流通大手「トライアルHD」は、同業大手「西友」全株式の取得を2025年3月5日の取締役会で決議した。
西友浦安店Part1。
トライアルHDは同決議に基づき西友全株式を約3,826億円で取得し、2025年7月1日付けで完全子会社化する。
トライアル大津店。
西武系スーパーをルーツにもつ流通大手
西友は1956年2月に西武百貨店系小型店運営会社「西武ストアー」として創業。1963年4月に総合スーパー運営会社「西友ストアー」として設立。最盛期には西武セゾングループの中核として大型複合商業施設「ザ・モール」「西友楽市」や百貨店業態「西友西武店(現LIVIN)」、コンビニ「ファミリーマート」、自社PB「無印良品」を展開した。
西友ザ・モール安城店(現在は閉店)。
一方、1990年代には西武セゾングループ各社や同社金融子会社(東京シティファイナンス)の不良債権処理、同業他社との競争激化を背景として急速に経営体質が悪化。2000年4月には大手商社「住友商事」(子会社としてサミットなど)と業務資本提携を締結し、2001年8月には九州地場老舗百貨店系食品スーパー「サニー」を子会社化するなど、主力業態の食品スーパー化に取組んだ。
西友サニー水前寺店(現ゆめマート熊本サニー水前寺店)。
同社は2002年3月には外資系流通大手「ウォルマート」と包括的業務提携を締結し、2008年4月にウォルマートの完全子会社となったが、2021年3月より段階的に米国系ファンド+IT大手連合「KKR」「楽天DXソリューション」が株式を取得したことでウォルマートグループから独立。倉庫型ネットスーパー「西友楽天ネットスーパー(現楽天マート)」協業を始めとするIT強化により競争力強化を図ることとなった。
2023年5月にはKKRが株式の85%、ウォルマート系が株式の15%を保有する現在の経営体制に移行。2024年8月にはイズミ地域子会社「ゆめマート熊本」に九州事業を売却、同年10月にイオン地域子会社「イオン北海道」に北海道事業を売却したことで、東名阪三大都市圏を中心とした店舗体制となった。
西友長崎駅店(現ゆめマート熊本サニー長崎駅店)。
九州発祥の同業大手傘下に
トライアルHDは同社主力業態「スーパーセンタートライアル」に加え、小商圏型新業態「TRIAL GO」「グロッサリア」を開発することで、都市部での店舗網拡大に取組んでいるが、西友が2025年3月時点で重点地域とする東名阪三大都市圏は依然として郊外型スーパーセンター中心の店舗展開となっている。
トライアルHDは西友完全子会社化により「関東エリア、中部エリア及び関西エリアでの事業基盤確立」「連結売上高1兆円超の小売グループ」実現と西友PB商品「みなさまのお墨付き」「食の幸」及び製造拠点獲得による「グループ全体の「食」の強化と生産・物流の最適化」といったシナジーを期待しており、トライアルが得意とするリテールDX関連施(Skip Cartやインストアサイネージなど)による効率化・収益性の改善や企業価値向上を図るとしている。
関連記事:さとちょう(佐藤長)、2023年10月20日全店閉店-青森地場大手、トライアルが大半に出店も「むつ松木屋」など未定
関連記事:スーパー丸幸、2024年11月3日全店閉店-富岡バイパス店と藤岡宮本店、トライアルに事業譲渡