎡。割安感からか上昇率は東京よりも高い地点が多く、大阪市で最も上昇したのは、心斎橋筋商店街そばの中央区南船場3丁目で29.7%。次いでなんば駅前の難波三丁目で28.9%。
三大都市圏以外では福岡市の博多駅博多口南で19.2%の大幅な上昇が見られる。博多駅博多口では駅ビル周辺の再開発が続き、来年には丸井デパートも進出予定となっている。福岡の最高地点は中央区の天神西通り。仙台市では、仙台駅東口が12.8%の上昇となった。
近年新たに政令指定都市となった地方中核都市でも、新潟市、静岡市、浜松市、岡山市、熊本市などの各中心部や駅周辺において上昇に転じた地点が見られた。

再開発が進み、地価の上昇が続く博多駅前。
大都市圏の住宅地ではベッドタウンの広域上昇目立つ
また、住宅地ではこれまで東京のベッドタウンとして人気となっている立川市、川崎市武蔵小杉などで高い上昇率となったのに加えて、大都市圏とは少し距離があるベッドタウン地域での住宅地上昇も目立った。木更津市郊外の東京湾アクアラインの沿線や、流山市などつくばエクスプレス沿線、草津市、守山市など滋賀県の東海道本線沿線、山梨県都留市、静岡県長泉町、和歌山県岩出市などでも住宅地の地価が上昇している。
大都市圏以外の住宅地では、福島県いわき市、宮城県石巻市など、東日本大震災の被災者(避難者)が多く住む都市の高台地域では上昇が見られるが、昨年よりも上昇率が下がった地点が多い。

マンション建設が進む武蔵小杉。
地方圏でも地価上昇、カギは「コンパクトシティ」「観光」
地方圏では4分の3が下落しているものの、下落幅は縮小している。
地方圏で上昇した地点を見ると「公共交通整備・コンパクトシティ化」と「観光・リゾート」の2つの要素が見える。
例えば、今後、北海道新幹線の延伸とそれに伴う再開発が行われる札幌駅周辺、仙台市地下鉄東西線沿線(12月開通予定)、駅ビル建設などの再開発が進む福岡市の博多駅周辺などといった地方中核都市の駅近くは勿論のこと、北陸新幹線の延伸効果が目立つ金沢市中心部、コンパクトシティ化を目指した市街地整備が進む富山市中心部、今後新幹線の延伸と私鉄線の利便性向上が予定されている福井市中心部、近年駅の近くに新たなショッピングセンターが出来た静岡駅周辺、岡山駅周辺、佐世保駅周辺、大規模な駅前再開発が行われている大分駅周辺、熊本駅周辺、2年前に新空港が完成して利便性が向上した沖縄県石垣市などでも、地価が上昇に転じた地点や横ばいの地点が目立つ。

駅ビルが完成した大分駅前では商店街も23年ぶりに上昇。
観光地でも地価下げ止まり
観光地・リゾート地でも、国内外を問わず人気の北海道や沖縄県、長野県軽井沢町などでは上昇した地点が多数あり、都市部から大きく離れた倶知安町、富良野市などでも上昇した地点があったほか、静岡県熱海市、大分県別府市、大分県由布市由布院などの人気温泉地でも上昇や横ばいの地点が見られる。
また、群馬県富岡市、山梨県富士河口湖町、長崎市などでは世界遺産効果で上昇した地点もある。
地価の下落が著しい山陰地方でも、出雲市出雲大社神門通りが山陰の商業地で唯一の上昇となっているほか、海外からの大型クルーズ船が入港する境港市境港周辺では横ばいとなった。

殆どの地点で上昇した那覇市中心部(国際通り)。
高齢化率の高い地域は厳しく
一方で、住宅地、商業地ともに下落率が全国ワーストとなった秋田県は、高齢化率が全国で最も高いために今度も需要の停滞が予測され、
それが基準地価にも如実に現れたものとなっている。

