都市商業研究所の設立に寄せて

都市商業研究所の設立に寄せて
 近年、都市構造の変化、商業郊外化の進展とともに中心市街地の空洞化が叫ばれており、これまで長年に亘って中心市街地への集客の核として機能してきた旧来の大規模商業施設の撤退が相次いでいる。
かつては公共交通での移動が前提であり、中心商店街も鉄道駅の駅前やバスターミナルの周辺に発展していった。その際、中心商店街に進出した大規模商業施設に対する商店街の態度は「敵対→競合→協調→依存」へと変化を遂げ(中条 2007)、やがて中心商店街は大規模商業施設を集客の核とするようになった(中条 2007、香川1987)。
このような大規模商業施設が立地することは、中心市街地や商店街自体に大きな影響を与え、大規模商業施設が立地する商店街は顧客吸引の面で有利であり(木地 1975)、とくに中小都市では、大規模商業施設の立地により人の流れが変わるとも言われた(杉村 1975)。しかし、近年は消費行動の急激な変化に伴い、中心市街地からの大規模商業施設の撤退が相次いでおり、それに伴い中心商店街衰退の深刻化が問題となっている。
急速な「郊外化」の流れの中で、大規模商業施設と共存してきた中心商店街は核店舗である大規模商業施設の撤退、またそれに伴う大規模駐車場の閉鎖や公共交通の削減などアクセス機能の低下により存在意義を失っていった。住民は、公共交通の不便さから車で郊外の大規模商業施設や、バイパス道路沿いに多く立地する、いわゆる「ロードサイド型店舗」へと足を伸ばすようになり、大規模医療機関や公共施設さえも車でしか利用できない郊外地域へと次第に移転していく都市も多く出現しており、更なる公共交通の衰退を招くという悪循環が生まれている。このような車が無いと生活が出来ない街づくりは、環境負荷も極めて大きく、また交通弱者に対しても優しくない。近年は、近隣の商業施設が閉店したことにより日々の買い物が困難になるという、いわゆる「買い物難民」の発生が、中小地方都市の中心市街地においても問題視されるようになってきている。
そして、中心市街地の衰退は、長年に亘って重要な役割を果たしてきた地域コミュニティ自体の核(戸所 1997)をも崩壊させることへと繋がった。中心市街地の疲弊は、地域によって長年開催されてきた祭りなどの伝統行事にも影響を与え、また中心市街地における大規模商業施設の撤退は、店舗を交流の場やコミュニティ空間として利用する地域住民(井上・中山 2003)や、店舗が協賛していた地域や商店会のイベント活動などにも多大な影響を与えることがある。
現在、全国各地において中心市街地活性化のために多くの手段が採られているが、当研究所では、このような中心市街地の衰退を食い止めるには、中心市街地を再び商業集積地としての賑わいを取り戻すことが重要であると考えている。
当研究所が、中心市街地が再び賑わいを取り戻し、経済的・社会的・文化的拠点となる一翼を担うことが出来れば幸いである。


○参考文献
井上芳恵・中山 徹2003 「大型店撤退が買物行動に及ぼす影響に関する研究 : 熊本県人吉市における事例より」.日本家政学会誌,54-7,573-581.
香川勝俊1987「小都市における大型店立地の地域商業への影響-小売商業機能と中心商店街への影響を中心に-」.人文地理,39-3,24-39.
木地節郎 1975 『小売商業の集積と立地』大明堂. 杉村暢二 1975 『中心商店街』古今書院.
戸所 隆1997 「新しい都市空間形成と商業の変化」.経済地理学年報,43,48-58.
中条健実 2007 「駅前大型店の撤退と再生-地方都市の旧そごうの事例-」.荒井良雄、箸本健二 編『流通空間の再構築』古今書院.177-196

 

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