秋田駅前。中心部でも地価の下落が続く。
(担当記者:W)
再活用進まぬ西友跡
米ウォルマート傘下の大手スーパー「西友」が大規模な不採算店閉店を実施中であるが、その跡地再活用が困難を極めている。

再活用方法が決まらない旧西友諫早店。(長崎県諫早市、閉店前)
2015年に閉店、もしくは近いうちの閉店を表明した西友の全30店舗のうち、2015年9月現在までに明確な再活用策が決まったのは僅か9店舗のみ。
2002年の寿屋全店(九州最大のスーパー、約130店舗)閉店や、2000年以降のダイエー大規模閉店などにおいてもその跡地活用が大きな問題となったが、今回の西友の大規模閉店においては、その活用率の低さが際立っている。
表:2015年に閉店した西友跡の再活用方法

閉鎖予定の店舗含む。2015年9月現在。都商研調べ。クリックで拡大。
多層型商業ビルへのワンフロア入居は図中「()」でフロア数表記。
また、一度閉店したスーパーであっても、建物の解体の容易さや様々な再活用策を採ることができる低層型・中小規模の店舗は、通常再活用されやすい傾向にある。 しかし、今回閉店した西友の店舗では、そのような低層・中小規模の店舗(これらは全てが閉店から約半年が経過している)であっても、未だに半分以上の再活用策が決まっておらず、それらの低層型店舗は西友が再出店を名言したために解体された1店舗を除いて、多くがそのまま入居者募集中となっている。

多くの店舗は閉店後もそのままとなっている。
閉店後の旧サニー吉井ショッピングセンター(福岡県うきは市)。
一方で、特に都心部に立地する高層型店舗(4階層以上、商業ビル低層へのテナント入居を含む)は、7店舗のうち1店舗が地場スーパーを核としたショッピングセンターとして再開することを決めたが、3店舗は早くも解体が決定しており、活用方法が決まらない老朽化した高層店舗への見切りの速さも際立っている。解体が決まった3店舗はいずれも跡地に新たな商業施設や、商業施設が入居した複合ビルを建てることが検討されている。
低層型店舗でも再活用が進まない西友跡

図1:2015年に閉鎖された西友の再活用方法(閉鎖予定含む)
左がワンフロア型店舗、右が多層型店舗。
(全国の全30店。2015年9月現在。数字は店舗数。)
多層型商業ビルへのワンフロア入居も多層型店舗に含む。

図2:寿屋(2002年倒産)のうち九州中南部の店舗の再活用方法
左がワンフロア型店舗、右が多層型店舗。
(大分、熊本、宮崎、鹿児島の全100店。2001-2年閉店、2013年調査。数字は店舗数。)
今回閉店した西友のうち、ワンフロア型店舗はその多くが九州地方に立地している。
九州は言わずと知れたディスカウントストア大国で、スーパードラッグストアも非常に多く、またスーパーマーケットも個性的な品揃えの店舗や百貨店系の店舗などといった特徴的なものが数多くある。
特にこのような競合の激しい地域では、このまま店舗跡が再活用されない状態が長引く可能性もあり、解体されて商用以外の再活用方法を模索することになる店舗も多いことが予想される。
また、低層型店舗のうち、2店舗ずつが「元気なスーパー」と言われ、大型店から小型店まで幅広く展開している「バロー」と「イズミ」(ゆめマート)に引き継がれたのも興味深い。

サニー新外店跡に出店したゆめマート新外店(熊本市)。

今秋開業予定のゆめマートすわの店(福岡県久留米市)。
イズミウェブサイトより。
今後、再活用方法が長く決まらない低層店舗跡は、家賃の値下げなどによりディスカウントストアの出店や中古品販売店などといった異業種の進出が起きることも予想され、また、都市中心部の大型店舗跡は再活用に行政が参画することも予想される。
これからも再活用状況を注視していきたい。
(担当記者:W/いずれもデータは2015年9月現在のもの)
関連記事:西友諫早店、2015年4月30日閉店